7/4 夜
割り切れるわけではないけれど、鎮はいつもと変わらない。
「夏祭り。サツキちゃん、誘うのかー?」
本をめくりながら鎮が聞いてくる。
一人がけのソファの上で体育座りになって本に視線を落としてる姿は窮屈そうだ。
鍋島さんと一緒に夏祭り。
「おい。妄想だけで燃え尽きてどうする」
小さな笑い。
すごく悔しい。
「鎮は誰か誘うのか?」
「いや。俺はチビどもの引率。魔女っこのOPソングを一緒にステージ上で披露だ」
「隆維や涼維に任せなかったんだ?」
さすがに恥ずかしい年齢になってるだろうと聞いてみる。
「ああ。天音ちゃんや他の友達と遊ぶみたいだからな。まぁ同じ会場内にはいるし、気が向いたら目を配ってくれるだろうさ。天音ちゃんが」
ぱらりと本が繰られる。
あれ?
何か引っかかる?
「誘うんならちゃっちゃと誘ってやれよ。サツキちゃんも都合があるだろうしさ」
「……うん。そうだね。芹香は鈴音ちゃんと遊ぶのかな?」
「ああ。約束済みらしいぞ。浴衣を着るって張り切ってたな」
「ステージ浴衣?」
かわいいだろうな。
「いいや、芹香は出ないって。まぁ。日生んちとしてはみあとのあ、プラス俺が出るから問題ないだろ。ついでにちょいコンテスト勧誘かなぁ」
いつもと、かわらない。んじゃない。
それともいつもとかわらない。のか?
「サツキちゃんのメアドくらい持ってるんだろう?」
誘えば? とばかりに鎮が言う。
「ない」
「は?」
鎮がこっちを見る。
視線は『お前何やってんの?』と如実に語っている。
「鍋島さんの連絡先は知らない。アドレスを聞いたこともない」
「お前……」
鎮が足を伸ばす。
「ばかだろ?」
しみじみ言いながら指差してきた。
へたれ千秋
鍋島サツキ嬢を夏祭りに誘えるのか?!
何気に鎮はアドレス知ってそうだ。




