2/10 雪遊び
一旦、帰って着替えて家を出る。
雪がたくさん降っていて楽しい。
そういっちゃんの住んでいる部屋に荷物をおいてから遊ぶ約束をしているべるべるとの待ち合わせ。
それとも今日は来ないかな?
約束と言っても何となくでしっかりした約束じゃない。
「芹香ちゃん?」
声に振り返ると愛菜がいた。
「愛菜。こんにちは。学校帰り? 雪がたくさんで凄いよねー」
「うん。すごいね。寒く、ないの?」
「さっむいよー。でもねー。たのしーもん。白くてひらひらしてて綺麗」
浜なら傘を振り回してもぶつかるようなことはまずないし。
雪で重くなった傘を振り回すのがまた、楽しいのだ。
「一緒に遊ぶ?」
「え?」
誘われるとは思っていなかったみたいで驚いた声。
開いたままの傘を振り下ろして雪を払い落とす。
「寒いけど、雪がここまで降るのも滅多にないし、遊ばないともったいないよね!」
「あれ? 美丘?」
「こんにちは」
小兄だ。
「ぇ? 日生くん?」
そこにその相手がいるのが不思議と言い出しそうな声。
「せりー。雪まみれだぞー。転ぶなよー」
隆維がにまついてるとわかる声で言ってくる。
「転ばないわよ!」
「美丘さんの家、こっちだったけ?」
やんわりした涼維の問いかけ。
隆維がのんびり近づいてくる。
「千秋兄、いやがんねぇ?」
小声での確認。
少し、ムッとする。
「それじゃあね。芹香ちゃん、風邪ひかないように」
え?
なんでお兄ちゃんたちに遊ぶ相手選ばれなきゃいけないのよ!?
「おう。休み明けになー」
「気をつけて帰ってね」
ふ・ゆ・か・い・だ。
近づいて来た涼維を軽く攻撃する。
「え? どうしたのさ。芹香」
効果はない。
「第一美丘はさ、鎮兄と空ねぇの仲の邪魔になりかねないんだぞ?」
それはそれ。これはこれだ!
愛菜はちゃんと呼んでくれるんだよ。
『知っていて』それでもためらいなく、『芹香』って。
裏なんかどうでもいい。
きっかけなんかどうでもいい。
隆維はまだいい。
『私のため』だなんて言って押し付けてこないから。
「俺たちはね、あんまり美丘さん好きじゃないんだよ」
涼維がさっくりと切る。
それが二人の統合意見。
しかし、私がそれを尊重するべき理由はない。
「昨日焼いたオレンジクッキー食う?」
わかりやすい話題転換。
「食べてあげるわ」
「いつまでも雪まみれだと風邪ひいちゃうしね。早く、帰ろ」
涼維と隆維の手が差し出される。
「気に入らないんだから」
私の小さな呟きに『わかっている』と告げるように隆維の手に力が入る。
青空空ちゃん
を『キラキラを探して〜うろな町散歩〜』から話題にお借りいたしました。




