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URONA・あ・らかると  作者: とにあ
2014年一月
388/823

2/6 夜

「うん。気分によってはこのソフトもいいよね」

「悪くないだろ? フリーソフトだけどさ、使い勝手はいいんだ」

 製作者はP.P.S.project。ネットでは話題のユーザーだ。

 その作り出すソフトは繊細で出来がいい。

 ビバ日本人。たぶん。

 バートに紹介したのは文章読み上げのアプリケーション『アイドロン』

 すでに数種類の文章読み上げツールを活用愛用しているバートであるが最適な相性のものは見つけていないらしい。

 だから気分や体調によって使い分けてる。聞きやすい合わないって言うのが日によってずれると言うんだから面倒だ。

 話題や語彙を増やすのに電子書籍を購入し、ひたすら聞き続ける。という独自の語彙増強活動中だ。

 ちなみに今は聞きながらその視線は真新しいゲーム。やってるのはシンプルな落ちゲー。

 どっちかにしろと思う。

 つーか俺もやりたい。

 聞きながらやってるせいかなかなかクリアできずに詰まっている。

 覗き込む。

「四連鎖したらクリアだってさ」

「ん。さんきゅ」

「ところでさー」

「んー?」

「別れた相手ってどんな相手だったんだー?」

 ぴたりと動きが止まる。

 おお。にらまれた。

「少し年上でね、就職した会社でがんばってたよ」

「ほうほぅ」

 失恋ネタ、話し終えた頃には少し思い出したのかして沈んでいたが、さて、と勢いをつけて授業に行った。

「あの風峰先輩」

「言うな」

 椹木(らぎあっち)が何か言おうとしたのを封じる。

「だって、アレ間違いなく詐欺られてませんか!?」

 しずもよく金銭系で相手にほだされるけど、似たような感じ、かねぇ?

「俺もたぶん、身内が手切れ金出したに一票だ!」

 つーか椹木がココまで主張するとはよっぽどー♪

 年、近いし気になるのかね?

 まぁ露骨に相手だめんずじゃん。

 理想とするタイプと実際、付き合うのは違う典型だからなバートって。

 初めて会った時付き合っていた相手。彼女の弟も悪気のないダメ男だった。彼女には「あんたもだ」って笑われたものだけどな。

「マジですか!?」

「たぶんなー。かもられやすい立場の奴だから基本そう言うのに対応するやつは身近についてるべきなんだけどなぁ」

 まぁ、日本では弟に愛情を注ぐっつってたし、大丈夫だろ。

「ちょっと気をつけとくかー」

 置いて行ったゲーム機を見ると充電が切れかけだった。

 椹木が自分の鞄からコードを差し出してくれた。

 俺は頷き、

「レッツ充電。レコードを塗り替えてやるぜ♪」

「後で怒られますよー」

「まぁまぁ、気にしなーいきにしなーい」

「最低だ」

 含み笑いを混む声に顔を上げるとシズが覗いていた。

 入っていいか悩んでたので手招く。

 差し出される紙袋。

 中身は弁当箱。

 察した椹木が飲み物の準備に向かう。

「桐子もこういうことしてくれるんならOKしてくれていいと思わねぇ?」


「桐子さんは潤さんのこと好きだと思うよ?」

 コートを脱いでソファに陣取ったところを見るとすぐ帰る気はないらしい。

「知ってるよ。ただ、なんでか断られるけどな!」

 紙袋から弁当を並べる。量はある。

「津田先生も一緒しませんー? 気が向いたら相談に乗ってくださいよー。恋愛相談に」

「どっちの相談なんだ?」

 津田先生が俺とシズを見比べる。

 シズはじっと俺を見る。相談が必要なのは俺だよねと言わんばかりだ。

「俺はバート兄を外食に誘おうと思って迎えに来ただけだしぃ。たぶん、うまくいってるしぃ」

 それだけ言うとつーんっとそっぽを向く。

 ただ最後は自信なさげだったけど。

「うわー生意気。全日制の生徒って生意気ー」

「関係ねぇじゃん」

「こいつねー、うろなの歌姫セイレーンって称号持ちの彼女がいるんっすよー。美人で優しくて、体の発育も素晴らしく美しい美声を持つ彼女が!」

 ぱさりと畳まれた紙袋が顔面にぶつかる。

 痛くはないが驚いた。

 ほんのり顔を赤く染めたシズの手が紙袋を投げた動作の後、弁当箱の並びを綺麗に整えていく。

「どうぞ。津田先生」

 取り皿がわりの蓋と割り箸。

「ああ。ありがとう」

 そして誰も俺のフォローはしてくれなかった。

 世知辛い!




 ◆




「バート」

「シー」

 事務所兼職員室に戻るとなぜか(シー)が待っていてくれて嬉しくなる。

「おっつー。飯食ってから帰らね? 帰れる? 時間かかる?」

「時間、遅いよ?」

 尋ねつつ軽く抱きしめてキス。さらりとした返しの後見えるのは笑顔。

「じょぶ。あそこならあいてる」

 崩した日本語は少し聞き取りズラい。

 わざわざ来てくれたことが嬉しい。時間は、ウルを見ると軽く『行けば』と言うように手を振られる。

「それは楽しみ」

 そう言って上着と荷物を取りにいく。


 ウルや同僚にあたる津田先生に挨拶して校舎を出る。

「メニュー、一緒でいいよな?」

「ああ。構わないよ」

「あそこの味は絶品! まぁ、酒も種類あるよ? 寒いし、飲むんならいいんじゃね?」

「アルコールは飲めるけど、さほど好きじゃないからね。気を回さなくても大丈夫だよ」

 連れて行かれた先は商店街にある中華料理店らしい中華料理店。

 店の人にシーがしたしげに声をかける。

「清志さーん関西風天津飯ふたつよろしくー」



P.P.S.projectというネットユーザー名。文章読み上げのアプリケーション『アイドロン』の存在を『曖昧MEなうろな町生活』から



津田さんを『ユーザーネームを入力してください』より


話題でうろなのセイレーン青空空ちゃん『キラキラを探して~うろな町散歩~』から


商店街の中華料理屋『クトゥルフ』その店主清志さん(お名前のみ)を『人間どもに不幸を!』からお借りいたしました。


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