1/16 放課後
「こんにちは。うろな町の教育を考える会の連絡担当清水渉さんですか?」
同世代ぽい彼は少し驚いたように頷いてくれた。
ちなみに事前に椹木君に連絡はしてもらっている。
そう、ここはうろな中学校である。
風峰がココの先生は町の(教育系の)連絡役でいろいろイベント系に絡んでるからツテが多くてオススメという紹介をされた。
もうひとついえば、一緒に来るはずだった。
来てない理由は遺跡探索ツアーの参加費を見て悩み始め、約束の時間に近づいても動きそうになかったので諦めて見捨ててきたのだ。
出掛けに椹木君が申し訳なさそうに頭を下げて見送ってくれた。
「定時制の事務員椹木さんから色々と詳しい方だと紹介をされまして。ランバート・w・ブロンウィンと言います」
やっぱり日本人は若くというか、幼く見えるなぁ。
「清水渉です」
そう言って差し出された手は意外にもしっかり鍛えられたものだった。
「あ、あの?」
あ。
つい堪能してた。
「失礼。よく鍛えてらっしゃるんですね」
名残惜しいが手を放す。
いやそれほどでもと謙遜するのは日本人の基本スキルだろうか?
「それで、ご用件はなんでしょうか?」
そう、本題に入らないとねぇ。
そう、用件は生徒たちのことだ。
いろいろな場所にツテがあるのならそこも通してもらった方がいい。
職についていない生徒に仕事をするということを経験させたいということ。
コミュニケーションや素行に難ありな生徒もいること。
学生達で過ごす時間も当然あり、それは少人数ゆえの特殊密度。
現状は、様子見のぬるま湯だがどうなるかわからない。
できれば早々に別の水も対処できると知って欲しい。
自分は一応、言葉こそ学んでいるが、本質的な文化まではわからない。
適切な対応は、椹木君には荷が重そうだし、ウルは斜めすぎて問題外だ。
そう今回、うまくいったとしてもテンプレ化出来ない気がする。
だから、
「清水渉さん、きっとあなたが最適だと思ったから、椹木君も風峰も紹介してくれたのだと思います。自分は年末に初来日したところでしきたりなどわかりませんし、仲介というか、お声がけをお願いできないでしょうか?」
全日制の田中先生もお勧めだったしね。
物事をうまく回すのが得意な人だと説明を受けたし、ウチの弟達からも基本好評で……ちょっとイラついた。
しきたりであってるよな? したきりとかじゃなかったよな?
チアキは素で騙してくるし、シーは突っ込んではいけないとばかりにスルーしてくるからな。
「ええっと、私の日本語大丈夫でしたか? おかしなところありましたか?」
流石に初見で頼みすぎただろうか?
まぁ数割でも力を貸してもらえればいい。
「大丈夫ですよ」
彼は爽やかに笑顔を作ってくれた。
あ。タイプだなぁ。
指輪があるのが残念だ。
清水先生お借りしましたー




