1/10 夕食団欒
「そー言えば、クリスマスの夜のデートって楽しかったー?」
そう、いきなり告げたのは隼子さん。
猪口先生差入れのコンビニスイーツをデザートにつつきながらの発言だ。
びくりと反応するのは鎮と空ねぇ。
女性陣が選んだ後のデザートを物色していた鎮が狙っていた物の隣のスイーツを手にする。動揺している。
空ねぇ以外の女性陣はニヤついている。
こういう時、犠牲になるのは一カ所でいい。
ゴメンね。空ねぇ。味方はいないんだよ?
「そう言えば、あの日は朝帰りだったよね。ホテルに泊まったの?」
隆維達もそっちにいたはずだしね。
「いいや、うちじゃねぇよ」
海ねぇが容赦なくバラす。
空ねぇはすでに真っ赤だ。
「うっわーやるぅ。いつの間にそこまで進んだ高校生☆」
「そ、そんなんじゃねぇよ」
隼子さんのウィンクに妙につっかえつつ、言い訳してる様がよりあやしい。多分、みんなそう思っている。
ちゃんと周囲を確認すれば面白がられているのがわかるだろうに。
「ツリーそばでね、『空』って呼び捨ててなかった? あの日、隼子とモールの方に飲みに行ってたのよね」
少し意地悪の入った眼差しで宇美ねぇが情報を足す。
あ、それは知らなかった。
「空お姉さん真っ赤よ? 大丈夫?」
あうあぅと言葉が出ずに挙動不審になり俯いてしまった空ねぇに尋歌ちゃんが心配そうに尋ねる。
やりすぎちゃったかな。
チラチラと視線が交わされる。
足元にぽふりと暖かさを感じる。
足元で彼女達がじゃれて遊んでいた。
「デートだったんだし、気にしなくっていいだろ?」
憮然とした鎮の反応に年上女性陣が『ふ』と笑う。こわい。
「気になるに決まってるじゃなーい。さーぁ、吐けはけー」
ていていと、鎮をつつく隼子さん。
「うっせーよ。吐くことなんかねぇって。娯楽なら他を見つけろよ」
少しだけ不機嫌さを覗かせる声。
それでもどちらかというと照れ成分多めで構成されてそうだ。
方向性をずらして空ねぇを守るつもりなのかなー。
ここで他の人間のネタを振れないのが鎮ぽいと思う。
まぁさっきから妙なネタ振りやがってって視線で睨まれてるけどね。
振ったの自体は隼子さんだよ?
俺は足しただけ。
「尋歌ちゃんは好きな男の子とかいるの?」
かわいそうに思ったのか、猪口先生が振る。
尋歌ちゃんは軽く口に入れてた物を飲み下してから答える。
「お医者さんになるための勉強でそんな暇ないわ」
尋歌ちゃんの視線はノブ兄。何か含むところがあるらしい。
「おー。やりたいことがあるのはいーねぇ。アタシも図書館勤務は天職って感じで幸せさー」
「よく叱られてるけどなー」
隼子さんの言葉をまぜっかえす鎮。
「黙れ〜ィ。恋の道行を吐くことすらしないのに生意気だぁー」
鎮がはいはいと笑いながら立ち上がり、使用済み食器を引き上げる。
「どーせこれから飲み会だろー。未成年は席を外すよ」
その言葉に俺も頷いて立ち上がる。
空ねぇはすでに鎮の手伝いモードだ。
「尋歌ちゃん、ゲームでもする?」
片付けは鎮と空ねぇに任せ、小さなお姫様達を抱える。
ここに置いておいて変なものを口にしても嫌だしな。
ちらりと猪口先生とノブ兄が微妙な視線を交わしているのが見えたがスルーする。
本の分類用に使われてる部屋で鎮はソファに座って本を読んでいる。
空ねぇに軽くもたれて。
空ねぇ、甘やかすとキリがないよ?
海ちゃん、空ちゃんお借りしております




