1/1 不安
芹香が汐ちゃんに駆け寄って行って一気に心細くなる。
そっとスマホを確認すると『しばらく逃げる』の着信。
千秋。何やってるんだろう?
どこにとか何も書いてない。
バート兄を敵認識した重ちゃんが海ねぇに「ロリ変態兄弟最悪」と愚痴ってる。
ロリじゃねぇって言っても聞いてくれないんだろうなぁ。
まぁ、重ちゃんが俺の事をひどく言うのは今更だし慣れてるけど。
「鎮君」
ふわりと甘い香り。差し出される湯気を揺らめかせるマグ。
「……空、ちゃん」
差し出されているマグを受け取る。ちらり擦れ合う指先が温かい。
「心配させた、よな。ごめん」
重ちゃんはメールしたって言ってたし、喧嘩したのも芹香を泣かしてしまったのもばれていて。沈む。
そう、空ねぇのそばにいてふわりと感じる安心感と、視線の先にいる芹香への罪悪感で微妙な心境。
寂しい思いや不安を抱えているのは辛かったと思うのに気がついてやれてなくて。みあとのあを羨ましいと思ってた。そんな風に思わせてそんな言葉を言わせてしまって。
芹香にとっては言いにくい言葉だったと思うのに。
自分のことしか考えれていなかった自分が『お兄ちゃん』にこだわるのもおかしい気がして。
そばにいた時間の長い芹香の気持ちもわかってやれなくて、空ちゃんに嫌な思いをさせてしまわないかが不安になる。
そばにいたいのに離れたい。
芹香は泣かない子でいつも強気で、大丈夫だと思ってたんだよ。
だから、俺は
「気がつこうとしなかったんだろうなぁ」
どれだけのシグナルを見落としたんだろうと思う。
芹香は汐ちゃんにじゃれながらどんな制裁が効果的か一緒に考えてと尋ねている。
視線が合えば照れ臭そうに笑って視線を外す。
□□□
「汐ねぇ、空ねぇとの初詣デートはやっぱりイベントごととして欠かしちゃダメだと思うの。でも、このままじゃ鎮兄は私を理由にしてヘタレそうだし、どうしよう?」
芹香のしたたかさに俺は気がついていなかった。
青空さんち借りてます




