1/6 風峰とバート
「機嫌がいいな。バート」
ウルの声に振り返ると、ベージュのシンプルな事務作業員制服の青年が苦笑い。
「やっぱり弟たちが面白くてね!」
「いじりすぎんなよ?」
どうもシーのことをかまっているらしいウル。正直、人の弟とるなって思う。それに。
「見てるだけだよ? 今はね」
ぶらりと通勤通学のメイン時間を外した道を二人で歩く。天気は悪くないが空気が冷たい。
無駄に明るいウルの声がなんとなく寒さを軽減させる。
「今日は教科書制服配布と一応の時間割配布。そして学生生活頑張ろう宣言だ!」
「始業式による偉い人の演説?」
普通そう言うものがあると思うんだ。つい最近まで受ける側だったからめんどくさかったのを覚えている。回答は力の抜けるものだった。
「いや、そういうのは四月。今回は試運転中だからいろいろグダグダ」
「グダグダか」
「ぐだぐだだ!」
あんまりにも自信満々にぐだぐだと言い張るからつい心配になる。
「大丈夫なのか?」
「ま、なんとかなるって。ちなみにそのあと親睦会な?」
「安月給が飛ぶのか?」
「おう。会費倍ださねぇ?」
シャレにならないことをいい笑顔で言い切るウル。別収入あるからいいけどさ。
「ウルの分?」
「いや、女性陣の分」
「へぇ。そうくる?」
女嫌い知ってるはずなんだけどな。
「ダメか?」
「イイよ。問題ない」
「若い男もいるぞ! 奥さんいたりするけどな」
「それは残念」
タイプなら年齢は気にしないんだけどな。女つきかー。残念。
「ソレよりも何よりも今は!」
「今は?」
「住民課に行くぞー」
案内と、ああ、もしかして
「あー、弟さんの代行?」
「いや、俺も流石に住民票こっちに移しとくかと」
「あれ? うろな在住じゃなかった?」
数年前から調査中で彼女と住んでるっポイことを聞いてるんだけどねぇ。
「事務手続きしてなかったのさー。ばれて会長に説教コース15分。長いわー、時間の無駄ってかんじー?」
「あー、それは同情するよ」
うん、ウル、君は事務員さん。だよね?
「だろだろー」
「もちろん、会長さんに、ね」
「ひでぇ!」
軽やかな会話で寒さを紛らわせながら町役場。
書類に必要事項を記入していく。
「漢字ってむつかしいよね」
「そっか? 普通に生活するのにはこまんねぇけど?」
「人の苗字とか呼び方が多彩だろう?」
「最近は名前の方もだって」
書き上げて提出。
「ウル、何を見てるんだい?」
「んー。婚姻届。書類を片手にプロポーズしたら本気度理解してくれるかと思ってさ」
その言葉に驚く。
「プロポーズって言ったら花や指輪じゃないのかい?」
「それはもう繰り返してる。いっそもう、これにサインしてくれと言ってみようかと!」
それはムードはなさそうだなぁ。




