1/1 動物と一緒
ぷらりと歩く横には赤黒い長毛種の大型犬。
その背には真っ黒い猫が張り付いている。首元には風呂敷包み。
「学校より距離あるよなー」
体力をあんまり使わないように歩くと時間がかかる。
スマホが震えたから、マイクのスイッチを入れる。
涼維だ。
『どこいるのさ!』
あれ。泣いてる?
「泣き始め?」
『ばかーーー! なんで起きたらいないいんだよぅ』
耳痛い。
「だって寝てたし。雪姫ねぇちゃんとこにあけおめことよろ言いに行くだけだし」
『遠いじゃん! 森の家も、工務店のおっちゃんちも!』
「うるさいなぁ」
『ぇ……』
「追いかけてくればいいだろー。こっちはのんびりいってるし、お前の方が……今は速いんだから、さ」
『待ってて!』
いや、進むし。
「とりあえず西のおっちゃんちにむかってっから。公んとこの犬猫と連れてるしタクとか乗ったりしねぇしヒッチハイクも予定してねぇからのんびり来なよルートは本線沿いなー」
『うー。急いで行くー』
実際に役場そばを通る前に涼維は追いついてきた。
途中で神社帰りのバート兄ちゃんと朝刊のにーちゃんに会った。
六日に一緒に役場に行って手続きするらしい。
バート兄ちゃんのために? って聞くとバート兄ちゃん含む本人とその弟の分も手続きがあるんだとか。
バート兄ちゃんは散歩しながら帰るらしい。
朝刊のにーちゃんこと風峰さんは車を運転していた。
「送って行ってやるよ。半年ぶりの運転だぜ?」
大丈夫なのか?
疑いの眼差しに気がついたのか軽く笑う。
「兄貴の車だからな。傷つけたら金貸してもらえねぇ」
だめじゃね?
車は志狼にいちゃんの運転に比べて天国だった。
少し離れた位置にある駐車場に車を止めて、なぜか、風峰の兄ちゃんが荷物持ちしてくれた。
雪姫ねぇちゃんにコナかける気じゃねーだろうなぁ。賀川のにーちゃんだっているんだぞ……
「その包みももとうか?」
「え? これは俺が持つの」
わたせまっせーん。
涼維も不思議そうに首を傾げるがこの風呂敷は渡しません!
「むな?」
「わぅ」
黒猫と黒犬が人間を見上げて不思議そうに鳴く。
身軽になったのか犬の足が速い。
「涼維、捕獲、確保」
「え。うん」
もたもたと犬に涼維が遊ばれていると、覗きに出てきた工務店の兄ちゃんたちが犬を抑えてくれた。
「あけましておめでとうございますー♪ 雪姫ねぇちゃんいますかー?」
声を聞きつけたのか、雪姫ねぇちゃんが出てきてくれる。
わーい。新年初・雪姫ねぇちゃん!
「ゆっきねぇちゃーん。あけおめーことよろーおみやげー」
「隆維、初挨拶がソレってどうかと思う。あ。あけましておめでとうございます」
えー。雪姫ねぇちゃんが「いらっしゃい。うれしい」って笑ってくれたんだからソレでいいじゃん。
ちなみに風峰のにーちゃんはそこそこ知り合いがいるらしく馴染んでいた。
「あけましておめでとうございます。鎮兄がおいしかったといってたジェラート店のジェラート詰め合わせです。溶けてないとイイナ」
葉子さんに別口で用意したお土産を挨拶と共に手渡す。
涼維が「何でジェラート?」って顔で見てくるがスルー。
葉子さんは笑いながら受け取ってくれたから問題なしだ!
「寒い中暖かいところで食べる冷たいものは絶品だよねー」
お土産と言いつつまだ手渡してない手荷物を持ったまま、ちょっとあげてもらう。
うん、やっぱちょっと疲れてた。
そっと置いてすす、っと押しだし結び目を示す。
「あーけーてー」
にやにやする。
雪姫ねぇちゃんがどんな反応をするのかと。
不思議そうに首を傾げつつ優しく結び目を解く雪姫ねぇちゃん。
「なーーー」
結び目が解かれた瞬間に一鳴きし、雪姫ねぇちゃんのその指を舐める前足の白い黒猫。
するり
と、雪姫ねぇちゃんの膝に陣取る。
「てぶくろちゃん! え? おなか冷たいですよ?」
ひとしきり雪姫ねぇちゃんが猫を撫で終わったのを確認して、抜け殻の包み。
猫の体温で少しさわり心地温い保冷ボックスを差し出す。
「てぶくろかわいそうじゃん!」
涼維がショックを受けた表情で俺を責めてくる。珍しい。
俺は少し息を吐いて涼維を見つめる。
「ぇ?」
「雪姫ねぇちゃんが包みの結び目をあけるまでじっとしてた生き物は?」
「て、てぶくろ?」
「ん、なーーー♪」
今は雪姫ねぇちゃんの膝の上で満足げに喉を鳴らす黒猫。
「ご、ごめん隆維」
「ん。わかってくれたらいいの。雪姫ねぇちゃん」
「なぁに?」
「このジェラートね、スノープリンセスって言うんだって! ホントならお店に食べに行くほうがおいしいかなとも思ったんだけど、期間、限定だから。お持ち帰りしてみたんだー。雪姫ねぇちゃんの名前のジェラート」
食べてほしかったんだ。
雪姫ちゃん、ちらり工務店のお兄様方と葉子さんお借りしました。




