デスロード 終末へ
あーやちゃんの様子がぎこちない。
鎮の様子も微妙。
鎮の微妙な変化に千秋も反応している。
梅原先生は微妙神妙な表情で笛とメガホンとサンバイザー、そして自転車を眺めている。
「梅原先生が後ろからリズムを取ってペース管理してくれたら今度こそ潰れずにすむと思うんです」
「ほら、つい元気な子達にペース合わせちゃうからねー。清水君も下山時、怪我こそなかったものの何回か足元取られてたしー。ほらぁ。ソレをつい楽しんじゃったのもあって千秋も涼維も潰れちゃったしねー」
「愛の奴隷は愛のためにチョウキョウされるんだね!」
芹香がたぶんあまり意味を理解していないであろう言葉で嬉しそうに清水先生を見上げてから梅原先生を見る。
というか、理解していて欲しくない。
隆維と涼維が軽く吹いてるところを見ると、吹き込んだのはあいつらか。
鎮が軽く二人に拳骨していた。
「お前ら妹に何を教えてるんだ!」
梅原先生にも殴られていた。
うん。教育的指導だと思う。
でも、これさすがにお父さんパンチはしないでおいてやろう。
「愛のどれい~」
「す、鈴音ちゃん。歌わなくていいからっ」
あ~。ごめんね。天音ちゃん。
清水先生は愛の奴隷発言はまんざらでもないらしく梅原先生の様子を眺めて幸せそうに頷いている。
「そろそろいきませんか?」
平山さんが静かに提案してくる。
「よっしいくかー」
北の兄さんが芹香と鈴音ちゃんを抱え上げる。
「え! 走るんだろ?!」
千秋がぎょっとしたように突っ込みを入れる。
「おう! ただ走るんじゃつまんねーからなー」
あははーっと爽やかに笑う北の兄さん。
「たっかーい。らっくちーん」
芹香が楽しげにはしゃぐ。鈴音ちゃんも笑ってる。
「体力馬鹿のごくつぶしが」
平山さんが小声で漏らした言葉が幸か、不幸か聞こえた。
清水先生にも聞こえたらしく、びくりと体を震わせていた。
結論を言えば清水先生はへろへろになりながらも海の家にたどり着いた。
千秋はたどり着いたとたん、地べたにばったり突っ伏していた。
涼維は鎮に支えられて。
中学生組は途中話が盛り上がりまくって仲良くなっていたんだが、隆維と天音ちゃんのペースに涼維はついていくことが出来なかった。
結果潰れた。哀れな。
「がんばったな。清水」
梅原先生がそばにしゃがみこんで、清水先生を褒めている。
死に掛けの清水先生が力なくニヤついていた。
実に幸せそうだ。
「久々に走ったー」
あーやちゃんが髪をまとめていたクリップを外す。
「お疲れ様」
「あっちゃん、後で相談あるから」
「ん。わかった」
ドアが開いて白ワンピース姿のわが愛妻登場。
潮風にクセのある金髪が踊る。
「お帰りなさーイ。ご飯の準備は出来てマース。シャワーあびて来てくださいねー。着替えはおいてあるデすよー」
え?
何言いましたこの娘。
「ルシエ。ご飯の準備って?」
「はーい。商店街の有志と常連のお母さんたちが腕を振るってくれマシター。がんばってテーブルセッティングしたですよー」
ぐっじょぶ!
商店街の奥様、そして海の家老人会
「うちの母さんなんだけど、料理壊滅」
隆維が指差し説明してる。
「うちは……、お母さん、亡くなって随分だから少し、うらやましいか。きゃ!」
ルシエいきなりハグはどうかと。
「いつでも遊びにいらっしゃいデすよ」
いや、ルシエさん、キミ普段いないでしょ?
後はお食事編だーー




