山犬寺 盗み聞き中
あーやVS清水先生
「し・み・ず・く・ん」
「あーやさん」
清水君は梅原ちゃんのところに行きたいんだろうけど、鎮が妙な相談をしはじめたので出そびれたんだろう。
人のことは言えないけど。
「梅原ちゃんっていい人だよねぇ。本気で鎮のコト心配してくれてるのがわかるよ。これでもね、わたしも鎮や千秋のこと大切だし、愛してはいるのよ?」
一息漏らす。
指を絡めて軽く腕を伸ばす。
「でもね、ダメなの。見てられなくなるし、抱きしめてはあげられないの」
清水君のまなざしは冷静で反応を観察する酷薄さが透かし見える。
ああ。
怖いな。
「だからね、あっちゃんや、ルシエちゃん。それとさーやちゃんが代わりに抱きしめてくれるの」
愛してはいるけど抱きしめることはできない。
「確かに、ただの言い訳だけどね。ごめんねー。こんなこと聞かせちゃってさ」
小さく清水君が笑う。
「すっきりしましたか?」
「うん。けっこうね。それにしても弁護士に連絡かなー。一応接近禁止なのって司法取引の結果だしなー」
めんどくさい。
「そういえば、清水君、走れそう? 菊花ちゃんが一台だけ自転車こっちにまわしてくれたけど?」
「ぇ?」
あ。ちょっと期待してるかな?
「私としては、梅ちゃんに笛をくわえてもらってマネージャープレイしてもらいたいんだけど? どうかな?」
「すばらしいです! 梅原マネージャー」
よし乗ってきた!
「シズー。梅原ちゃーん。そろそろ出るよー」
照れ隠しに清水先生にはより過酷に走ってもらうつもりのあーやさん。
清水先生は三度復活できるのか!?




