デスロード編 商店街から山へ
「やっほー。デスロード中の皆様ー自転車の整備は大丈夫ですかー。柳本自転車店。やなもとをよろしくー」
千秋兄の友人の女子高生菊花さん。商店街にある自転車やさんの娘さん。
「どこの政治家の演説だ」
千秋兄が突っ込む。
「ドリンクサービスでーす」
手渡されるスポーツドリンクの500ペット。
「ありがとうございます」
「柳本は家の手伝いか?」
「そうですよー。梅原先生と清水先生のうわさは聞き及んでいます。近々お祝いの品を卒業生有志で準備させて頂きたいと……」
「どんな噂だーー!!」
手もみをしながら菊花さんが笑っている。
梅原先生大絶叫。
おばさんが「梅ちゃんかわいいわぁ」と呟いている。
「マゾ清水の嫁は鬼小梅。小梅の旦那はマゾ清水」
ボソッと隆維が噂のふたつをリズムを付けて口にする。
いやぁ、隆維。時と場合を選ぶってコト知らないよね。ほんと。
テンポ良くて一度聞いたら忘れられないけどさ。
「仲が良くて何よりだよねー」
隆維の空気読まなさはきっと父さん譲りだ。
「菊花ちゃん、今年のコンテストは7月28日日曜日を予定してるから、ポスターが出来たら今年もお店に貼らせてね」
「はーい。とーさんに伝えときますねー」
「菊花ねえちゃんは出ないの?」
「5キロダイエットに成功したらねー。隆くん。まぁ、ダイエットしてないけどねー」
「ほら行くぞー」
父さんの合図で自転車はぞろぞろと進む。
気がつくと山辺が器用だった。
前かごに放り込んであるペットボトルを片手で取り出し、キャップ開封、そのまま飲んで、キャップを締めなおす。までを速度を落とさずに自転車操作しながらやっていた。
「山辺、危ないぞ」
「器用ねー」
梅原先生が注意する。
西に向け、自転車を走らせると民家が減っていく。
山が近づいてくる圧迫感。
「山辺」
「なに?」
「西の山には熊やあやかしが出るんだぞ」
「熊?」
あやかし発言はスルーらしい。
「危ない?」
「熊よけの鈴と、にぎやかに登ってこっちの位置を教えながら行けば大丈夫だよー。歌でも歌う?」
父さんも隆維も発言がいつも唐突。
「隆君、天音ちゃんに気が有るのかしら?」
ぽつっと背後でおばさんの声が聞こえた。




