11/30 逃走中ですよ☆
花嫁奪還作戦1・2とリンク。
妙に思いつめたような空気になっていく白いカラス。
聞いている限りもうじきタイミングが来ると思うのに。
「根に持ってる?」
そう聞かれて意外と根にもたれてることに驚く。
衣装なんて着てしまえば役に入るだけなので気にしてはいないんだけど。
自分という役を自覚なく演じている先輩には意外と理解が難しいのかもしれない。
軽い言葉を重ねてゆく。
もちろんインカムで会場の音を拾うのに意識は抜かない。
そろそろかな?
「先輩がしたいと思える、好きだと思えることはなんですか?」
答えを発する時間はあげない。
たいしてずれてはいない仮面の位置を確認する。
さぁ、ここからは戦場へ。
「時間だねー。ココからは吹っ切っていこー♪」
すとんと空気が変わる。
自信のなさそうな頼りない空気は霧散する。
そう、そんな空気はカラスマントに相応しくない。
自信たっぷりに迷いなくかけられる号令に参加している戦闘員たちが声を上げる。
やっぱりこういうイベントはこうでなくっちゃ。
いやぁ、楽しいね。
暗闇の中、小梅先生がそっと運ばれていく。
照明が戻る頃には準備も終わる。
打ち合わせどおりに近づいてくる汐ちゃんを抱き上げる音。
細かい異音に対しての注意力は今の清水先生には感知しづらくなっているはずだ。
だれが薬品の使用許可を出したかまでは気にしないことにしておくけど。
それなりに裏イベントは知られているはずでわかっていない人間がいるとは思わないけれど、出席者の中には結構怖い実力者が揃っていたりする。
漫才的名乗りと軽い会話を流しながら周囲に注意を払う。
海さんとのやり取り。
用心の為の牽制行動だとは思うけど、あの蹴りの勢いは危険度が高い!
まぁこのくらいなら動揺もしてないだろうけど、カラス君を促す。
って思ったら微妙に動揺してたらしい。
詰めの甘さは後で言っといた方がいいんだろうか?
今回。メインの口上はカラスマントが言っていった方がいいからなぁ。
内心首を捻りながら会場をあとにする。
不幸中の幸いは誰も先輩が一番気にしてる突込みをしなかった点かな。
総督の運転する車へと滑り込む。
「いけるのー?」
総督はにやりと笑う。
「心配するな。若い頃はよくチキンレースをやってたもんさ」
「チキンレース?」
「どこまでブレーキをかけずに走れるかってやつだ。あのスリルがイイんだ」
だから普段は別の人間が車を回してるんだよね。
「安全運転でよろしくお願いします」
「状況によるな!」
そんな総督とカラス君の会話を聞きつつ、ぽいっと総督から投げ渡されたタブレットを操作する。
「式場を出るみたいかな~♪」
自転車とは思えない速度で追いかけてきている。
そろそろ目視可能かな?
公開の映像配信のコメント欄も盛況だし。
追いつかれるぞコメも入ってる。
ちょっとガラがわるめな清水先生の声が聞こえてきた。
いやー。そんなガラの悪さを発揮すると総督が喜んじゃうんだけどなー?




