夜泣き
「鎮あにぃ」
夜中の小さな声。
「あいてるよ」
そぅっとドアを開けて入ってくるのは涼維と隆維。
ぱたぱたと小走りでベッドに潜り込んでくる。
「ごめん」
涼維がそぅっと謝ってくる。
俺は読んでいた本をおいて布団をかぶりなおす。
枕と毛布は奴らの持参品。
すんっと鼻を鳴らす音が聞こえる。
頭を撫でればぎゅうっと押し付けてくる。
「こわい夢でも見たのかー?」
十一月になって、ラフって呼ばれているおじさんは「また来るー」と言い残して帰国した。
そういっちゃんとこのおとーさんは苦い表情で眺めていた。
あんな感じの付き合い温度いいなってちょっと思った。
隆維は体調こそ微妙そうだが落ち着いたんだなと思っていた。
だけど、夜中今日と同じように訪ねてきた。
最初の夜はよくわからなくて泣き止んで寝付くまでに二時間。
それでかなり不安定になっていることがわかった。
「……いないの。暗くてよくわからない。寒い感じで」
ポツポツと隆維が言葉をこぼす。
毛布の上からぎゅうっと抱きしめる。
「怖かったんだな」
言いきかせる。
「……わかん……なぃ」
すんっとまた泣き始めた気配を感じる。
『痛いコト』『悲しいコト』『こわいコト』
感じた『ソレ』がそうなのだとゆっくりと繰り返す。
体の調子が良くないのは困ったコトだけど、『ソレ』を知ることは必要だと思うから複雑。
今の隆維はとても痛みに弱い。
心に感じる痛みにも物理的な痛みにも。
転んでぽかんとした表情のまま泣きながら困惑している姿にこっちも困惑。
そんな隆維におじさんがしゃがんで視線を合わせ、『痛い』んだよと説明して撫でていた。
『感覚』と『情報』を結べれば少しは落ち着くようで、その後は少し甘えてくる。その繰り返し。
小さな子供が繰り返すように繰り返す。
平気そうな顔で過ごしつつ、唐突に入る不安定なスイッチ。
うまく情報処理ができないとそのまま発熱することも少なくない。
泣きすぎで発熱しているような気もしないでもなかったり。
ポンポンと撫でながら寝かしつける。
「ここに居るよ。俺も涼維もいる。こわい夢を見てもここにいるから」
十一月の夜は三夜に二夜、こんな日だ。




