表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
URONA・あ・らかると  作者: とにあ
五月・六月
23/823

6/14 家庭訪問。ではないはず。

6/14が終わらない~

6月14日


水温、磯の生物の観測を終え、海の家に帰る。

壁には「ケイドロ大会開催」「夏祭り」「水着美女コンテスト」「ダイビングスクール生徒募集」の張り紙が目に付く。

「ケイドロ大会?」

しばらく眺めていると背後のドアが開く音が聞こえた。

「すみませーん」

声に振り返ると、小さな少女と兄であろうか?青年。

「入場料は二人で600円です」

とりあえず、営業スマイルで。

少女が微妙に表情をこわばらせた。


「大人。二人です」


ええ? 背伸び?


「ああ。高校生? ごめんなさいね」

横にいる青年が顔を引くつかせている。

笑いをこらえているんだろう。

あら?

じゃあもう少し上?

「あーやちゃん、梅原先生は僕らと同い年だよ。いらっしゃいませ。先生方。先日はうちの子たちが迷惑をかけたようで。きっちり躾けておきます」

出かける準備をした兄が笑いながら挨拶をしている。


「先生?」

同い年?

「うっそぉ。絶対もっと若いよー。ほら、お肌すべすべだしちっこいし」


「ぅえ? な、なにをっ」

「ほら、あっちゃん、こんなにキュートなのに同い年なんてありえないわよ」


やーん。


腕の中でじたじたしてるのがかわいいー。



ふー。



「あっちゃん、これ欲しい」

「あげません」

青年が器用に私からキュートな生き物を取り上げる。

「まぁ、あーやちゃんのことは気にせず、奥へどうぞ」

「大人、一人500円だったな」

言い張ってるのがかわいい。

「先生から料金はいただきませんよ。清水、先生でしたよね? 日生暁智です。今年度一年の隆維と涼維の父です。うちの子たちがお世話になっております」


「清水 渉といいます。「うろな町の教育を考える会」の連携担当を勤めています。よろしくお願いします。ところで、」


ん?

かたっくるしいの終わり?

「あーやさん、梅原先生はあげません」


えーー


「清水君のだとでも言うの?」

「そうです!」


胸張って言ったよこの青年。

「あ。おめでとうございます。梅原先生。素敵な恋人ができるのはやっぱり嬉しいですよね。ちょっと待っていてくださいね。あーやちゃんはセルフコーナーからお茶淹れて」

兄がにこやかに梅原ちゃんの反応(否定しようと真っ赤になって声を上げようとしているが口を挟めずパクパク)を無視したことを言い放つ。

ん。

梅原?

「小梅ちゃん時々鬼小梅? しずが剣道教えてもらってた先生?」


キュートな生き物が頷く。

「日生彩夏。鎮と千秋の母です。在学中はさんざご迷惑をかけたとか」

「いえ。あの子達はいい子でした」

まっすぐな視線がお茶を取りに行こうとした私をなぜか留める。

視界の端であの青年がセルフコーナーに行ったのが見えた。

「在学中、何度かお母様に会えないか打診させていただいたことはご存知でしょうか?」

「ええ。知っているわ。でも私育児は兄に任せているの。教育方針がぶれるのは良くないと思っているから一切口は出さないわ」

子供たちの教育・育成に関して私は時々しか口を挟まない。子供たちもそれは承知している。

自分の口調が攻撃的になったことは自覚している。

子供を放置している罪悪感がまるきりないわけではないから。

「いろいろな事情があると思います。でも、もう少し、鎮君と千秋君を見てあげてください。認めてあげてください」




「放り出すな。親というなら責任を果たせ。そういうわけね?」


まっすぐなまなざしが苦しいな。


しかたないなぁ。


「じゃあ、明日の反省☆きれいな景色を見て死ぬほど走って鍛えなおそうデスロードに私も参加しますか!」

まずは一歩。

「デスロードって、あーやちゃん、そんなに無茶なプランじゃな」

「デスロードよ」

否定は認めない。

「うろな町一周じゃなく?」

「ええ。新ルートです。南は工場地帯で少々危ないので省いて町の歴史やプチ伝承、きれいなものを見て走るルートを探求しようと思いまして。まだ練りきっていないんですけどね」

ブルーベリーとラズベリーのベリータルトと紅茶のシフォンケーキを差し出されたので受け取る。

プランを話す兄。マジ楽しそう。

どのくらいにカットするかは悩むところだ。

「清水君は甘いの大丈夫?」

「好きですよ」

んじゃ、カットしますか。

「ちょっ」

「二言はないよね?」

四分の一カットのケーキを取り皿に載せる。

青年は悔しげに受け取る。

両方四分の一カットずつ載せようかと思ってたけど、片方であそこまで反応されるとなー。載せちゃえ。

「ああっ」

馬鹿なやり取りをしている向こうで梅原ちゃんと兄が微妙まじめに話し合っている。

「参加者は?」

「うちの男の子と、女子中学生一人、小学三年生の女の子二人と、後一般、3人ですね。もちろん小学生はフルコースはさせませんよ?」

「参加者の引率要員は?」

「一般の3人は引率フォロー要員も兼ねてます。自分ももちろん、走りますけどね」

ゴロゴロのベリーがおいしい。

三年生って。

「芹香も参加なの?」

「そうだよ」

「私と、清水も引率要員として参加しよう」

「ありがとうございます。コースの説明はこちらのコピーに。女の子たちの参加もあるのでハイキングはうろな裾野スタートのフルコース、うろな高原スタートのリトルコース。ランチはうろな山で持ち寄り品を先に運んでおいてもらう予定です。うろな山下の側にある山犬寺のご住職にお願いして下山後のお茶。そこから森沿いにジョギング。そういうコース予定ですね」



絶対。デスコース。



「清水君、楽しみだね。梅原ちゃんのランニング姿」

そう言いつつ、生クリームを青年の皿にもっておいた。

「ランニング姿……」



清水先生梅原先生レンタル中です。そのままデスロード編(?)でもかりっぱ予定です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ