11月 うろなの日々
ちーちゃんがご飯を作ってくれるのは楽でいい。
時々、好みの味じゃないのはわざとではなさそうで。
いつまでも私がそれを普通だと思っていると思ってるんだろうか?
確かにちーちゃんにはその方が楽だろうなと思う。
気がつくと近所のおばさま方からは公認カップル扱い。使えるとは思ったけど断ったんだけどな。
毎朝ごはん作りにくるし、職場そばまで迎えに来るし、職場のおばさま方にも「いいわねぇ」と冷やかされる。
おかげで残業時にはメールするクセがついた。
『遅いから』
とメールを入れると『じゃあ、終わりそうな頃に行く』とレスが入る。遅くなるならなおさらだという理論らしい。
まぁ、一回補導されてシンナー疑われて誤解を解くのに沢嶋先輩を呼び出す羽目になった。
髪やら何やらに仕事で使ったスプレー剤の匂いが染み付いていてしかたなかったんだけどさ。
気分が悪かったから風にあたりながら帰っていたのが敗因だったんだろうとは思う。
でも、絶対電車は酔うのが目に見えるしなぁ。
仕事が終わって余裕がある時はそのまま高校に流れる。
空いている先生が勉強を見てくれる。
基本はネット授業を受けているとはいえ、じかに教えてもらえるのは貴重でありがたい。
さーねぇとあーねぇは昼の高校か、いっそこっちで学校行けばとか言ってくるけど、私としては自活していきたいし、今の職場で得た信頼も多分ある。簡単に言わないで欲しい。
というか、ちーちゃん。いつの間の合鍵ゲットしてるんだ?
いいんだけどさ。
朝、早く家を出れる日は職場まで走ったりもする。
基本のルートはしーちゃんに教えてもらった。
それに迷っても、誰かに聞けばなんとかなる。
教えてもらっている相手は、天狗仮面のお兄さんが大半な気がするけど。
方向音痴とかって思われてないといいんだけど。
帰りにちーちゃんが迎えに来るから道の把握をするのがどうしても朝になっちゃうんだよね。
大きくは間違えていなくても知らないルートに出て不安になることはある。
おかげであの後ろ姿とかに安心するようになってきてる自身に微妙な心境になる。
仕事も好き。学校も好き。学校に行けば放課後の部活中のちーちゃんやしーちゃんの友達が親しくしてくれる。
放課後、グラウンドで練習している運動部たち。
楽しいと苦しいがないまぜになった表情が達成感に変わる。
ああ。イイなぁ。
「しーちゃん、今度ねぇランニング、付き合ってよ」
「いいよ。いつ?」
うろなでの生活は充実の日々だ。
天狗仮面お借りしました。




