表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/823

10/28 話し合いの準備。

「さて。話し合いをしようと思うんだけど、アーサーが来てくれる自信がない」

「何おっしゃってるんです? そのまま訴えられるとおっしゃるんでしたら弁護士を準備なさることをおすすめいたしますが?」

「……君ね。私を訴える気があるんならすでに弁護士から連絡が来るさ。それなりにツテはあるからね」

 それならば良いとばかりに秘書は沈黙を決め込む。

「体調が戻るまで私の手元で預かってかまわないそうだ」

 こつんとティーポットを爪ではじく。

「本当に、もっと早く来日するんだった」

「引き取りたいと提案なされるおつもりですか?」

「うーん。最終手段だよねぇ。書類は準備してあるけれど、他の書類も準備してあるし、ね。どれが必要になるかだねぇ」

 秘書の眼差しに苦笑が漏れる。

「あの家族から家族を崩させる気はないんだよ。でもねぇ、彼女は抜かなくてはいけない。もしくはアーサーがはっきりした態度を決めなくちゃいけないと思うんだよ」

 ミルクティーで喉を潤す。

「自覚してるかどうかは別として、アーサーは私が子供たちを預かるということに安心してると思うんだ。姪であるセリカに対しては戻ってきたことに安心しながら。ね」

 少し思いをはせてるのか動きを止め、一拍おいて頷く。

「確かにそういう印象は受けました」

 土曜の晩にビーチに散歩に出かけ、子供たちを見つけた。

 寝巻きに素足だった隆維とそれにもたれるように眠っていた少女。

 少女を自宅まで送っていった時に秘書はアーサーに会って、第一の判断を下しているとわかる。

「年上の友人に安心している。という感じですか?」

 違和感をもっているのか疑問符で尋ねてくる。

「友人。アーサーとの仲は友人ではないな。残念ながらそこまで踏み込めていない。彼は命の恩人で、友人の弟の友人で、友人の妹の夫だねぇ」

 しばしの沈黙。

「他人ですね。通りすがりの命の恩人ですか?」

「容赦ないね」

「事実でしょう? 最初にどうして預けてもらえたのかが疑問なくらいですよ」

 ポットからカップへと紅い液体が注がれる。

「彼女が、心を病んだからさ」




◆ ◇  ◆


「おはようございまーす」

 かららんとかわいい音が響き奥から足音が聞こえてくる。

「おはようございます。初診……」

「ごめんなさいね。信弘くんに用事があるのだけど、いいかしら宇美ちゃん?」

 少しこわばった表情で彼女は頷くと踵を返す。

「戸津先生。日生さんがお話がしたいそうです」

「え? どうかしたの~? あれ? 沙夜香ちゃん?」

 疑問符を飛ばす信弘くん。

 その後ろからひょろりとした老人が信弘くんを突き押す。まぁびくともしないが。

「じじぃ……」

 不満げに振り返る信弘くん。

「暁の問題には気をやんどったろう。行ってこい」

「ご迷惑をおかけします。あっちゃんもあーやちゃんもひねてるものですから」

 苦笑がこぼれるが全面的に手を差し伸べてくれる姿には頭が下がる。

アレはもう一人の孫のようなものとおもっとる」

 気にするなと言ってくれるのが嬉しい。

「ありがとうございます」

「なに。レンタル料は酒とつまみとさーやじょうちゃんのお酌でかまわんよ」

「はい。落ち着きましたらぜひお酌させてもらいますね」

 事前に電話連絡。最低限の事情を信常さんには伝えた。

アレもな、じょうちゃんたちも孫のようなものだし、その子供らはひ孫のようなものよな。やんちゃが過ぎるのはどうかと思うから灸もすえねばならなくなるがなぁ」

 からからと笑う信常さん。

「そのときはぜひ容赦なくお願いしますね。おじいさま」

「おうとも」

「じじぃ。年なんだから大人しくしてろよ。じゃあ、久島さん、今日はあとよろしく。こいしがさきアニマルホスピタルの猪口先生に応援は頼んであるから。もし問題があったら携帯のほうにれ……」

「連絡はせんからさっさと行ってこい!」






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ