10/28 曇り
秋の日の曇りは気持ち冷え込み、布団から出たくなくなる。
特に布団の中に猫や犬がいたりする場合なおさらだ。
「おはよう。天音ちゃん」
涼維の機嫌のよい挨拶。
ここ半月は隆維の休みのせいもあって沈んでいたのが嘘のような朗らかさ。
「隆維、学校出てきたの?」
授業の始まる前の時間。一緒にいないということはまだ休みだとは思うんだけど。
「ん。まだ。体調不良だった上に新たに風邪まで引いちゃってもうちょっと長引きそう。薬がまずいってごねてる」
すらすらと状況を教えてくれる。困ったような表情はしているが心配していると言うか『仕方ないよね』の色が強く感じる。
つまり、大丈夫と思ってると言うこと。どこか心に冷たい液体が広がる。
「そぅ。……昨日、鎮さんが心配してたけど?」
きょとりと動きを止める涼維。
「なんで?」
不思議そうな発言。
感動!
生き別れた
親子の再会!!
とテロップが流れそうな昨日の光景を思い出す。
「名付け親のおじ様と再会して嬉しかったのはわかるけど、もう少し回り、見たほうがいいんじゃないの?」
あの時、パパの説明がなければ私もちょっとは心配する。涼維の対応を見て誰かが心配していると言うことを考えてもいなかったことがわかる。
「名付け親……。ああ。ああ、そっか。昨日すっぽかしてごめんね。ラフに会えて嬉しくて」
嬉しそうにはにかんで笑う。
「おねぇさんたちが誘拐って心配してたんだよ?」
「え?」
心底わからないと言う驚いた表情。
「あ。先生来た」
状況がわからず、戸惑ったことを有坂先輩はぶつけるかもしれない。
いままでの経験からして、鎮さんは何も言わないんじゃないかと思う。
でも、涼維があの場にいた知り合いに心配をかけたのは事実だと思う。
だって鎮さんは『名付け親のおじ様』を『知らない人』と言ってた。
そんな中、初対面の私のパパの言葉でどこまで安心できるんだろうと思う。
拒否されても手を伸ばしてくれるところのある人だ。
でも、拒否されて傷つかないわけじゃないと思う。
少し伸びかけで邪魔になってきた前髪をヘアピンで留める。
涼維は拒絶した気はないと思う。もちろん、拒否した気も。
でも、身内に心配をかけたことは知っておくべきだと思う。
教科書とノートをまとめていると涼維がくる。
「えっと、天音ちゃん、心配かけてごめん」
「別に。私はパパに事情を聞いたし。パパの契約相手が涼維の名付け親のおじ様なわけなんだよね」
あー。
パパのお仕事相手の関係者かぁ。
「天音ちゃん?」
「うん。気にしないで。家族や家庭のあり方はそれぞれだもんね」
パパは気にしなくていいと言いそうだけど。
私と鈴音ちゃんには少し甘いから。
涼維がその状況を家族のあり方だと思うんならそれに私もあわそうかな。
「涼維くんは気にしないでいいと思うよ。大好きなおじ様に会えてよかったね」
家族の仕事相手の大切な存在ならそれなりの対応がいるものだし。
呼び捨てなんかもってのほか。
それに宗兄は鎮さんのことをかなり意識してるし、どう転んでも対応変える時期だったのかなぁ。
「涼維くん?」
「えっと、あの、心配かけてほんとーにごめん!」
なにか、焦らせるようなこと言ったっけ?
なぜか平謝りされた。
困る。




