10/27 ホテルの一室 夜
「誘拐犯ですか」
ため息がこぼれる。
彼はこちらの意見など気にしたふうもなく、ベッドで眠る子供の額にキスをおくる。
「断言かい? 人聞きの悪い」
「保護者の方には?」
「一応ね。少し、遅かったかなぁ」
愛おしげに撫でながら囁く。
「あまり褒められた行為じゃありませんよ」
「だってねぇ、この子達は私にとってかわいい天使なんだよ」
緩くとろけた表情で呟く。
「……」
甘い親バカのノロケだ。
しみじみ愛おしげに回想を語る。
「はじめはなかなか笑ってくれなくてねぇ。うまく言えないなりに『パティ』と言って笑ってくれた時はもう心臓が止まるかと思ったね。寂しがりやであまえたで。もうベタベタに甘やかしたよ。本当は返したくなんかなかった。彼があの子達を子供として愛情を注げるのか疑問だったしね」
「いろいろなカタチがありますから」
望む家庭になるかどうかは当人達の相性とかいろいろ兼ね合いがある。
その試練が成長に必要なものだったりするケースもあるので一概になんとも言えない。
「彼女は問題外としても、彼もまた状況に無理強いされた子供だったからね。不満を表に出さない子だったからまわりがのっかったところはあったんじゃないかな」
「子供のそばでする話ではありませんね。添い寝なさいますか? それとも明日の打ち合わせ?」
「打ち合わせ、かな」
子供たちを軽く撫でてベッドから離れる。
「ところで、なかなかいい試合でしたよ」
「あ。見そびれた! それでどっちが勝ったんだい?」
「清水先生の方ですね」
「清水、センセイ?」
誰それの口調。
「……ロリマゾの方です」




