10/25 晴れの日お引越し
アパートの鍵を軽く揺らす。
今日からとりあえず、年末までの予定で暮らす部屋。
近所の住人が育てている鉢植えや周囲の風情が 下町アットホームな感じを醸し出してて、いい感じに思える。
くるんと回った鍵が指から抜けて飛んでいく。
親切な人が拾って手渡してくれた。
下げた頭から見えるのは青いジャージ。
頭を上げて近所付き合いも考慮にいれて笑顔で挨拶……
数分後、ご近所さんにひたすら頭を下げる私がいた。
だって、頭を上げたそこに居たのは。
天狗のお面をつけた人。
『変質者がいるっ』って絶叫しちゃい、とんだ近所迷惑に。
ただの仮装マニアだなんて思わないじゃない。
驚いたんだよ。
謝罪したら、慣れたふうに『かまわない』と許してくれた。
慣れてそうだとは思う。
アパートの部屋は先輩が手配してくれた必需品と先に送っておいたダンボールが無造作におかれている。
二ヶ月ちょっとの一人暮らし予定。
今日中に住民票の手続きをして高校の方に挨拶に行って11月から勤務の現場にも挨拶に行かないとって部屋の片付け明日以降でいいよね。無理だわ。
必要書類を集めてカバンにいれて部屋を出る。
「あら、行ってらっしゃい」
ご近所のおばさんがにこやかに声をかけてくれる。
さっきの出来事をどうか早く忘れてください。恥ずかしすぎるっ。
心持ち照れつつも挨拶は嬉しい。
「いってきます」
さぁ!
まずは町役場だ!
天狗仮面様お借りしました




