10/20 ホテル一室
「今日はいい天気だよ!」
ホテルの一室で窓の外を眺めながら金髪の男が書類を繰る黒髪秘書に声をかける。
「そうですね」
「日曜日だよ!」
「そうですね」
「神様も世界創造七日目は安息日としたんだよ?」
「そうですね。クリスチャンじゃないものですから」
「天狗探しに……」
「安息日は大人しく過す日では?」
底抜けに明るかった声がどんどん沈み気味になっていく。
書類を繰る臨時秘書がため息をつく。
「昨日、高校文化祭を覗きにいったでしょう?」
「ああ。ミチコはまさにヤマトナデシコだね!! 清楚さと妖艶さの競演がとても魅惑的だ!」
ハッピーテンションを取り戻した男はうんうんと何度も頷く。
高校の文化祭に言って教師をナンパする男。
目立ちすぎである。しかも悪目立ち。
臨時秘書の想いは(警備雇って休暇をとるんだった)である。
あまりの醜態に同校に通う息子に冷たい眼差しを送られた。
何とか、回収したものの元から低めになっていた書類回転率はだだ下がり。
逃げられていないことだけが救いのような状況だ。
「あのツンっとしたスパイシーさがたまらない」
ハッピートークを聞きながら、書類の優先順位を確認する秘書。
「この町にきて本当に良かったよ!」
窓からようやく離れ、書類を繰る秘書を目撃した男はがっくりと沈む。
「その書類、多くないかい?」
「そうですか。 資料は別ですよ?」
淡々と告げる臨時秘書を男は震える指で指す。
「イジメだ。パワハラというやつだろう!?」
告げられた臨時秘書はフッと小馬鹿にするように息を吐く。
「お家の頂点に立たれてる最高権力者はラフィエート様です。親族会社・財産管理運営のお手伝いをするのが自分の仕事ですが、必要ないと仰るなら契約破棄の手続きを進めましょう。書類はこちらになります」
一枚の書類を挟んで沈黙。
「そんなものを準備しているのかい」
「はい。サインしていただくだけですから、お時間と手間をあまりおかけせずにすみます」
金髪男は書類を受け取るとさっと目を通して、破り捨てる。
「せめてランチはルームサービス以外。ホテル内でも……かまわない」
「承知いたしました」
「天狗。ミチコ。ジャパニーズファンタジー」
ブツブツと呟きつつ、書類に向かう。
「和食になさいますか?」
「ビネガーとワサビと生魚は苦手だ」
話題で田中倫子先生と天狗ネタ出てます




