日生さんちのお説教タイム1
「女の子、追い詰めたんだって?」
おじさんがにこやかにお兄ちゃんたちに語りかけている。
「さいてー」
「さいてー」
「さ、さいてー」
私が言った後、みあちゃんとのあちゃんが繰り返す。
「は?」
間の抜けた声をあげるのは上のお兄ちゃんの半分。半分名・鎮
「あー」
心当たりのありそうな声をあげるのは下のお兄ちゃんの半分。半分名・涼維
「えーお前らのせいでかわいい妹達に一緒くたにさいてー呼ばわりされたー。傷つくー」
これは上のお兄ちゃん、半分名・千秋。
「千秋、鎮。指導責任により同罪だから」
おじさん、ニコニコしながらセンコク。
指導責任。
年上が年下の行動を見守って導く。
上のお兄ちゃんは下のお兄ちゃんを。
だから私にも指導責任がある。
私はみあちゃんとのあちゃんに対して見本となるべく行動し、間違ってると思える行動を取っていたら注意しなくちゃいけない。
でないと最終二人にふりになっちゃうからね。
自由にはセキニンがついてきて始めて自由でいい。
自分へのセキニンを果たさない自由は最後には自分が迷惑だし、大好きな人にも迷惑をかけるからダメなんだって、おじさんは言う。
みあちゃんやのあちゃんに嫌な思いはさせたくない。
だからセキニンを真面目に考えなくちゃいけない。
ママが今自由にしているのは、死んだパパに対して、義務とセキニンを果たしたからだって言ってたし、おばさんもちゃんとしたお医者さんになるためのセキニンを果たしている最中だ。
するべきことをする。
お兄ちゃんたちはそれが全うできなかったらしい。
弱い相手を困らせてはいけない。
常々、誰からともなく言われ続けてる言葉。
「勉強や運動はできなくてもいいから、弱い相手を守ってあげれる優しい人になってね」
ママもおじさん、おばさんも海の家に遊びに来るおじいちゃんやおばあちゃん達もそう言う。
つまり一番守られるべきセキニンだ。
うん。
「お兄ちゃんたちサイテー」
「お兄ちゃんたちひどいー」
「お兄ちゃんたちおやつ抜き?」
わたしと妹たちによるダメだし三連。
最後はダメだしっていうより、罰の提案だったけど。
「倒れるなんて思わなかったんだ」
不機嫌そうに下のお兄ちゃん、半分名・隆維が呟く。ふわりとした明るい茶髪がススケテ見える。
「まぁ、思わないよねー。男の子っぽいけど、隆維が可愛いと思ったからコンテスト誘ったんだし」
「仕草がさり気なく可愛かったんだ。男の子っぽいのは髪型だけだと思う」
「いや、相手は転入生だからね、隆維。髪型印象は大事だと思うよ?」
下のお兄ちゃんのジモンジトウ。
二個一がゆえの超独り言。
「いろいろ聞いたら、登校する前日に長船のおっちゃんのトコでカットしたんだって」
「隆維いつの間に山辺さんの情報収集してたのさ!」
山辺さん?
「べるべる?」
「「べるべる?」」
「今日、お友達という名のライバルになった迷子だった女の子。山辺鈴音ちゃん。北小の三年生。鈴音ちゃんだからべるべるね」
「ん、んー妹さんかな? 名前の雰囲気近いし」
「明日一緒に遊ぶ約束してるのに。お兄ちゃんがひどいコトしたってばれたらいきなり私が不利じゃない! お兄ちゃんのばかぁー」
「どこで、そんなのに会ったんだよ」
千秋兄がもらす。
「町役場前、かな。ちょっと騒ぎになってて、向こうのお兄ちゃんとオレでちょっと通じ合ったよ」
鎮兄、同性のお友達いないもんね。
「初めての対決は町役場前よ!」
えっへん!




