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その頃の涼維

「木下先生ー。用事って何ですかー?」

「おっ! 日生か」

「はーい日生でーす」

 隆維のことで聞きたいことでもあるのかな?

 別件かな?

 まぁ、隆維に行っといてって言われたんだけど、あれ?


 あれ?


「木下先生ー」

「なんだ?」

「呼んだの、どっちですかぁ?」

 マッチョ教師と見つめ合うって暑っ苦しいよね。

 あ。察した途端肩を落とした。

 

 あーぁ。


「気を落とさないでくださいねー。隆維に悪気はなくって、面倒だって思ってるだけですから」

 さ、帰ろ。

「それじゃあ、ハズレは失礼しますねー」

「待ちなさい」

 なんで引きとめられる?

 かえりたいー。

「そんなにめんどくさいのか?」

「あー。えーっと、先生がじゃなくて、隆維の方が極端なだけだから、気にするだけ無駄なんですけどねー、まともに付き合おうとしたら、マジ、疲れちゃいますよ?」

 客観的にみれば、めんどくさいのは隆維の方が断然だ。

 隆維でもないので同じ性質持ちがいたら、間違いなく避ける。

 隆維だから別にいいいのだ。ここ重要。

「隆維、言われてもわかんないから、一番いいのはそんなものって思っちゃうことですよ?」

 そして放置が理想。


 そしたら俺もめんどくさくなくて済む。


 ほっといて欲しい。


 授業妨害とか素行不良とかはないと思うんだけどな。

 たぶん。


 あー。気がつかずに問題行動でもとってるのかな?


「問題があったんなら言い聞かせときますけど?」

 わかるようにするには伝え方が特殊だからなぁ。

 だいたい、忙しいだろうに問題としては重要度低いと思うんだけどな。


「日生は大丈夫なのか?」


 ?

 あ。

「涼維って呼んでください。ややっこしいし」

「わかった」

「大丈夫なのかって何がですか?」


「疲れたりしないのか?」

「しないです」

「そうか」

 あー。なんだかなー。

 先生の相手は疲れるかもー?

 マッチョがしょんぼりしないで欲しいよなー。

 ショボマッチョじゃゴロが悪……くもないか。意味違いそーだけどなー。

 あんまり隆維一人にしときたくないんだけどなー。

「あのねー、せんせー隆維はさ、他の人が痛いとか辛いとか根本的に理解できないの。だから、心配されてもわけわかんなくて気持ち悪いの。だから、先生は悪くないし、力不足でもないの。ただ、隆維は手を差し伸べられてもわかんないの。ほっといていいの」

 俺が嫌がることは嫌がるからそこを利用していいコトとダメなコトを判断してもらってるんだよね。


 自分が痛いこともわかんないけど。



 そこがこわい。

 痛いことも辛いと思うことも隆維はよくわかっていない。

 気がついた時、すごくこわかった。


 あ。やなこと思い出した。

「えっと〜。もういいですかー?」



木下先生お借りしましたー

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