9/14 くもり 早朝
「高卒って肩書きか。うぜぇ」
チラッと横にいる鎮がこっちを見てくる。
表情的には何で絡まれてるかわからないってえ感じだ。
「バイトでも、派遣でも、基本的にあった方がいい資格だと思うよ。というか、ないとかなり不利じゃないかな?」
黙っているとひとつ息を吐き、言葉を続ける。
「今から資格を狙うなら、通信制と定時制を併設している夜間かな。最短、3年昼と同じ期間で卒業できるし、かかる資金は教材費あるけど、年間二万からそこら。そりゃ、詳しく調べないとわからないけど10万は越えないと思う」
呆れる。
何でこいつそんな情報持ってるんだ?
「あと、そういう学習を支援してる職場は結構あるよ。新聞屋の奨学金とかね。学費と寮を提供してくれて朝夕の配達とちょっとした昼間の作業。慣れるまで体力的にはキツイけどね。もちろん、給料は出るし」
説明がフッと途切れる。
「きいてるか。有坂?」
覗き込んでくる緑。
「きーてるよ」
そう。と頷くと鎮は視線を外す。
「詳しいことはきっちり調べなおさないとわかんねぇけど。とりあえず、そんな感じ?」
とりあえずって情報か?
「定時通信制なら同年代少ないし、いろんな年代いて、それはそれで楽しそうだよな。細かい手続きとかってたぶん、中学で聞くのがいいと思うけど、小梅先生新生活中だしなー。お母さんになるんだって」
ふーん。
小梅がお母さんにねぇ……
!?
「はぁ!?」
まて!?
サラリとナニ言った!?
あのロリっ子鬼小梅が?!
「どこの変態ロリだよ!?」
「中学の新任教師でマゾ清水で有名。知らない?」
チラッと聞いたことあるかも?
「千鶴ちゃんや千秋から聞かなかった?」
「あいつらとそういう話はしネェ」
つーか
「あーりーえーねー」
あの剣道馬鹿なロリッ子鬼が母親ー?
孕んでる姿が想像つかねぇ。
「定時通信制、興味あるんなら調べとくよ?」
鎮が言ってくる。
「イラねぇ」
空気で鎮が少し引いたのがわかる。
もう少し、押すかどうかで悩んでるんだと思う。
「そうだ」
「なに?」
「これ預かってたんだよ。何で俺が使いっぱやらなきゃいけないんだかよー」
茶封筒を鎮に押し付ける。
中身は現金。
つーか、簡単に騙されてんじゃねぇ。
俺が千秋に文句つけられるじゃねーか。
「ああ。なんとかなったんだ?」
ホッとしたように笑う鎮。
なぁ。千秋、ちゃんと騙されてるって説明してやった方が良くないか?
「まぁなー」
「有坂の友達?」
「ああ。ちょっとそそっかしい奴だから、あとで見つかったらしい。気恥ずかしいからって頼まれた」
へぇっと素直に頷く鎮。
いや、真に受けるなよ。
嘘だから。
「俺さー。やりたいことわかんないから夢があるっていいなーって思う」
あいつの夢は『他人の金で楽に生きていきたい』だけどな。
話題に梅原先生、清水先生出てます




