9月の図書室。
「文ちゃん。重いでしょ」
小柄な一年生女子の抱えていた本を三分の二ほど取り上げる。
「あ」
驚いたような声をあげてこちらを見上げてくる。
一年生の西村文ちゃん。
おさげメガネで人見知りさん、お互いに図書室と図書館の常連なので遭遇率は高い。文ちゃんは図書委員もやってるしね。
最近、ようやく慣れてきてくれたかなというところ。
取り上げられた荷物は目的地まで返却されないのを理解してくれるようになったのは最近だ。
「ありがとうございます」
そっと視線を外して恥ずかしげにお礼を言ってくれる。
「どういたしまして。じゃあ、ドアの方をよろしく」
声をかけて、残りの本も取り上げて重ねてしまう。
「……はい」
少し、困ったような表情で渋々頷く。
真面目な文ちゃんとしては仕事を取り上げられるのはあんまり嬉しくないんだろうなと思う。
慣れてきてくれたおかげでわかったのはちょっと病弱気味であるということ。
まぁ、気を配れる範囲でみておこうかと思う。
開けてもらったドアをくぐり、本をカウンターに運ぶ。
「先輩。ありがとうございました」
礼儀正しい文ちゃんがぺこりと頭を下げる。
「はいはーい。いる時は使っちゃってねー。文ちゃんの役に立てるのは本望だから」
「ふぇっ、も、もう。先輩ったらじょうだんばっかりっ」
赤くなってバタバタと反応する文ちゃんはカワイイ。
「えー、ちゃんと本気で言ってるよー?」
ちっこいのに高いとこの整理とかしてるの見てたら心配だし。
夏が終われば、例年秋は図書室と図書館に入り浸って本を読み漁る。
朝の授業前と昼休みはほぼ図書室にいる。
そういっちゃんとは仲良くなるつもりだが、この習慣を変える気はない。
結局、人生進路はまだ決まっていない。
少し時間もあったし、適当に選んだ本をパラパラと読む。
活字を追いかけるのは好きだ。
神楽さん
仕立屋怪事件簿より西村文さんお借りしております。




