9/10 通学路の姉妹
「天音おねーちゃん」
「どうかした? 鈴音」
二学期になってから夏休み末の発熱癖を嘘のように治した鈴音が私を見ている。
「今日も隆維おにいちゃんや涼維おにいちゃんと遊ぶの?」
「ん? たぶんね。一緒に来るんでしょう? 芹香ちゃんと遊ぶんでしょ?」
とりあえず、鈴音の髪を二つに分けて結んであげる。
「なー」
「んにゃー」
時雨とたぬきがのんびりといってらっしゃいの声を上げる。
「いってきまーす」
「いってらっしゃい」
さなえさんがにっこりと見送ってくれる。さりげなく鈴音ちゃんの髪もチェックしてくれる。
兄さんが独り暮らしを始めてからの習慣だ。
出は少し早めに出て岡本さんちの誓ちゃんと一緒に学校に行っている。
通学路、歩きながらたわいのない会話をする。
聞こえてくる虫の声が変わったねとか、学校の先生やクラスの子の話題だ。
クラスでは好きな男の子。とかも話題に上がるらしい。
やっぱり有名なのは六年生のボスと四年生の篠原君。他にもいないわけじゃないけれど、鈴音はそれなら南小の六年生の二人がいいらしい。
六年生の四人はいいよねって言っている。
はやと君はと聞くと、きょとんとして、対象外って笑われた。
鈴音、そういう話題に興味あるんだなぁって思う。私は興味持てないからな。今のところ。
「少しぐらい年上の人がいいなぁ」
「鈴音は年上の人がいいんだ」
「うん。パパより年下ならいいと思う」
はばひろすぎ。
「だってね、天音おねーちゃん」
「うん?」
「おじいちゃん見てたら年の差なんてバカらしいじゃない?」
は、反論できない。
おじい様の今の奥さんは「ゆえりさん」。三春おじさんの後輩で、三春おじさんの実質元カノだ。その前の奥さんの「茜さん」は由継おじさんの元婚約者だったりするから、志狼ちゃんは彼女は作っても絶対秘密にすると宣言している。
そういうのを見ているから、年の差とか略奪とかで考えるのはバカらしいとは思う。
おじい様がとどまる条件って「人妻」くらいだもんな。
年齢はとどまる理由にならない。
ただ、そういうのは考えるのが面倒臭いと思う。
「天音おねーちゃんは隆維おにいちゃんと涼維おにいちゃん、どっちが好きなの?」
いきなりの問いかけで驚く。
あえて言うならどっちでもない。
恋愛なしの好意なら差はないし。
「隆維も涼維もどうかと思うけど?」
「ふぅん。あ。おはよー咲夢ちゃん。じゃあね。おねーちゃん」
「うん。いってらっしゃい」
道の向こうで手を振る女の子のほうへ駆けていく鈴音。
我が妹ながらよくわからない。
うろなの小さな夏休みより小学生四人組 話題のみ。
Family より咲夢ちゃん(ちらり)
お借りしております。




