9/2 新学期
中学校。
新学期。
「やるな。マゾ清水」
「今年は本当に二年生の転入生多いねー」
「できちゃった婚かぁー」
「萌先輩に如月先輩、特に如月先輩は濃かったよねー」
渚ねぇも三年生だしなー。
隆維が軽くため息をもらす。
視線をきっちり合わせてくる。気まずい。
軽く手を添えてじっと見てくる。こつんと、額をあわせて。
「涼維、何で話題そらす?」
真剣な表情で聞かれた。
どこかで女子の声が聞こえた気がする。
「隆維こそなんでコダワルんだよっ!?」
「いやぁ、見習うべき手法の一つかと?」
え?!
だめだろう??
「天音ちゃんに何する気?!」
「んー。アプローチ以外はまだ何も。作戦は練るべきか行き当たりばったりを狙うべきか悩むなー」
今度は俺がため息。
「そんなことより今はミラちゃんのことが優先でいいと思う」
むっとしつつも反論はしてこない隆維。
「……嫌がってたな」
「だね」
ミラちゃんはお勉強とか時間的に拘束されるのが苦手だ。
つまり学校というシステムが苦手といえる。
一応努力として自分の名前は日本語で読み書きできるようにがんばっていた。
夏休み最後の週ははやと君と一緒にアリカのスミで勉強会。教師役はカラスマントと志狼ちゃん。時々、小林先生が様子を見に来ていた。
実は、はやと君とミラちゃん、芹香が微妙に仲が悪くて勉強にならないことも多々だった。
隆維もはやと君と相性が悪いらしくあまり近寄らなかった。
母さんの実家やおじさんのところでは勉強はできて当たり前ニュアンスで家庭教師とかいたしなぁ。
父さんと暮らす日本生活で時々運動強制はあるけど、勉強強制はない。やる気がなくて最低限以上できるならそれ以上は無駄だという方針で。
母さんの実家は医師系や技術者系が多い昔ながらの家柄で、親戚も多いけど、それぞれみんなそんな感じ。だから、親族会では当たり前のように「何のお医者さんになるの?」「それとも宇宙船でも作るのかい?」とちやほやしてくる甘いプレッシャーが半端じゃない。おじさんにいたっては「私の財産を継いで、企業オーナーなんてどうだい?」と養子においでと誘ってくる。日本に来て直接的なプレッシャーは減ったけれど、勉強を続けることはもう慣れていて苦痛ではなかったからそのまま今にいたる。
妹達の前で悪い成績とかちょっと恥ずかしい気もしたし、芹香は年齢なんか気にせず、ダメだしをすぐするからきっついし。される状況を減らすことが大事だなと一緒に生活を始めて半月ぐらいで悟った。
だから、ミラちゃんが勉強を理解できないということや、時間管理された状況に耐えがたい苦痛を感じるということは「そういう人もいるよね」ぐらいに理解はできるが、どうしてやったらいいのかがわからない。
「お友達ができるといいんだけどね」
「んー。早く日本の常識を身に付けられるといいよなー」
「あー」
ちょっと疲労を感じる。
「そ。ミラの言う大きくなったら涼維の子供生んであげる発言。あれマジくさくてやばいわ」
「隆維にも言ってるじゃん」
すっと隆維が視線を外して遠くを見る。
「千秋兄や、鎮兄にもな」
ぁう。
「ミラちゃん」
咳払いに振り返ると天音ちゃんがいた。
「そういう話は帰ってからやるべきだと思う」
まぁ、ここは学校の廊下だけど。
「今日は後暇ならあそぼーぜ? どーせ、五時まで帰るなは新学期も有効なんだろ?」
隆維が楽しそうに天音ちゃんに提案して睨まれる。
睨まれて気にするような繊細さは持ち合わせていない隆維は笑って謝罪する。
「あ。わるい。今日も暇だよな。何して遊ぶ?」
ち、沈黙が……
ぽつぽつお名前のみですが借りてます。




