8/21 ライブの日
ARIKA前のライブ特設会場で可憐な歌声が流れる。
先ほどまでは愛らしい白衣の天使にしか見えない同じ学年の同性が歌っていた。
自分らしくあればいいという唄。
現在のコンプレックスが少々刺激される。
「アニメ声」を気にするクールな少女。
自分の苦手に打ち勝とうと心を奮い歌われる歌。
それは伸びやかに甘い声は通りよく耳馴染みがいい。
音には魂が宿り、そこに神がいる。
おじさんお得意の言葉。
『音』が『形』や『心』に簡単に置き換えられるが、それは口癖のようなもの。
『魅せられる』モノには『神』がいる。
兄妹の歌を美しいと思う。
そこに神がある。
パルナサスの山に住まうという女神の祝福があるかのように魅せられる。
少し言葉を考える。
「おぉ、まさにここに天使が光臨す! なんと幻想的な光景、そして素晴らしき歌声か……。これぞまさに天上の声」
真実魅せられる。
黒衣の天使の歌はいくら言葉を飾ろうと尽きず、美しくすばらしい。
そう、最後にはそこに落ち着くしかないと思う。
名残は惜しいが店の手伝いに回りながら聞くことにしよう。
◇◆◇
『DQN's』のライブの日、サツキさんが『ARIKA』に来てくれた。
どきどきしてちょっと手が付かなくて海ねぇに陸ねぇにやたらニヤニヤされて恥ずかしい。
「よくぞ来たな。うろなの猫娘」
鎮が懲りずにからかうし。
「だれが猫娘にゃっ!」
ああぁ。かわいい。かわいいよ。サツキさん。夏休み前から付け替えたちょっとおしゃれなイヤリングが揺れて、どきどきする。
「そりゃー、もちろん、鍋島嬢以外のどーこーに猫娘の称号に相応しいご令嬢が?」
マントが翻らないよう握り込みつつ、わざとらしく一礼して見せるカラスマント。
怒ろうとしてなぜかぴたりと動きを止めるサツキさん。
「気持ち悪いにゃ。」
そう言って上目遣いにカラスを見上げるサツキさん。
しーずーめーーー
えーろーがらすーーー
地獄に落ちろ。
カラスは身をかがめてサツキさんに何か囁く。
ちょっと暗い心理に包まれていたら、海ねぇがいきなり背中を押す。
ぶつかりかけて必死にとどまる。カラスに軽く支えられたことに気がつく。
目の前にサツキさん。
近い。
かわいい。
抱きしめたい。
って、嫌われたくないいい。
いきなりそんなことしたら嫌われる。
「サ、サツキさん」
「ち、千秋君」
「ま、そういうことだから慣れてね、鍋島嬢。千秋が鍋島嬢の接客担当なー」
慣れてね。でサツキさんが真っ赤になる。
鎮、ナニ言ったんだ?!
◇◆◇
「しずめちゃーん。ちあきちゃんのかーのーじょー?」
「まーだーだよ」
カウンター席で細長いスプーンをもてあそぶ女性。
スプーンの先が指すのはぎこちない会話中の二人。
「それよりもカラスマントと呼ぶがいい」
スプーンをくるりと回し遊ぶ姿は行儀がいいとは言えないが彼女には似合っている。
薄く笑い、偉そうに要求するカラスマントを見据える。
「い・や。しずめちゃんはしずめちゃんー」
デザートを掬ったスプーンを口に運んでうっとりと瞳を閉じる。
ふるりと肩を揺らし、スプーンを持ったまま自分を抱きしめる。
豊かな胸元が強調され、軽く視線が集まる。
「うーーん。あみちゃーん、おーいーしーーいぃ」
「あったりまえだろー」
「うふふー。そーねぇ。しずめちゃん」
「ん?」
「おねぇさん、もうひとつ食べたいなぁ?」
「ぇ?! まだ食い終わってねぇじゃん」
「まだライブはじまってないよねぇ。ライブ聴きながら食べたいなぁ。ほらこんなにおいしぃのぉ」
掬ったデザートをカラスマントの口に運ぶおねぇさん。
嚥下するのを見届けてから、
「あみちゃーん、特製デザート得盛りさっきと違うアレンジでよろしくぅー」
「まかせとけー」
笑いがかなり含まれた海さんの声が返る。
「高い『あーん』だったね」
ちょっと慰めてみる。
「ノワールぅうう」
抱きつかれる。
いいようにされすぎてちょっと落ち込んでいるようだ。
年上の女性って侮れないよね。
ぽんぽんと肩を撫でておく。
「しずめちゃん、かれしぃ?」
「ちがう」
「ちがいます」
ARIKA 海さん、お名前だけで陸さんお借りしてます
瀬島蒼龍 大神義愛 兄妹お借りしました。
鍋島 サツキ嬢 お借りしマシター
アッキさんの8月21日 海の家の『DQN's』とリンク
千秋暴走w




