8/19 戸津アニマルクリニック☆
「くぅっ。小梅ちゃんがっ」
呟きやら、商店街コミュニティやらでのうわさにノブ兄がのたうつ。
「入籍っておめでたいですよねー」
黙ってうなずくのは堂島さんち住人の一人山辺三春さん。
以前、ノブ兄を訪ねてきた正木茜さんと店前でかち合って大喧嘩となったことはひっそり有名になっている。
普段物静かな人がひたすら毒を吐くのはこわい。
今日はトロちゃんを連れて健診だ。
「商店街で花束贈ったらしいですよー。何かお祝いしたいですね」
「清水先生は爆発してしまえ。三春君もそー思わないか?! 独り者として!」
そんなこと、同意求めちゃダメじゃないノブ兄……。
「戸津先生は、」
「うん?」
言葉を綴るべきかどうかを悩むようにゆっくりな山辺さん。
「結婚、したいんですか?」
二人の男性の年齢差は聞いたところによると十年。
時おりジェネレーションギャップかとノブ兄が悩んでいるのは知っているがコレが山辺さんの個性だ。
世代なんかで片付けられると3年くらいしかはなれていない私がまとめられてしまう。
「そりゃあ。ねぇ」
困ったようにもらすノブ兄。
「真剣に相手を探されてるわけじゃ、ない。ですよね?」
あ。
これって、まじめに相談にのられてる。
「え? まぁ、出会いは少ないが……」
「戸津先生がそんなふうな意図をもって絡む女性は素敵であるがゆえに、相手の方がおられますよね?」
「あー、そうなるか?」
「だからといって略奪してしまおうという行動は起こされないですよね?」
「いや、まぁね?」
少したじろぐノブ兄。
「じゃあ。素直にお祝いすればいいのではないですか?」
「まぁ、そうなんだけどね」
苦笑するノブ兄。
思えども素直に祝えぬ心境だったのか話題にしたいだけだったのか。
「結婚したいだけなら相談所もありますし、恋愛したいなら本気で周囲を見据えればいいんじゃないですか?」
「三春君は、結婚したいとか恋人欲しいとか思わないのか!?」
「面倒じゃないですか」
力を込めて言って、見事な肩透かしを食うノブ兄。
「めんどうって」
「あまり、人間関係に時間を割きたいとは思えないんですよ。ちなみに」
「ん?」
「兄が勧めてくる縁談が進んでいるらしいので結婚はするんじゃないですか?」
「人事のように言うんじゃない!」
「会った事はないんですが、向こうは乗り気らしくて」
めんどうそうに言う山辺さん。
「あーもう。リア充消滅しろー」
「お祝い、カンパとかするなら声かけてくださいね。僕も先生達のお祝いにはかみたいと思いますから」
「あ。はい。その時は連絡しますね」
「おねがいします」
”うろな町の教育を考える会”業務日誌69話とリンクしてます




