8/14 夜 芹香と隆維の密談
芹香の偏見
鎮お兄ちゃんが帰ってこない。
ARIKAで会うのはカラスマントだ。
仮面を付けているから表情が見えない。
日生の家はおかしいと思う。
お父さんのセルブの家も変わってたけど。
パパみたいなおにいちゃんがいておじいちゃんみたいなお父さんがいて。
そこで本格的に過したのは3歳までだったけれど、去年までは夏休みごとに一ヶ月は帰ってた。
そう、私は夏休みに家に帰ると認識していた。
うろなの日生の家もウチなのに。
だから不安に思うと『帰りたい』と思う。
うろなの家は不安が多い。
お母さんはたまには撫でてくれるけど、セルブの家のパパ兄の奥さんみたいにぎゅっと抱きしめてくれない。
お手伝いしても褒めてくれない。
いけないことをしても怒ってはくれない。
おじさんはかわいがってくれてる。
『同じように』大切にしてくれる。
千秋おにいちゃんは構ってくれるし、大切にしてくれる。
『特別』を感じれる。
でも、千秋お兄ちゃんは『外』を見る。
千秋お兄ちゃんのつながりは『外』。
鎮お兄ちゃんはどこかおじさんに近い。
本気の『特別』を作らない。
『同じように』振舞う。
『特別』っぽく大切にしてくれるけど、『同じ』な気がするし、今は『ダメ』なんだなと感じる。
「『特別』を知ってるとうちの父さんはキツイよね。おばさんは芹香や兄ちゃんたちが特別だと思ってるよ。うちの父さん見てるとわかるな」
すとんと横に来た隆維お兄ちゃんが笑う。
屈託のないきれいな笑顔で。
「父さんはねー。同じように愛情を注いで同じように手を差し伸べて、誰であろうと同じように切り捨てることができる平等な人だよ」
ゆっくりと撫でられる。こわくて顔が上げられない。きっときれいな笑顔だ。
「だから、触れられることが少なくて愛情が薄く感じても子供を捨てたくないと思うお母さんを持ってる芹香が羨ましいよ?」
こんな会話をしてるなんてお母さんは知らないと思う。
たぶん、お兄ちゃん達の中では一番『普通』に近い千秋お兄ちゃんも。
「ルシエママは?」
あんまりいない人だから話題にするのには苦手だ。
「母さんはねー。父さんがいればいいんだよ? 父さんを捕まえておくためだけに我侭さを押さえてイイ人を振舞ってる偽者だよ?」
そう言って撫でてくれる。声は優しく甘い。
「どうせなら『特別』なんか知らなければ良かったんだよ。知らなければ『普通』でいられたのにね」
ぎゅうっとお兄ちゃんに抱きつく。
「芹香?」
よくわかっていない空気を持つ隆維おにいちゃんは時々怖い。
こういう空気が強い時は涼維お兄ちゃんが隆維お兄ちゃんに張り付く。
「いかないで」
と泣きそうになる涼維お兄ちゃんの気持ちがわかる。
そこにいるのに遠い。
心と表情がちぐはぐ。
それでも、お兄ちゃんたちは手を差し伸べてくれている。
鎮お兄ちゃんと千秋お兄ちゃんは隆維お兄ちゃんよりはわかりやすい。
「お兄ちゃんたちがへたれで稼げなくてもその時は芹香が養ってあげるからね!」
「んー。信託財産とかあるから大丈夫じゃないかなー」
あっさり断ってくる隆維お兄ちゃん。
「もう。貸し借りはきっちり清算なのー」
でも、隆維おにいちゃんは壊れてるのがデフォルトだ。
それに依存してる涼維おにいちゃんは離せないオプションだ。
本来、二人で完結している世界に時々入れてくれる。
「将来どうするの?」
そう聞いたとき隆維お兄ちゃんは笑ってた。
「まぁ、生きていく」って。
って天音お姉ちゃんお嫁さんにするのにその方向性でいいの?!




