8/9 戸津アニマルクリニック
仲良くできないようです?
ミラちゃんはよくお手伝いをする子だ。
愛想もいい。
動物たちとも仲がいい。
いろんな疑惑はあってもミラちゃんに罪はない。
「宇美ー?」
「あー。どうかした?」
「このゴミはどう捨てるのー?」
まだ分別がよくわからないらしいミラちゃんはちゃんと聞いてくる。
「それは燃えるごみね」
「はーい。燃えるごみー」
「鎮おにいちゃんと千秋おにいちゃんはなにゴミ?」
「こんにちは。芹香ちゃん。お兄ちゃん達をゴミにしちゃだめよ。リサイクルしなさい」
いきなり入ってきた芹香ちゃんにそう切り返しておく。
ここ最近、友達ができてこなくなってたから久しぶりだなー。
「うー」
「どうしてもなら生ごみか、不燃ごみ、粗大ゴミのどれかで悩むわね」
不満そうに唸る少女に新たな提案をしてなだめる。
「芹香も家出するー」
「じゃあ、ミラと一緒にお泊りですねーおねしょしても内緒ですー」
「しないもん。おねしょなんかしないもん」
「しないー?」
じゃれあう少女達。
まぁ、あそこの双子はあんまり喧嘩はしないけど、たまにやると結構長引くのよね。
だいたい鎮君が家出してくるんだよね。
あれ?
来てない?
「芹香ちゃん」
「なにー?」
「鎮お兄ちゃん、今どこに泊まってるの?」
「しらなーい。でもライフセーバーのおねーさんたちのところで泊まったりしてるみたいー」
えー。なにそれー。
やばくない?
「こんにちはー」
ピンポーンと軽いチャイムとともに挨拶が聞こえる。
「わー」
舌っ足らずな子供の声。
知ってるおちびさんの声ではないっぽい。
「あ。果菜ちゃんと美香ちゃんだ」
駆けていく芹香ちゃんが正体を教えてくれた。
ああ、小学校の果穂先生の。
「きゃーちっちゃくてかわいー。ぱらでぃー♪ ちゃーお」
ミラちゃんも元気にはしゃぐ。小さい子のことは好きらしい。
「マゾ清水と小梅センセーだーこんにちはー」
「マゾ?」
一気に不審げなミラちゃんの声。
待合室に顔を出すと清水先生と梅原先生が苦笑しつつ、子供達を見守っていた。
果菜ちゃんと美香ちゃんは待合室の一番イイソファーに陣取っている大きな猫に釘付けだ。
まぁ、大人も釘付けかもしれないが。
悠々と周りを見下すように見回してから大あくび。
「マゾ清水は鬼小梅のお嫁さ、あれ? なにかちがう??」
首をひねる芹香ちゃん。ミラちゃんは小さな姉妹の前にしゃがんで視線を合わせにっこり。
「ちゃーお。ミラですー。よろしくー?」
「よろしくー」
「よろちくぅ」
立ち上がると大きな猫を指して
「彼女はスカイフィッシュ。おさかなちゃんって呼んであげてね」
のぶ先生が泣きそうなことを言った。
「おさかなちゃーん」
「おしゃかなー」
大喜びな姉妹を見ながら実に満足そうなミラちゃん。
絶対のぶ兄が泣く。
「こんにちは。梅雨ちゃんの健診ですよね」
「あ。はい」
「今日はにぎやかだな」
少し萎縮している梅雨ちゃんを預かりながら苦笑いがこぼれる。
「ミラちゃんは夏の間ホームステイに、よくお手伝いしてくれるんです」
「ちゃおー」
少し、警戒しつつ大人二人に挨拶するミラちゃん。
どうやら『マゾ』に反応しているらしい。
ぽんっと手を打つ音が聞こえる。
「マゾ清水は小梅センセーの愛のどれいだ!」
するりと芹香ちゃんの背後に回ったミラちゃんが芹香ちゃんのほっぺを両側から引っ張る。
「小さい子の前でそんなこと言っちゃダメー。あんまり悪いこと言ってるとお口、石鹸で洗わないとだねー」
意外と教育的指導が厳しい。
「だって隆維兄がぁああ」
ちょっとコントみたい。
「久島さん」
ちょっと落ち込んでるのぶ兄。
「戸津先生。梅雨ちゃんきました」
「……スカイフィッシュ……」
果菜ちゃんと美香ちゃんにおとなしく撫でられてるおさかなちゃん。
「ぶなぁ」
「さ。梅雨ちゃんは元気かなー?」
ようやく切り替えて梅雨ちゃんを抱き上げる。
「少しお預かりしますねー」
ふと視線を転じると、スマホを操るミラちゃん、ちょっとふてくされてる芹香ちゃん。
「ミラちゃん、芹香ちゃん、喧嘩しちゃダメよ?」
「しないもん」
「小さい子相手に喧嘩しないよ? 隆維と涼維にはメールで注意した」
「二人ともそこまで」
梅原先生が苦笑しつつ、二人を止める。
ぴりりとした火花は基本芹香ちゃんから。
「はーい。ごめんなさい」
「ごめんなさい?」
梅雨ちゃんの診療後、天兵くんの動物園へ健診へ行く。
ぺんちゃんで和みたい。
あと、預かった機材の試しもしたいし。
清水先生と梅原先生。果菜ちゃんと美香ちゃんも一緒ということになった。
のぶ兄。ミラちゃんと芹香ちゃんは任せた。
「うろなまちの教育を考える会」業務日誌8月9日 夏の動物園は忙しい?とリンク
梅原先生清水先生果菜ちゃん、美香ちゃん
借りてます
草薙天兵君ぺんちゃん、ちょっと名前だけ出てます




