表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
103/823

8/6  中央公園で

 深呼吸


 深く深呼吸。



 目を閉じて何も考えず、周囲の気配に心を澄ます。




 ざりざりと削り取られるような気分。




 集中ができていない。




 雑念・騒音が消えない。




 そんな半端な自分が許せない。


 気に入らない。




 何もできない。


 身動きが取れない。



 苦しい。



 どうすればいいのか、何が悪かったのかがわからない。





 ただ、何かを間違え、ずれてしまって修正ができない。



 自分に問うて答えは返るのだろうか?



 何もできない。





 傷つけることはたやすいのに。




 やってみようと思った。


 自分がどこまでできるのかと思って。



 何も考えていなかったけど。

 目に付いたことに取り組んだだけだけど。




 何かがダメで。





 結局なにもない感覚だけが残る。


 たぶん、手を差し伸べられても「わからない」からその手を取れない。




 考えなきゃいけなくて



 考えてはいけない。



 感じなくてはならなくて



 感じているものは不確かで







































 自分が











                   最初からいなければいいのにと思う。






 背後から衝撃を感じる。


 振り返ると、料理部の紬ちゃんがいた。



 しかも泣いてるし?!



 俺の腕の中で泣き出す紬ちゃん。

 俺はつい周囲を見回す。



「ごめ、ごめんね」

 泣きじゃくる紬ちゃんが無理に泣き止もうとする。


「あー。いいから。気にしなくていいから」


 中央公園でちょっと呼吸を整えてたわけで。

 とにかく、ハンカチを握らせ人目の少ないベンチに座らせる。

 レモンティーでいいか?

 レモンティーとジンジャーエールを買ってベンチに戻る。

 ジュースを差し出しながら聞いてみる。

「ハンカチ濡らしてくる?」

 紬ちゃんはふるふると頭を横に振る。

 手に残されたのはレモンティー。


「ふられちゃった」

 コメントに困る。

「うまくいくと思ったの。想いは同じだって思ってたの。受験前の気合入れにはっきりさせてがんばろうと思ったの」

 なんだろう。すっごくコメントができない。

 いや。


 大丈夫だ。


 コメントは望まれていない!


 とりあえず開けにくそうだったプルタブをあけ、缶を返す。


「『僕が大学卒業したらお嫁さんになってくれる?』引き篭もりで高校すら卒業危なそうなくせにナニ言ってるのよ。たとえ、それがプロポーズだとして、いったいどのくらい私は待つの?」



 相手特定できましたー。

 声なき「ふざけんな」いただきましたー。


「それって遠まわしのお断りよね」


 紬ちゃんはジンジャーエールを一気飲み。

 目が据わってます。おねーサマ。

 ジンジャーエールなのでノンアルコールなのに。


「鎮君は告白された時、どうやって断ってるの?」


 真剣な眼差しで訊ねられる。

 悪意はなく本当に訊ねただけなんだろう。



「本気の告り、だよね?」

 紬ちゃんが頷く。

「ない」

「え?」

「告白されたことがない」

 そう、振り返ればそんな経験はない。

 遊んでくれるおねーさんたちは本当に遊んでくれているだけだしな。



「そう、なんだ」

 微妙な表情で紬ちゃんは呟く。


「ふられてばっかかなー」

「あー。ノワール君」

 くすりと紬ちゃんが笑う。

「そーそー。認識の不一致ってきっつーい」

「お友達、あきらめる? ……いつもみたいに」

 紬ちゃんの笑顔がこわい。


「いつも?」


「そう、いつも」

 にこっと笑う紬ちゃん。

「ダメって言ってるわけじゃないのよ? 仲良くなりはじめると鎮君、距離とるでしょ? それ以上仲良くならないように男の子相手でも女の子相手でも」

 軽く首を傾げて微笑む紬ちゃん。

 立ち上がってスカートをはたく。

「ごめんね。ちょっと八つ当たり。あと、千秋君とは早めに仲直りしたほうがいいと思うよ?」

「陽、暮れ始めてるし、送っていくよ」

 紬ちゃんが首を横に振る。

「大丈夫。走って帰るから。まっすぐ帰るから」

 ほろりと零れ落ちる涙。

 ふふっと笑って空を見上げる姿が痛い。

「走ってもいいよ? ちゃんと送っていくから」






「ごめんね。結局送ってもらっちゃった」


「勝手に送っただけだし」

あの状況でほっとけない。


「ありがと。鎮君」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ