第三話 昇降口の影
どれくらい時間が経ったのか分からない。
三人は満足したように帰り支度を始めた。
私は一足先に教室を出て、昇降口へ向かった。
夕暮れの廊下。
影が長く伸びて、私の影と三人の影が重なった。
その距離が、息苦しかった。
昇降口に着き、靴箱の前で立ち止まる。
何をすればいいのか分からなかった。
ただ、少し離れた場所でメルさんたちを待った。
やがて三人がやってきた。
いつものように笑って、何事もなかったかのように靴を履き替える。
そのとき、イチさんが言った。
「ねぇ、最後にもう一個やろっか」
彼女はリエさんの上靴を取り出し、指でつまむと、唾を吐きかけた。
ぴちゃっ、と音がした。
リツさんも、表情を変えずに同じことをした。
そして、メルさんが笑いながら言った。
「これで完璧」
――完璧?
何が? どこが?
頭の中で、何かがぐしゃりと潰れる音がした。
理解できなかった。
この人たちは、同じ教室に座っている“人間”のはずなのに。
私は、恐ろしくなった。
言葉にならないほどの恐怖が、胸を締めつけた。
――もし次の標的が自分だったら?
――もし自分の机があれになったら?
想像した瞬間、吐き気がした。
心の中が真っ黒に染まっていく。




