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後ろの席の美少女(プレデター)に恋をする  作者: はるゆめ


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第十二話 早く大人になりたい

 昭和のいつか。どこかの世界。季節は春。

 どんどん夜も更けていって女子は簡易シェルターの中で寝て、僕達は焚き火の周りでごろ寝することになった。


「わぁセルアさん大きい!」

「◯、◯◯◯! ◯◯◯◯◯◯! ◯◯◯! ◯◯◯◯◯◯◯◯◯◯!」


 シェルターの中で河野がはしゃぐ声がこっちまで丸聞こえだ。セルア皇女が大声でやめろって言ってるのは雰囲気でわかる。あいつ何やってんだろう。


「河野さん、皇女殿下に失礼よ……くすくすくす」

「ウエストが細いですね」

「◯◯◯! ◯◯◯、◯◯◯! ◯◯◯◯◯!」

「河野さん、それぐらいにしなさい」

「はぁい」

「◯◯、◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯◯◯?」

「◯◯、◯◯◯◯◯◯◯、◯◯◯」


 河野がセルア皇女を触りまくってるんだろう。はぁ。その光景を想像したら……だめだ、やめやめやめ!

 横で黒瀬君がトホホって顔していた。僕も同じ気持ちです。


「河野は生まれて二年だから、まだまだ子どもなんだ」

「えっ!」


 思わず声が出た。二年って人間で言えばよちよち歩きの赤ちゃんみたいなものじゃないか。


「遺伝子は人間ベースだけど。ちょっと特殊な方法で生まれたんだ。高度な科学技術でね」

「ほう。人造人間みたいなものか?」

「それとは違うよ。ちゃんと魂を持った、そう言う意味では人間だよ」

「黒瀬を取り巻く周囲もえらく非現実的だよな」

「俺もそう思う」


 黒瀬君とヒロア君の会話が頭に入ってこない。


「河野が……二歳……」


 思い返せば、下着姿や裸を見られても平然としていた河野。それって幼児が恥ずかしがらないのと同じってことかな。うわぁ。


 ヒロア君が何とも言えない顔をして、僕の肩にポンと手を乗せて頷いた。

 何だろう?


 それから僕達は、焚き火で熱した石を地面に埋めた上に、集めた木の枝や落ち葉を地面に敷き詰めて寝転がることにした。


 黒瀬君とヒロア君が交代で見張りをすることになって、僕もと言ったんだ。


「君は疲れてるだろう。ゆっくり寝るといいよ」


 と黒瀬君に言われ、素直に従うことにした。彼も見た目は同級ぐらいなんだけど、何でかすごく歳上の雰囲気がある。


 あ、背中が温かい。


「これ……思ったより暖かいですね」


 僕は感心してヒロア君に言った。


「さっき焚き火で熱した石を埋めたろう? 床暖房だよ」

「ヒロアはキャンプの達人だな」

「んあ? ああ。週末とか、とにかく俺は気が向いたらあちこちキャンプに行ってたぞ? どこででも」


 そこからヒロア君が日本で生きてた頃に趣味でやっていたキャンプの話をたくさんしてくれた。

 やはり大人だな。僕も早く大人になりたい。

 免許とって車であちこちへドライブしようじゃないか。隣の席には……。


 なぜか河野が助手席に乗っている光景が頭に浮かび、僕は慌ててそれを打ち消す。


「それとな、黒瀬や霧丘君が林間学校で使ったようなテントは過去のものとなってだな」


 ゴワゴワで重たくてカビ臭い。そんな林間学校のテントを思い出した。

 黒瀬君が生きてた平成って時代になると、軽くてあっという間に設営できるテントが当たり前になるらしい。それならキャンプもいいな。

 河野がそこにいて……いや、何でさ。僕はおかしくなってるのか?


 そんなことを考えているうちに僕は眠ってしまった。


 目蓋に当たる雨粒で目が覚めた。空はどんよりして小雨が降っている。

 黒瀬君が火を大きくしているところだった。


「おはよう」

「おはよう。よく眠れたか?」

「う、うん」


 体のあちこちが少し痛い。雨に濡れて寒いから焚き火にあたる。


「くあっ、ふあぁ」

「起きたかヒロア」

「おおう。よく寝たわ」


 ヒロア君も起きてきた。彼はウールのマントで包まってるから寒くなさそうだ。


「さーて。朝飯の準備するか……?」

「どうしたヒロア……ん」


 黒瀬君とヒロア君が辺りを見回す。

 あれ?

 何だろう。

 遠くから聞こえる……楽器? 演奏?

 明らかにフォービートやエイトビートと全く違う横ノリのリズム、決して和音にならない独立した音。少し前に流行ったワールドミュージックを連想した。

 けどこれは音楽じゃない。


「港の方か?」


 ヒロア君が港の方を見て驚く。


「何だありゃ!」


 僕も続く。

 港で船が襲われていた!

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