スライム族の誇りに駆ける修行~第五回~
ゼリョン「なんとか・・今日の練習も乗り切ったな・・・」
きつい道場での修行を本日もこなし、帰宅したゼリョン。
ふと、道場でのきつい修行を思い出しつつ、水でも飲もうと立ち上がると、顔面に激痛が走った。
「うぐぅっ・・・そうだった・・ミィァゲイル族の者の飛び込み顔面肘で鼻を折ったんだったぜ・・」
その後、対人稽古の後すぐに、ファン美人師範に曲がっていた鼻を治してもらってはいたが、すぐに折れた鼻がくっつく訳ではなく、まだ出血や炎症は収まる気配はなかった。
やれ・・・
と立ち上がり、道場で指導される配合で各自作り置きしている回復水を飲む。
「んぐっ・・ぐっ・・ぐっ・・ごくっ・・」
ふう・・・
なんとなく痛みが引いていく感覚がある。
これならやれるか・・・
まあ、やるしかねーんだけどな。
鼻が折れたまま、ゼリョンは道場後の自主鍛錬を開始する。
「やるしかねーんだ俺は、これしか、ねーんだ・・俺には・・・」
まずは自重での体幹トレーニングを始める。
腕立てからだ。
地面の石の床をじっと見つめたあと、即座に、迷うことなくゼリョンは腕立ての姿勢に入る。
「やるしか・・ねえっ・・!」
ゼリョンの自重腕立ては、可動域全てを使ったもので、スピードもつけたスタイルのもので、いわゆる筋肥大目的と言うよりかは、どちらかと言うとスポーツ競技をする者たちが、よく用いるようなスタイルのものだった。
「これが・・・いいのさ・・・っ!」
ゼリョンは天才タイプでもなければ、幼少期から武道やトレーニングを積んできたわけではなかったが。
人一倍、コツコツやるタイプではあった。
何度こなしているのか、何セットこなしているのか、傍目からするとよくわからなかったのだが。
腕立てを完了したゼリョンは、すっかり息が上がり、上半身の服はいつの間にか脱いでおり、汗だくになっていた。
頭や額からしたたり落ちる汗は、鼻からこぼれる鼻血と混ざり、口にも入った。
「なんだか・・しょっぱいんだか、鉄くさいんだかわかんねー味すんな・・・」
次いで、足上げ腹筋やらクランチ動作、フルスクワットなどのスポーツ的な近代的なトレーニングを終えた。
一息つくと、武道的な鍛錬が始まった。
「立てねーやつは・・・何やってもダメなんだよな結局・・・」
立ち方の大切さ、足腰の鍛錬、練りといったものの重要性は、師範の動きや説明を見たり聞いたりして練習していると、まさにそれこそが重要であるのだな、と理解することができた。
馬にまたがっているような立ち方である、最も基本となると言える立ち方【馬歩】。
これを足腰がガクガクブルブルに震え、汗が目や口に入り、意識が混濁しそうになる寸でのところまで行っていく。
馬歩が終わったら次は【弓歩】、弓兵が弓を打つ時の構えの立ち方だ。
前足を曲げ、後ろ脚は伸ばす感じになる、前後に足を開くが、左右にも肩幅程度に開く。
これも左右、ガクガクのブルブルになるまでこなす。
そのように色々な武道の立ち方をこなしていく。
しかし、ふと時間を確認すると午後12時になっていた。
「鍛えたな・・・今日も・・」
ゼリョンは布で汗を拭きとると、それをバケツの水で洗い、そのまま濡れた布で身体を拭いた。
しばらく・・・今日のことを思い出しながら、ゼリョンは夜の月を見た・・・
「俺らスライム族がこうゆう事になってるのも・・・全ては先代の者たちが弱かったからなんだ・・・」
石の室内で、柔らかい月の光に照らされながら、ゼリョンはふと、自分の掌を見つめた。
「やってやるんだ・・・」
「俺が・・・やってやるんだ・・・」
そうしていると、石の室内の空気が冷え、身体が少し寒く感じるようになってきた。
「汗も引いたか・・」
ゼリョンは、そのまま石の床にそのまま置いてある、布と皮で作られた、中に草を敷き詰めた手製の布団に入ると、次の日のことを考えたりしながら、眠りについた。




