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竜族自治区

【67】竜族自治区


――――7年後・竜族自治区。


「クッルルたぁ~~ん、クルルたんのお膝枕さいっこう。ずっとこうしてたい~~」

「んもぅ、ロイったら……っ!いいこねぇ」

クルルたんがめっちゃなでなでしてくれるうぅぅっ!いやぁいいよなぁ。穏やかな昼下がり、クルルたんのお膝の上。おつまみむしゃむしゃ。端末いじりながらぐだぐだぐでーん……。


「ちょっと――――っ!ロイさんっ!!さらに自堕落になってるじゃないですか……っ!」

その声にハッとなる。

「何でお前がいんの……!ここ竜族自治区だぞ!?ダニエル!」

思わず飛び起きようとして頭上にあったクルルたんのおっぱいに下から突っ込んだわ……っ!


『むごむご……あ、これはこれでいい』

「やだ……っ、ロイったら……っ!」


「いや、何してんですか、昼間っから……てか何なんです?竜族自治区のお宅訪ねたらこちらだって……」

え?お前竜王城まで行ったの!?おっぱいの下からのっそりと身を起こせば。


「ここはな……昼間でも早朝でも一日中イチャイチャできるお座敷だ」

「……ラブホじゃないですか」


「んー、まぁ竜族流のラブホだな。王都のと違うところは三食昼寝おやつ個室温泉付きの至れり尽くせり!あと、基本は1階建てだな……!」

発情期のある竜族流の徹底的に籠れる竜の巣感満載のグッズも用意されている……!


「それはそのー……まぁ、いいですから!ほら、そろそろ育児休暇はおしまいです!竜王さまからもそろそろ連れ帰っていいとお言葉を賜りましたので」

因みに俺は発情期籠りだったのでちびは父さんのところである。父さんも孫を愛でられて嬉しそうだしさぁ。


「でも父さんだなんて、お前……よく会えたな?」

俺の担当神官ではあるが、相手は竜族の王。この世界で竜の女神の次に崇められる存在だ。


「そりゃぁ……ひとりじゃないんで」

「ま、まさか……っ」

その時だった。

「よ、ロイ?」

ダニエルの影からひょいっと出てきてニパァ――――っと輝かんばかりの笑みを向けてくるのはもちろん。


「坊……何でいんの?」

「ダニエルひとりだとお前が逃げる恐れがあるしな。俺も久々に竜王に会いに来たまで」


「だからって、育児休暇とってまだ7年~~っ!俺、かれこれ働きまくって疲れたぁ~~」

何せ勇者2人分鍛えたり、またアヤメが勝負勝負と乗り込んで来たり、途中暴走した竜の退治に行かされたり。


「7年って……充分すぎると思うんですけど。いや、竜族って長命種だから感覚が違うんでしょうか?」

「いや……ロイとクルルさんの子だ。竜の血が濃い以上は生まれてからの成長は早い。卵生だし、生まれたら3ヶ月くらいで歩くし。成人するまではヒト族よりもペースか早いが……その後ゆっくりになって……何百年も生きる」

と坊。ま、そうなんだが。


「まぁ、坊もあんま変わってねぇからな。竜族よりではないとはいえ、確実に血が濃く出てんな」

「俺のことはいいから、ほら、そろそろ王都に帰るぞ。竜王からも孫は後学のために連れていっていいと言われた」

え……子連れ?父さんも孫大好きになったのにむしろいいのか……?。


「それに……今年は何の年か忘れたのか?みんな待ってんだ」

「今年……?そうか、祭か」


「そうそう。10年に一度くらい、いいだろ?」

「……うぅ」


「……とは言え、嬉しいのよね?ローイっ」

「く……クルルたんまで……」

しかし久々の王都も気になるのは確かだ。

家は今ではすっかりアリシアやハルトたちに任せてるし、店にはダリルたちもいるからな。シェリーのやつも最近ではドラゴニアの聖女と呼ばれるくらい成長した。タイヨウとユリーカも世界を巡って旅をしてるとは聞いているが……今頃どうしてるだろうか。


「しゃぁねぇか……」


また賑やかになるのも……悪くはないからな。


「父さま、王都に行くの?」

手を繋ぐ我が子はドキドキしながら俺を見上げる。見事に竜族の特徴を受け継いだ我が子はどこか懐かしい誰かを思い起こさせる。


「そうだなぁ……紹介したいやつもたくさんいるんだ」

「うん、楽しみ。でもね」

何故か耳を寄越すように手招きされ、告げられた言葉に苦笑する。


「こーら。しー!」

「えぇー」


「こら、ロイ!発情期で籠ったんだから……行くなよ」

坊の目が光る。

「違う違う、その話じゃねぇよ!」

ほんとお前らは俺を何だと……いや知ってる。


「うん?お父さまと何のお話をしたの?」

クルルたんが興味津々そうに息子に問う。


「挨拶のれんしゅう!」

「あら……っ!ならしっかり声に出してみないと!声に出してこそよ」

「うーん、それじゃぁねぇ……親愛なるドラゴニア竜王子レックス・ドラゴニアの恩恵があらんことを!」

その言葉に坊たちも返してくる。


「こらやめろって……」

「いいだろ?何たって祭の年なんだから」

坊がニヤリと笑う。

まぁ……10年に1度だもんなぁ。そうして俺は久々に手のかかるやつらに会いに行く。


【完】





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