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ドラゴニアの冬



――――雪がしんしんと降り積もる。ドラゴニアは四季が豊かな国である。

春には花が咲き夏には草木が多い繁る。秋は葉が色づき独特の顔を見せ、冬はまるで竜の冬眠を示唆するかのように雪が降り積もる。


「あー……寒ぃ、冬眠したい」

ロイは布団の中でそう呟いた。

「ふふっ。ロイったら。私たちは冬眠しないでしょう?」

「だけどぉ~~、クルルたぁん」

しかしながら祖の本能的なものなのか、冬の寒さに竜は眠気を覚える。中には吹雪の中もへっちゃらな竜はいるし、竜族の身体は寒さにも暑さにも強いのだが。


「今日は雪が降ったのよ。寒いけど……おしゃれも楽しめるわ」

そう言ってクルルたんはふわふわのネックウォーマーを身に付けにこりと笑う。

何その最高にまぶいクルルたんラ~~ヴッ!


「……仕方がない」

マジックボックスから羽織りやネックウォーマーを取り出し羽織る。


そうしていつもより重装備でリビングスペースに向かう。


「ロイ……その格好、竜王子みたい」

隣の飯屋からひょっこり顔を出したシェリーが興味津々に近付いてくる。


「ん?舞の衣装のこと言ってんのか?まぁ多分元にはなってるが……冬の普段着用に綿や裏起毛もバッチリだ」

「あ、寒いからっ!」

今さらかよ。


「今日は雪が積もってるし、後で遊ぼうってタイヨウと約束したのよ」

「もうみんな起きてんのか?」

「タイヨウはダニエルやダリルさんと雪かきに行ったから起きてるわ。ユリーカはアリシアちゃんたちと寝てるから起こすついでに誘ってくるの」


「ふぅん……?ま、俺は屋内に引きこもるから、好きに遊んできな」

「相変わらず冬がダメなのね」

「竜族だかんなぁ」

いや、坊たちはそれでも厚着して公務に勤しんでいるだろうし、指名が入ったらクエストにも行くが。


「ダーリンはその中でも特に……よね。私はお外で雪合戦も平気なんだけど」

クルルたんは冬も元気だ。


「ならクルルさんも外で雪合戦とか雪だるま作りしません!?」

「あら、いいわね!私も混ざるわ!」

え……?その間俺クルルたんレス!?ううー……でもクルルたんが楽しそうにしてるなら無理矢理引き留めるなんてできるか。


俺は飯屋の奥まった席で朝食である。


「今日はこっちなんですか?珍しい」

ダニエルとタイヨウがやって来た。どうやら雪かきを終えた帰りらしいな。


「だって寒いじゃん」

「ロイさんの意外な弱点を発見した気分です」

「ふぅん?でも俺は……お前の弱点を10は知っている」

「え、嘘でしょう!?」

さぁて、どうだかなぁ。

ずず……っとスープを啜れば相変わらず旨ぇな。


そしてクルルたんがシェリーやユリーカ、アリシアたちを連れてやって来て賄い飯にありつく。


朝食を終えてユリーカたちが外套の準備をしていれば、ユリーカの魔法端末に通信が届いたようである。


「お父さま!どうしたの?」

「ユリーカ、お父さんから?」

タイヨウがユリーカの魔法端末の通話画面を覗き込めば、そこには魔王が映っている。


『だ、誰がお義父さんだっ!私はまだ認めてな――――いっ!』

相変わらずの娘大好き。そしてお決まりの言葉にユリーカがコラッと怒り魔王がしゅんとしている。


「き、気にしないでね!タイヨウ」

「大丈夫だよ。俺もユリーカのこと好きだから」

「え……っ」

タイヨウの言葉は異性としてか、それとも仲間としてか。

しかし画面の向こうの魔王が崩れ落ちたのは明らかなようだ。


「だからお父さま。私は大丈夫だから!今日は雪が降ったからみんなで遊びに行くの」

『なら、楽しんで来るといい。魔王さまはこちらで運んでおく』

その声はクロウのようである。

魔王の用事はいつものユリーカとの定期通話のようだ。目覚めてからはこまめに娘と連絡を取り合っているらしくタイヨウとのそのやり取りもいつも通りである。クロウに『またね』と伝え通話を終え、ユリーカたちも外へ繰り出していく。


外から賑やかな声が聞こえてくる中、俺は店の中でゆったりだ。


「ん……コーヒーうま」



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