アリシアのお手伝い
――――飯屋・夕刻
いつものように夕刻から賑わい出す飯屋にはほかの冒険者たちの姿もあれば旅人と見られる者もいる。
いつもの変わらぬ賑やかでもあり穏やかな時間である。
「はい、ロイさま!今日のおすすめのスパイシー唐揚げです!」
クルルたんとダニエルと卓に着けば、早速アリシアがかわいらしく料理を届けてくれる。お……今日はお手伝いか?
最近ではシェリーやユリーカたちと一緒に飯屋の手伝いもしているようだ。
「サンキュ、アリシア」
「うん!」
アリシアが満面の笑みで頷く。それにしても……唐揚げか。
「あ、これクエストで狩ったやつか」
今日はタイヨウ、ユリーカ、シェリーたちを連れて簡易な狩猟クエストに行ってきたのだ。その際に怪鳥魔物を狩ったことを思い出した。
「うん!タイヨウお兄ちゃんたちがね、狩って来てくれたんだって!揚げるのはね、シェリーお姉ちゃんとユリーカお姉ちゃんもお手伝いしてたんだよ。でも私はまだ小さいから油ものは危ないって」
あぁ、跳ねるからなぁ、アレ。
「だからね、お皿運ぶお手伝いしたの」
「そうか。えらいえらい」
ぽふぽふと頭を撫でてあげればアリシアがにこりとはにかむ。
「味はどう?」
「んー……」
サクッと口に含んだ唐揚げは独特のスパイスでさらに美味しくなっている。
「ん、酒にも合いそう」
「こらロイさん。子どもに酒とか言わないの」
何故かダニエルに怒られたのだが。
「旨いぞ。スパイスのお陰で食べやすいし飯も進むな。シェリーたちにも教えてやれ」
「うん……!」
アリシアは頷くと厨房の方からこちらを覗いていたシェリーとユリーカの元にパタパタと駆けていく。
「なかなかいいもんだな」
「……ロイさん?」
「何でもねぇよ」
「んもぅロイったら」
クルルたんが微笑みながら唐揚げをあーんしてくれる。
「ん、旨い。また引率付いてってやろうかなぁ」
「そうねぇ、ロイ。私もみんなの成長を見られて、とっても嬉しいもの」
「……成長か」
アリシアとハルトはクエストに挑戦するにはまだまだだろうが、タイヨウは剣の扱いが上手くなった。ユリーカは油断すると方向音痴にはなるが持ち前の魔法の才で戦闘をサポートできるし、シェリーの回復魔法もなかなかだ。
「放っておくとすぐに成長しちまうからなぁ」
「ロイさん、それってまさか……」
「ん?そうだなぁ。昔はどこに行くにも俺の後を付いて来たのに、今では竜使いがあらいんだ」
ま、今は立派に国王やってるし双子の息子もいる。今となっては懐かしい記憶だな。
だからシェリーたちは……どう成長するのか。見届けたいと言う思いがないわけじゃない。長命種にとってはあっという間の時間だがあっという間に過ぎ去っては欲しくない……やっぱり俺はひねくれてるんかねぇ……。




