思い出写真
――――魔王国での数日の滞在。ユリーカは久々のファミリーとの時間を過ごせたようだ。
「私も転移を覚えたからいつでも魔王国とドラゴニアを行き来できるわ!」
ユリーカは魔王との特訓で転移を習得していた。
「こら、調子に乗んな方向音痴。ドラゴニアと魔王国は離れてるんだから、移動したらその分休養が必要だ。それに……お前転移も方向音痴じゃねーの。だから当分禁止されたろ」
運良く前滞在拠点エスト王国城に転移したものの、許可無しで国境を行き来することはNGである。エスト王の計らいでアヤメが呼んでくれたことにしてもらったんだからな。普通突発的に……何てことはないがアヤメならありだ。
『今から手合わせしよう!』
『はい、今から行きます!』
『よっしゃぁーっ!』
何て会話は普通にあり得る。
まぁ結局その後俺が迎えに行く羽目になったが。
「うぅ……じゃぁロイ、また……」
「分かった分かった」
「やったぁ!また遊びに来てね、シェリーも!」
「もちろんよ!」
いや、漏れなくシェリーもタイヨウも引率してくことになるのか。まぁいいが。因みにタイヨウは現在アヤメと手合わせ中だ。カン、カンッと響くのは模擬剣である。
竹刀や木刀でやったり槍を用いたりもしているようだ。ま、色んなもんに慣れておくのも大事だが……竹刀や木刀はどうしてかタイヨウの目が輝いていた。召喚者からすればそう言うもんなんだろうか。
「わぁ、やってるわねぇ」
そこにクルルたんとダニエルがやって来る。
「厨房からお昼のオニギリをもらってきましたよ」
と、ダニエルがお盆を下ろしてくれる。
「おーい、アヤメ。タイヨウ。昼飯だぞ」
そう声をかければ2人も手合わせをやめこちらにやって来た。
「やっぱり鍛練の後は握り飯だな!」
アヤメの言葉にタイヨウも『分かります』と頷く。へぇ……そうなのか?なら今度似たようなもんを作ろうか……いや、ダリルに作らせるかメイコさんに頼もう。
オニギリを口に押し込んでいれば不意に端末が反応している。
「ん?何だ、魔王からか?」
「お父さんから?」
ユリーカも反応する。今は平穏だし何かあるならユリーカにメッセージを送れば済むのに。
『勇者ロイ。お前が連れてきた召喚勇者、娘と随分親密そうなのだがどう言うことだ』
は……?
「おいユリーカ。お前魔王に何送ったんだ?」
「え?写真よ。お父さんが寂しくないように、ドラゴニアの飯屋とかダンジョンで記念に撮った写真よ」
ユリーカが見せてくれた写真には仲睦まじい俺たちとの写真が幾つかある。しかし……あぁ確かにユリーカはタイヨウと腕を絡めてる写真が多いな。シェリーとくっついてる写真もあるけれど。
魔王国では……うーん、タイヨウはユリーカと魔王の時間を尊重しているようだったし、ヴィンやアーラとも仲良さげに過ごしていた。魔王もユリーカをかわいがるのや魔王国の体制を整えるのに忙しかった。ふと娘ら送られてきた写真で気が付いた……と。もしくは魔王国でのタイヨウの立ち振舞いは……ヴィンの仕込みか?あり得る。魔王も起きがけだもんなぁ。しかしユリーカが何気なく写真を送ったことで……バレたかぁ。
「まぁ仕方がねぇなぁ」
『本命はアリーの娘の方だ』
「これでよし」
シェリーとも腕絡めてるし。
「ねぇ、ロイ。お父さまは何て?」
「気にすんな気にすんな。お前が楽しそうにしてる写真なら魔王もきっと喜ぶから。撮ってやろうか?」
「……うんっ、お願い!」
タイヨウとシェリーと3人で握り飯を食べる写真をパシャリと撮ってやる。まー、今はシェリーと腕を組んでるからそれでいっか。
そして最後にエスト王国で土産を買って俺たちはドラゴニアへと帰還した。




