迷子勇者
――――魔法端末を表示し、マップデータを開く。
「クルルたん、魔王城のマップはどうだ?」
「ハッキング成功よ!今データ送るわね!」
「サンキュ」
クルルたんからデータを受け取る。
「しかしハッキングってクルルさん……相変わらず得意と言うかすごわざと言うか」
「だってタイヨウくんとユリーカちゃんの危機かもしれないのよ?持つべき技はじゃんじゃん使わないと!」
クルルたんの言う通りだ。しかしダニエルも反対はしない。
「よし……マップを起動……」
こう言う時勇者の加護と言うのは役立つ。やはりこの機能はユリーカの迷子用である。
「魔族の中でも魔王の直系……」
ならばすぐに結果がでる。……動いてないようだ。こう言う時、方向音痴のユリーカならあちこち動きそうなのに。だとしたら答えは……。マップ上に反応がある他の魔族だ。
「データ送る、クルルたん。この場所にユリーカを迎えに行ってくれ。魔族がいる」
「分かったわ。何があってもユリーカちゃんを守るから」
クルルたんももしもの時の覚悟を決めている。たとえユリーカが大切に思うファミリーと対峙することになったとしても……だ。
「ダニエル、シェリーのことは頼んだ。必要なら結界を。クルルたんが凌いでいる間に俺も駆け付ける」
「……ロイさんは……」
「タイヨウを探しに行ってくる」
何が起こっているか分からない。何事もなければタイヨウを連れてクルルたんの加勢に行けばいい。今はまず確実な方をクルルたんたちに確保してもらう。
「でも……場所は」
「任せな。手当たり次第に魔王城高速移してやる」
こっちには便利な魔法があるからな!
「一応ユリーカちゃんの実家だってこと、忘れないでくださいよ」
「分ぁってるって」
……壊れた部分は魔王が目覚めたら魔王に修復させよう。
「今絶対悪どいこと考えてそうですけど……でも今はユリーカちゃんとタイヨウくんですね」
「お前も分かって来たじゃねえか」
「もちろんです」
「それじゃぁ行くわよ」
「うん、私もユリーカを助けに行くわ!」
シェリーもユリーカの危機かもしれない状況に気合いを入れる。いつもすぐピーピー泣くが……しかしこう言う時は肝が据わってる。
「んじゃ……俺も行くか」
迷子を見付けにな。
俺はクルルたんたちと分かれて魔王城を進む。
「適当に壊すか」
そう竜鋼ランスを構えた時だった。
「コウモリ……?」
こんな魔王城の中に……か?コウモリが壁に吸い込まれるように消えていく。
「なるほど……とりまここを突っ切ればいいわけか」
俺は竜鋼ランスを構え、空間魔法を放つ。
「空間裂傷!」
するとその先にコウモリが飛んでいく。
「ふぅん……それでいいってことだな」
連続で空間裂傷を放ちながら魔王城を駆け抜ける。
どこだ……どんどん魔王城の奥に呑み込まれていく。しかしその先に……。
「見付けた」
ニィと口角を上げ探していた迷子勇者の前に立つ。怪我は……それほどたいしたことはなさそうだ。受け身の時にできた切り傷ってとこか。上手く聖剣を使って防いだようだ。
「生意気なガキだな」
それっぽっちの極大魔法を撃ち込めるくらいで調子に乗りやがる。
これくらいの魔力ならば呑み込める。魔竜の鱗は魔法を反射するが……こちとら神竜の末裔。
それ以上に決まってるだろぉがぁっ!!ランスから放たれる魔力がアーラの極大魔法を魔力ごと呑み込み押し返し、アーラが悲鳴を上げる。
「魔王四天王の代替わりかぁ……そうだ忘れてた。お前の調教はまだだったナァッ!!?」
恒例行事を忘れるところだった。
「ロイさん!」
あとら任せな、タイヨウ。久々に腕が鳴らぁっ!!!




