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エスト王国



――――さてと、今回はドラゴニア王城からエスト王国へ向かう。そこにクルルたんがユリーカとタイヨウを連れてきてくれたのだが。


「何でダニエルとシェリーまでいる」


「ぼくはロイさんの担当ですよ?アンタが行くなら付いて行くのが役目です。アリシアちゃんとハルトくんはダリルさんとメイコさんにお任せしていますから」

「いや……お前な」

しっかしこれも腐れ縁ってのか。しかしながら……。


「シェリー、お前……遊びに行くわけじゃないんだぞ」

もしかしたら魔王国でひと悶着あるかもしれない。


「わ、私もユリーカの友だちだもんっ!」

「シェリー!」

ユリーカがぱあぁっと顔を輝かせる。ま、すぐにエンストになるとは言え、ユリーカのためを思うのなら一緒の方がいいか。


「はぁ、仕方がない。お前が連れてきたんだから、ちゃんと見とけよ。ダニエル」

あいつすぐ空回りしたりドジしたりすんだから。

「はいはい。ロイさんもどうせ見てますので安心して付いていきますね」

「お前……」

最近何だかんだで看破されているような気がするのだが。……ちょっとアシェに似てきたか?


「そんじゃぁ、行くか」

「そうだな。行って来い、ロイ。お土産よろしく」

と、見送りに来た坊。


「結局それか」

「へ……陛下」

ダニエルが微妙そうな表情で見てくる。


「でも、それで済めばこともなしだろ」

「……そうだな、坊」

平和に済めばそれ以上のことはない。本当はもっと……普通に帰省させてやりたかった。せっかく親父の目が覚めるんだからな……。


――――坊や見送りに来た城のもんたちに見送られながら、俺たちはエスト王国に向かった。


※※※


――――エスト王国への転移先はエスト王国の城である。内装もドラゴニアとはまるで違うし、外観もかなり違う。


そんなエスト王国城で俺たちを出迎えたのはエスト王国の国王。隣で大人しくクールビューティーを貫いているアヤメに何となく面影がある。


「ようこそお越しくださいました、ドラゴニアの竜王子レックスさま」

一応勇者の肩書きもあるが……ま、今回は坊の親書もある。

「こちらこそ。出迎え感謝します。エスト王」

そう挨拶を返せば、エスト王は次にユリーカを見る。


「そしてようこそ、魔王国王女ユリーカさま」

「は、はい!突然の訪国を許可していただき、感謝いたします」

ユリーカが緊張しながらも俺の隣で頷く。一応お忍びの滞在……ではあれど。こう言う国同士の挨拶も大切だ。ユリーカにとっては海を隔てた隣国の王。王女としての訪問ではなくとも、こう言う場では王族と言うものの役割がある。

だから今回は俺とユリーカが先頭で挨拶をして、みなが伴として続く。あれ……確かシェリーもエルフの姫ででは……。いや、あれは種族的な姫だしドラゴニアの王族ではないので今回は大丈夫か。


「いえいえ、こちらとしても両国の良好な関係を歩むことは本望です」

ユリーカは緊張はしているが、何だ……ちゃんと出来ているじゃないか。エスト王としっかりと言葉を交わしている。


「では、早速お部屋に案内させましょう。アヤメ」

「はい、兄上」

アヤメが普段の戦闘狂やら破天荒さを抑えてさらりと答える。


そうしてアヤメについてエスト王国城の客間に案内される。


「こちらが女子部屋でこちらが男性部屋だ」

そう告げるアヤメのしゃべり方はいつも通りである。


「ふぅん、随分と大人しくしてたなぁ、お前」

「……その、兄上の顔に泥を塗ることなどできまい」

コイツはコイツで兄思いと言うか、まぁ昔から暴れん坊姫さまで気苦労かけていた自覚があるってのもあるんだろうけどな。


「だからほかのみなも、ひとまずは城でゆっくりしてくれ。何かあれば城のものに言うといい。私を呼んでもいいぞ。あと手合わせもな!」

アヤメが俺の方をキラッと見つめる。

いやいややんねーぞ、お忍びで来てんのに。お前とやり合ったらバレんだろうが。


「いや、それよりも道場とかあるんだろ?たまには後輩の稽古でもつけてやれ」

「……それもそうか!」

アヤメがタイヨウに向き直る。


「では時間がある時に手合わせでもしよう」

「は、はい!その……アヤメ、さん?」

そう言えばタイヨウとユリーカは食堂でアヤメとは顔を合わせているがそれほど会話はしていないかもしれない。タイヨウが少し緊張しているようだ。


「うむ。アヤメさんでいいぞ。エストは召喚勇者の喜ぶものが多いとか……夕飯のリクエストなどあれば言うといい。もちろんユリーカ姫も、興味のあるものがあれば夕飯に用意させよう」

「わ、私もいいん、ですか?」

「もちろん、隣国だからな」

アヤメがニカリと笑んで頷く。


「その……ぼくは、米?」

米ならいくらでもあるし、メイコさんもよく炊いているんだが。

「そう、ねぇ……そうだ、エスト王国も魚介類が採れるのよね。魔王国でも食べるけど……こちらの魚介類も食べてみたいわ」

まぁ確かに、エストもシャマイム公国も魔王国とは海を隔てている。当然ながらエストも魔王国も魚介類を食べる文化があるのだ。


「では夕飯には米と魚介類を出すよう伝えておこう。では、夕飯までゆっくりしていてくれ」

そう言ってアヤメは早速夕飯の手配に行ってくれたようだ。


「アヤメさん……相変わらず強くてカッコいい女性ですね、ロイさん」

「……んまぁな」

タイヨウの言葉に相槌を打つ。


「何て言うんだろう……どこか侍……みたいな感じがします」

「さむら……何?」

「俺のいた世界の国で昔いたアヤメさんみたいな剣士のことです。武器は剣と言うより刀ですし、男性が主でしたが」

え……?何、タイヨウのいた国って昔アヤメみたいなのがいたのか……?へぇ……なら竜の女神が地球の特定の国から召喚を行うのも分かる気がする。


「ロイさん、多分それ、陛下から『違ぇっ!』ってツッコミが来ますよ」

え……?ダニエルったらいつの間に坊の口真似まで出来るようになったんだ。



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