ダンジョン探索後日譚
――――ダンジョン探索から王都に戻ってきた。ギルドではその後の魔族の取調べにも立ち会ったが、やはり指揮したやつの詳細は不明。しかしながらあの魔族はユリーカの言葉をちゃんと信じ聞いた以上そこまで悪に染まったやつじゃない。ちゃんと刑に服して更生できんだろ。
それからいつものダリルの飯屋で飲んでいれば子どもたちのきゃっきゃとはしゃぐ声がする。
「シェリーお姉ちゃん、ダンジョン探索はどうだったの?」
「まぁ私のこの聖女の力が冴え渡る大冒険だったわね!」
いや……大冒険って。あちらではジュースを飲みながらアリシアとシェリー、ユリーカが歓談していた。
まぁシェリーが頑張ったのは事実だが。
「あら、頑張ったのねぇシェリーちゃん。そうだ、デザート作ってみたのよ。みんなで食べてね」
「わぁ、デザートだぁっ!」
シェリーはメイコさんのデザートを美味しそうに頬張る。ほかの2人も美味しそうに頬張っている。
「ロイ、お代わりいるか?」
「サンキュ、ダリル」
ダリルに酒のお代わりをもらい、塩枝豆をつまんでいれば。
「あれ、ロイさん。こちらにいたんですね」
「んぁ?ダニエル?」
ダニエルは今日は大神殿にお使いに行っていたようだが……飯屋に帰ってきて俺の席の前に腰掛ける。
「てっきりラブホ行っているものかと」
「お前は俺を何だと思ってんだ」
「昼間っからラブホ行ってる勇者ですが?」
「よく分かってんじゃねぇの。何、たまには昼から飲んでることもある」
「……どっちもダメ勇者じゃないですか。あ……ところでタイヨウくんはどちらに?」
「タイヨウならハルトと外で稽古してるぞ」
「ロイさんは稽古してあげないんですか?」
「酒入ってるからなぁ」
「……酔わなさそうなのに」
「酔わねぇぞ。俺が酔うのはクルルたんだけだ」
「何すかそのキザ台詞。品性下劣勇者なくせに……でも」
「んぁ?」
「やっぱりアンタはドラゴニアの勇者なんですよねぇ」
「当たり前だろ?ここは……俺の国だ」
「えぇ。だからこそですね。素直じゃないですが」
よく分かってんじゃねぇの。
くいっともう一杯酒を喉に流していれば。
「ダーリン!クルルたんラ~~ブマックス!できたわよ~~」
クルルたんが愛らしいエプロンを付けてクルルたんラブマックスをテーブルに運んでくれた。
「く……クルルさん、姿が見えないと思ったら……」
「うふふっ!ダーリンのための手料理よ!」
「さすがはクルルたん。今日もクルルたんラブマックスがうめぇ」
「や~~ん、ダーリンったら!あのね、今回はダンジョンでみんな頑張ったから……私がみんなにデザートを作ってあげようと思ったんだけど……」
クルルたんったら優しいなぁ。クルルたんの手料理なんて妬けるが。
「メイコちゃんが作ってくれるって言うから、私も楽しみにしてるの!」
「あぁ……さっきアリシアちゃんたちに出していた……メイコさん、さすがです」
んぁ?何故ダニエルが感心しているかは分からんが。そんなに旨いデザート……シェリーたちを見ていればそのようだな。暫くすればクルルたんとダニエルもメイコさんにデザートをもらい喜んでいた。
「ロイさんはどうします?」
「俺ぁ今辛党だ」
酒飲んでるし。でもクルルたんラブマックスは……ほとんど食べちまったな。何かつまみでも……。
「そう言うと思ってたわ」
そう言ってメイコさんが出して来たのは……。
「ゆで卵に薬味とお塩のソースをかけたおつまみよ」
「へぇ……ん……旨い。酒も進むな」
「そうでしょう?今回の功労者の勇者さまに」
「……一番はシェリーだろ?」
治療も頑張った。
「でもロイさんがいたからよ。私にも分かるのよ。同じ聖女だもの」
「そう言うものか」
「そうよ、ロイさん」
メイコさんがクスクスと苦笑する。暫くすればタイヨウとハルトが帰ってきて、メイコさんが2人にもデザートを振る舞う。
「わぁ、あんみつだぁっ!」
タイヨウが喜ぶ。
「ふふ、気に入ってくれて何よりよ」
タイヨウと同郷のメイコさんはホッと安心したように微笑む。あの2人も互いに同郷であることは知っている。タイヨウが美味しそうに食べるので、ハルトも恐る恐る口に運び……気に入ったようでもぐもぐ食べている。
「ひょっとしてロイさん、ラブホじゃなくてこっちにいるのは……」
「……何だ?ダニエル」
「いえ、何でもありませんよ。言ったらまたひねくれるんで」
んん?よく分からんが……ひねくれる自信だけはあるかもなぁ。




