鬼畜外道勇者ロイ
ちょっとイイトコ見せた後に相変わらずのダメ勇者。
――――ダンジョン内で何かイレギュラーなことが起きた時はその後の調査も大事だ。
「オラァァッ!!調査だ調査ァッ!!」
『グギャギャ――――――ッ!!?』
それは上層で出会ったあのはぐれ魔物であった。
「もう持ち場を勝手に離れねぇよぉにナァッ!?」
もしかしたら第7階層であの魔物が現れたから上に流れてきたのかもな。とは言えセーフティーエリアには入れない。そこら辺の仕組みはダンジョンコアじゃなきゃ分からんが。
セーフティーエリアに魔物が入ってこないだけで魔物があの前後で足止めになるとは限らない。個人的にはセーフティーエリアではない壁の向こうとダンジョンを覆う外壁の空間に何らかの通路のようなものがあるのかもしれないと思うが……入ったことなどないからな。
しかし……。
「やはり階層を変えてくるのは迷惑だからな。肝に命じてもらわんと」
アイテムもドロップしたからマジックボックスにぶちこむ。
「相変わらずの鬼畜外道よね」
とユリーカ。
「ロイさん、やっぱり魔物は計画的に……っ」
タイヨウは慎重派か?割りと熱血でぶっ込むタイプだと思っていたが意外と計算するタイプか。ま、それはさておき。
「お前にも鬼畜外道の神髄を俺自ら叩き込んでやろぉかぁ?」
「ひぃっ!!」
ユリーカがクルルたんの後ろに即座に隠れる。
「んもぅダーリンっ!ユリーカちゃんを恐がらせちゃダ~~メッ!」
クルルたんっ!!クルルたんのその『ダ~~メッ!』めっちゃまぶい~~っ!ふっ。クルルたんのかわいさに免じて特別に許してやろう。
「さてと……調査を続けんぞ。最下層の第8階層は変わりないようだな」
「くぅ……変わり身早い」
ユリーカが悔しがっているが、クルルたんが頭なでなでしててご機嫌だから、ユリーカのこめかみぐりぐりしてやることができずに残念だ。
俺はクルルたんとタイヨウ、ユリーカと最終階層まで来ていた。
なお、シェリーは満身創痍なようだったし……やっぱりアイツ熱っぽかったからな。ほかの冒険者の撤収に合わせてダニエルと地上に帰還してもらった。
そして俺たちは最後の階層にてボスの間の前に来ていた。
「さて、最後の調査はここだ」
ボスの間の扉を開けば、早速ダンジョンボスが出現する。
「よっしゃぁ!ダンジョンシステムの正常運転を確かめるためダァ……タイヨウ。俺の戦いをよく見ておけよぉっ!?」
「は、はい、ロイさん!」
ふん。素直でよろしい。俺は竜鋼ランスを構え早速ボス魔物を狩る。
ドロップしたアイテムは……レア。
「おかしいな。ボスはレア以上……スペシャルレアやウルトラレアが排出されるはずなんだが」
はい、2体目、3体目。レア、スペシャルレア、レア、スペシャルレア、スペシャルレア。
「ウルトラレアはいつ出んだぁっ!!排出率どうなってやがるぁっ!!」
『ひゃ……ひゃくぶんのいち……』
さすがはボス魔物。しゃべるのな。ま、それもレアではない。ボスによってはミッションを課したりもするからしゃべれなくては困ることもある。
「ならそれまで……ヤろうな?」
ニコォッと笑めば、ボス魔物をおおぉっ!!!
「ウオラアァァァァァッ!!!!!」
レア、レア、スペシャルレア、スペシャルレア、レア、レア、レア……。
「ひぃ……はぁ……どうか……おた……すけ……」
出現した途端に息切れってそれはいいのか?お前。
「タイヨウ、お前やってみるか?」
「は、はい!でも……いいんでしょうか?ちょっと疲れているみたいで……」
「何言ってんだ、タイヨウ。倒されないとコイツも仕事が終わらないんだ」
「それは大変です!早く仕事を終えて休んでください!」
タイヨウがボスに向かい合う。
「あぁ……鬼畜外道勇者に比べたら……最後は……品行方正勇者にやられて倒れたい……」
「ボス魔物さん……!」
タイヨウとボス魔物の間に謎の絆が芽生え始める。だが……。
「フハハハハあァァァァッ!!!騙されたなァッ人間っ!死ねえええぇっ!!!」
ボス魔物、お前は俺の地雷を踏み抜いた。
「あ゛?何か言った?」
次の瞬間ボス魔物が竜鋼ランスで霧散する。そして復活したボス魔物を……。
『だ』
瞬殺。
『ず』
撲殺。
『げ』
突刺。
『ぇ』『ぁ』『え』『ぇ』『ぐぇ』
連打。連打。連打。
「さて120体目ぇ……排出確率どこ行ったあァァァッ!!!」
「あくまでも確率なんですううぅっ!!!お願いですもぅ……許……じで……品行方正勇者もう騙しません」
「ふぅん、よし。タイヨウ、やってみろ」
「え?あぁ、はい。ボス魔物さん。これでお仕事終わりです。ゆっくり休んでくださいね」
「あ……うぅ、あ」
ボス魔物はタイヨウによって討伐された。
そして落としたアイテムは……レアだった。
「もう一回やったらぁっ!!!」
「ギャアァァァァッ!!」
追加で5回やったらウルトラレアがドロした。
「さて……排出確率だけはギルドに報告だな。お前ら、ワープ装置でダンジョン脱出だ」
「何事もなく告げてるけどアンタ……そこなの?」
とユリーカ。
「ダーリンったらもう~~っ」
クルルたんがかわいい。俺にとってそれが最上だ。
「アイテムたくさんドロップしましたね!嬉しいです!」
ま、タイヨウは満足そうだからいいか。
ワープ装置の光に包まれる中聴こえてきたのは……ダンジョンコア。ダンジョンの意思か。
『何てことやってくれたぁ品性下劣勇者ぁっ!!やりすぎじゃぁっ!!』
いや、お前らの排出率のせいだろう。
『く……っ。でも……ダンジョンの風紀を保ってくれたのは……礼を言う』
ふぅん?ま、分かってんならいいけどな。
こうして冒険を終えて地上に戻りギルドに戻れば……般若の笑みのアシェがおり、シェリーが涙目、ダニエルはどよーんとしていた。
「何でいんの?アシェ」
「保護者ですからね。一応は来ないと。ま……ロイがついていたのなら安心ですし、今回は冒険者たちからも感謝されてました。シェリー」
「お、おじいさま」
アシェがシェリーに向かい合う。
「頑張りましたね」
「う……うんっ」
アシェによしよしされながら、冒険者たちからも礼を言われるシェリー。
「私、これからも頑張る。私だって……ドラゴニアの聖女って呼ばれるようになるんだから!」
ふぅん……?ドラゴニアの勇者に並ぼうってか?それにしては……。
「まだまだ手のかかるやつらだが……」
その成長をを見守ってやるのも……悪くはない。ふとクルルたんがにこりと微笑んでくるのが見える。クルルたんには全てお見通しみたいだな。




