ドラゴニアの誇り
すっかり戦意喪失した魔族を捕らえれば、セーフティーエリアには既にギルド職員たちが到着していた。
「何だてめぇら、そんなところで悠長に」
「あなたが通すなと言ったのでしょう?てかあなたがいるなら問題ないですよね。我々は手当てのためのアイテムを配布しておりました」
「……ほんっとお前ら……」
まぁ別に構わんが。むしろこちらを手伝ってくれたのなら助かったかもな。
「ロイさん、治療なら何とかなりましたよ。シェリーちゃんも聖女ですから」
「うん……私頑張ったんだから!」
そう言いつつも、頭にアイスシート貼ってもらってる上に周りの冒険者に座ってるように言われている。
「はいはい、頑張りました」
ぽすんとシェリーの頭に掌を置く。
「……ロイ」
何だ?頬が熱い……熱でもあんのか?
「おい、ダニエル。負傷者の治療終えたなら、シェリーも診てやれよ」
「MP切れなので今休ませていたんですが……シェリーさん、ほかにどこか調子の悪い場所は?」
「いや……その、そんなことは」
しかし念のためダニエルはシェリーの問診を始める。
「さて、今回の首謀者は捕らえた。反省する気らしいから暴れることはない」
「何なら私も同行するわ。魔族の姫として」
俺の言葉にユリーカが続く。
「……いえ、お構いなく。こちらにも凄腕の竜族がいますから。暴れたらロイさんの鉄槌ですからね。暴れる気もなさそうです」
職員たちの後ろには竜族の用心棒たちもいる。魔族や魔物のことを聞いて寄越してくれたんだろうな。
「たりめぇだ」
そう答えれば、こちらで拘束しておいた魔族を引き渡す。
「……そう言えば……聞かせてくれない?物理も魔法も効かないあの魔物は何?」
「……姫さま。あれは……その、とある筋から実験用にもらったものです」
「とある筋から?」
「魔王さまの復活を好機と捉える魔族は私ひとりではありません。恐らく……中枢の誰かが。その正体は私も……」
所詮この男も蜥蜴の尻尾切り。こりゃぁ魔王の復活が迫ってもおいそれとユリーカを国に返せない。
「詳しいことはギルドの取調室で」
「あぁ、俺も後で向かう」
「はい、親愛なるドラゴニア竜王子レックス・ドラゴニアの恩恵があらんことを」
「……殴んぞ」
そう言ってやれば、周囲から苦笑が漏れる。くっ。お前らもか。
ギルド職員たちは苦笑しつつも最後はキリッとしながら魔族を護送して行き、俺たちも負傷者たちや新米の冒険者たちを先に返した後は……見回りをして帰るか。
「その、クルルさん。さっきの竜王子の恩恵をってのは……」
その時後ろでタイヨウとクルルたんの会話が聞こえてくる。
「ドラゴニアの挨拶のひとつね」
「そうですよ、タイヨウくん。ロイさんは品性は下劣な勇者ですけど、武勇や守護に関わることには縁起がいいんです」
と、ダニエル。そこに冒険者たちも加わる。
「そうそう。こんなダメ勇者だが、ドラゴニアの誇り竜王子レックス・ドラゴニア」
「だから俺らはドラゴニアにいるんだ」
「私もドラゴニア国民で良かったと思えるんだよ」
そう冒険者たちは称える。全くお前らはこう言う時だけは持ち上げる。つかダメ勇者って言ったなオイ。
「そっか……俺もロイさんみたいに慕われる勇者になりたいです」
そうタイヨウが漏らす。それは懐かしく、ダブることば。やはり……縁者だ。
「まぁでも、品性下劣は感染らないように注意してくださいね。ま、タイヨウくんは品行方正なので心配ないと思いますけど」
しかしその時ダニエルがさらりとそう告げる。おい……お前に感染してやろうか……?




