可愛い子にはダンジョン探索をさせよ
――――今回来ているダンジョンは比較的初心者でも挑みやすいダンジョンだ。しかしダンジョンとは時に命の危険だってある。
どんな簡単なダンジョン、難易度低めなダンジョンだって……だ。何故ならダンジョンとは決まったポイントでしか出入りができず、時にはモンスターハウスやら魔物の大量発生やら。さらには迷子になれば致命的。つまりユリーカには致命的な場所なのだが。
「ほら、タイヨウ。このマップが非常に重要で、勇者独自のマル秘アイテムでもある」
ステータス画面をマップに切り替える。このマップはステータス画面のツールで作成も可能だが、それよりかは分かっているマップを仕入れる方が楽である。そのマップを配信しているのが冒険者ギルド。ダンジョンの近くには必ず冒険者ギルドの支所がある。その最大の理由がこれだろう。ダンジョンに潜りますと言う申請を出せば誰だってダウンロードできる。さらに申請を出すことで長時間戻らなかった場合や、救援信号を出した際の助けが来る可能性が高くなる。冒険者IDを頼りに探すことだってできる。だがそれは完璧ではない。時にはその探索が妨害されることもある。ステータス画面を使って救援を出しても妨害されることもある。
だがそんな時にもどんな時にも有効なのが……これである。
「この赤く光っているのが……」
タイヨウがステータスマップを開きながら指差す。そこにはただの赤ではなく、頭に角が生えたアイコンにアラートと書かれている。
「魔族探知アイコンだ。さらにユリーカは魔王の娘だからな、強敵もしくは魔王に附随するもの……のアイコンが出るんだ」
「そんな機能があるんだ!便利ね!」
普通に感心しているがユリーカ。これは元々人間と魔族が対立していた時の名残。勇者が魔族や魔王を倒すための世界のシステムだ。しかしまぁ、今は特に争ってもいないのにこれが勇者に残されているとは。……完全にユリーカの方向音痴用じゃねぇかな……?
「タイヨウとは……本当に運命を感じるわ」
「ユリーカ!ぼくもだ!」
いやまぁ、魔王の娘と勇者だもんな。ある意味運命だし……元々ユリーカの母と魔王も運命か。そう考えるとこの世界も不思議なものだな。
魔王がおとなしくなったのはうちの親父の功績でもあるが、その新しい運命を切り開いたのは、かつての聖女であったユリーカの母親だ。
「いい話ね……親友として嬉しい……ひぐっ」
シェリーは何故か感動していた。聖女と魔王の娘が親友ってのも、なかなか面白い。それはユリーカの母親が導いた縁だろうかねぇ。
「あのー、ロイさん」
「どうした、ダニエル」
「先程からずっと気になっていたんですが……赤いアイコン、もうひとつありますよ」
ダニエルがタイヨウのマップを覗きながら示す。
「あら?ほんとね……ほかの冒険者にも魔族がいるのかしら」
と、クルルたん。前屈みおっぱいまじまばゆ。
「それもあり得なくはないんじゃねぇの?ドラゴニアは魔族の出入国を制限してはいない」
魔王の娘のユリーカがいる以上、制限する理由もない。それから冒険者なら世界中を旅するもの。フローライト時代はあそこには近寄らなかっただろうが、今のアートルム帝国なら別に制限もしまい。
アートルム帝国皇后も昔色々とあったが、その原因は魔族ではなく人間だ。
今のこの世界に人間vs魔族の対立は存在しないはずだ。
「同郷かしら?会ったら挨拶しないとね」
ユリーカが笑顔で頷く。
「ま、ダンジョン内ではお互いの助け合いが重要だし……挨拶も重要だな」
何かあれば協力し合わないといけないのもダンジョン探索の大事なことである。




