迷い込んだ少女
ダリルも人使い粗ぇなぁ……そう思いつつも、飯は旨いから行ってやらんこともない。
「けどだりぃー」
「やる気だせもう、お前はっ!たらふく食ったんだから!」
と、ダリル。そうは言っても。
「アンタほんとやる気ないですね。ダリルさんの言う通りですよ」
「んー?何で俺がやる気出さにゃぁならんねん」
「ほら、いいからいいから、行くわよっ!」
「クルルたんが言うなら……っ!」
「……ほんとアンタって人は」
俺の手を握って引っ張ってくれるクルルたんがかわいいのでついて行けばだ。
「あぁ、ロイさん!」
「ロイさんが来たんなら安心だ!」
「来てくれ!あ。串カツあるぜ」
「ん――――」
ダリルと一緒に集まっていた冒険者たちから串カツをもらう。
うん、うまそう……っ!
「いや、何しれっと賄賂もらってんですか。アンタが来たら安心なのかちっとも分かりません!」
「……ったく、ダニエルお前なぁ……」
もぐもぐ。串カツうめぇな。さすがはダリルの店の串カツ。
「何だこの神官!」
「分かった!ロイさんに付きまとう神殿の!」
「おっしゃぁっ!シメたらぁっ!」
あ。ダニエルが冒険者たちのターゲットになったぁ――――。
「ひいぃぃぃっ!ちょ……ロイさんんんんっ!?た、助けて……っ」
「助けて欲しけりゃ対価よこしな……っ!」
この串カツのようにな!ビシィッ!!
「いや、がめつすぎだろアンタあぁぁぁっ!!」
「ほら、アンタたち!喧嘩はしないの!今はこの子のことが先よ!」
と、その時メイコさんのひと声に冒険者たちがびだっと大人しくなる。
さすがはメイコさん。ダリルの嫁になった女なだけのことはある。
――――ん?この子……?
思えば……メイコさんの向こうのソファーに誰か寝かされている。
「この子まだこんなに小さいのに、何があったのかしら?」
あぁ……子どもを心配するクルルたんは相変わらず、心優しくて萌え萌えキュンキュンだなっ!!
「治療魔法は施したけど、疲労が蓄積しているのか、今はまだ眠っているの」
「女将さんは治療魔法を……!?」
ダニエルが驚愕するのも無理はないかぁ。治療魔法使いが庶民街の食堂にいるんだもんなぁ。神殿はすぐに治療魔法使いを囲いたがる。
「言っとくがぁ、ダニエル!」
「な、何ですか今度はぁっ!」
「メイコさんに手ェだしたら冒険者総出で袋叩きだ覚悟しとけ……!」
「ひいぃぃっ!?恐い恐い!何もしませんけどおぉぉっ!?」
「神殿に妙なこと吹き込むんじゃねぇっ!」
「分かってますよ……!分かってますからこの冒険者たちどうにかしてえぇぇ~~~~っ」
屈強で強面な冒険者たちに囲まれてひぃひぃ言っているダニエルに、メイコさんが。
「あら……あの神官さまはいい神官さまなの?」
メイコさんが心配になるのも無理はないよなぁ。
「あぁ、心配すんな。あれはただの……童貞だ……!」
「何つー個人情報流してるんですか!やっぱ品性下劣勇者あぁぁ~~っ!」
「ふん、褒めるなよ」
「褒めてるように聞こえますか!?」
「ほ~~ら、アンタたち。童貞の神官さまをそんなに虐めないの!」
『ういっす、メイコさん!!』
メイコさんの言葉に冒険者たちはただでさえ強面なくせに凶悪な笑みを見せて頷いた。
「ほんと……どう……どうて……ヤメテ……」
「ふん……まだまだ青いな、ダニエル。男ってのはそうやって成長すんだ」
「んなわけありますかぁっ!!」
「んもぅ、ロイったら脱線しすぎよ?ダニエルちゃんが童貞なのは分かったから、まずはあの子のことを聞きましょう?」
「ん~~、クルルたんがそう言うなら」
「それじゃ、この子を保護した時のことを聞かせて?」
メイコさんが告げれば、保護したと見られる冒険者たちが頷く。
「その子、王都の外にひとりで倒れてたんだよ。魔物に襲われた形跡はないけどさ、さすがにそのままにはしちゃいけねぇだろ?周りに親もいないようだった。んで、ここまで運んで来たわけ」
まぁここにはメイコさんがいるから。神殿に高い金払って治療魔法使いを呼ぶ必要もないわな。
「身元を示すもんは?」
ソファーのそばにしゃがみこめば、その少女は12か13か……まだまだ子どもだ。
少し土汚れが見受けられるが……髪には所々艶が見て取れる。それに肌も……。
どっかの貴族の娘か?……なら面倒臭そうな匂いがするから俺ぁ関わりたくねぇんだが。
それにしては妙に質素な出で立ちだ。
「な、何も……」
「……」
嘘は言ってはいないようだが。
――――その時。
「うぅ……」
少女が喉を鳴らし、そしてゆっくりと目を開く。
「……」
そして自分が多くの大人たちに囲まれているのに気が付いた少女は、驚いたように硬直する。
「おーい、ダニエル。メイコさんが治療魔法使ってくれたとはいえ……異常がないか診ろ」
神官っつったら治療魔法のプロだしな。
「あ、はい……!それはもちろん!」
しかしこちらに駆けてきたダニエルを見て、少女が身をこわばらせる。
「ひ……っ」
脅えてる……?大人だからってんじゃねぇな。少なくともダニエルは幼女ですら懐きそうなイケメン神官だぞ?
「大丈夫ですよ。簡単な問診ですから……」
ダニエルが手を伸ばした瞬間。
「イヤ゛……っ」
「……いやその……」
しかしダニエルの差し出す手に、少女は後退るようにソファーの背もたれに背中を押し付けて首を振る。うーん……これは。
「ぎゃふっ!」
ハイ……っ!ダニエルの腹にグーパンからの~~!
「うがっ」
かっかと落とし~~っ!
ダニエルは、完全に制圧した……!
「んもぅ、ロイったら相変わらず鮮やかな技ね~~!カッコいいわ~!」
「ふん、……ったりめぇだろ?」
ほら、極めつけにダニエルの背中に勝利の足跡を刻んでくれようかぁっ!
そして脅える少女をみやる。
「おい、大丈夫だ。この神官は俺の下僕だから」
「な、何すんですか!アンタ!いくらなんでも酷すぎますよいきなりぃっ!」
「ダニエル……俺ぁがっかりだぜ」
「何が!?」
「おめぇがまさかのロリコンだったとはな」
「やだ……っ、マジなの?童貞だと思っていたらそんな趣味を……っ」
うちのクルルたんが驚愕するのも無理はない。竜族は年の差カップルも多い。年齢差100とか余裕だし。だがしかし……他種族のガキに相当する年齢のもんに手を出しゃぁ……確実に変態送りである!!
「神官さま……そうだったの……でもまだ若いわ。きっと今からでも、やり直せるわ!」
メイコさん、こんなロリコン相手にも……っ!なんて優しいんだ……っ!うぐ……っ。
「いや、違いますから!誰がロリコンですか……!私はどちらかと言えば熟女派ですうぅぅ――――――っ!」
「きゃっ、やだっ」
「え……?」
クルルたんとメイコさんが驚愕している。
「ちょぉ――――――――っ!違う!違いますからっ!」
「じゃぁやっぱロリコンじゃねぇの」
「それは違う!断じて違います!!私は熟女が好きですそうですよ!熟女が好きなんです!悪いですか……!あとひとに何つーこと言わせるんですか!アンタそれでも勇者か――――――――っ!」
「勇者の勇者全てが品行方正だと思ったら大間違いだぜっ!」
「胸張って言うことじゃないです」
しかしまぁ……ダニエルがロリコンじゃないとなると……。
再び少女の方を見やれば。
「勇者さま……?」
「あん……?」
「勇者さまなの……ですか?」
「……ただし品性下劣ですけど……っ」
ダニエルうっせぇ。
足圧追加っ!
「がはっ」
「あの……勇者さま……!」
「勇者って呼ばれるのは好きじゃねぇ。ロイだ」
「ロイ……さま……?」
別にさまとかいらねぇけど。めんどいしいいか。
「あの……助けて欲しいのです……!」
「……助け?」
「お願いします……!私を生まれ育った村まで連れて行ってくれませんか……!?そして……お母さんとお父さんと……お兄ちゃんに会いたい」
「……その前にてめぇみたいなガキが何でひとりで王都周辺をほっつき回ってたんだよ」
普通は……生まれ育っていた村で過ごしていても不思議じゃない年齢だ。
――――例外は2つ。
「……それはっ」
少女はダニエルをちらりと見やる。既にダニエルからは足を外してやっているが……。
神官であるダニエルに脅えてるってーんなら……選択肢は2つのうちの1つ。
「お前、聖女だな」
その言葉に、少女……いや、聖女が目を見開いた。