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戦闘狂勇者に付き合わされる品性下劣勇者



――――女勇者アヤメの登場によりシャマイム公国の遣いたちは顔面蒼白だ。イタルだけは憎らしげにアヤメを見るが……アヤメにそれは効かねぇぞ。メンタル竜鉄鋼並みだから。


「全く困ったやからだな。この始末はどうするんだ?陛下」

とアヤメが告げた瞬間……しれっとこちらにやってきた坊にイタルの付き人たちが目を剥く。

いや、お前ら謁見の間で会わなかったのか?まぁ、こんなところに普通いるとは思わんし、雰囲気や服も全然違うが……一応角生えてんだぜ?

「え……本物!?」

「うそ……」

「だがあの角……!」

一応見覚えはあるようだな。


「そうだな……謁見の間でいきなり大層なことを叫んでおいて……ドラゴニアに一体何しに来やがったのかと思えば……こちらが本題だったとはなぁ?」

付き人たちの顔がサアァッと青くなる。十中八九叫んだのはこの召喚勇者だとは思うが……一体何言ったんだ?


「つーか、坊。分かっててここに来たんじゃねぇの?お前のお付きもちらほらいんじゃん」

冒険者に混じってちらほらと。どうせコイツらの目当てがメイコさんだと分かってたみたいだな。


「久々に飯食いに来たのも事実だ。コイツらはそのついで」

ほんとに優先順位の差よ。


「んで?何叫ばれたって?」

「あぁ……そこの召喚勇者が俺の顔を見るなり『魔王だ』と言ってきた。気持ちは分かるがな」

「分かんの?全然違うじゃん、角もしっぽも」


「お前からしたらそうだな?」

「そうなん?」


「むしろタイヨウにそう叫ばれなかったのが不思議だな」


「でも、もしかしたらラスボスかもとは思ってました……っ!!」

と、タイヨウ。

「素直だな、お前、おい。アートルムの聖女の甥じゃなかったらシメてるからな?だが俺は寛大だ。この世界にまだ慣れてねぇ召喚者には特別に優しくしてやる」


「ほんとだ……!えらい違いですね、ロイさん!」

「ダニエル、おめぇは後で俺がシメてやる」

「いや――――っ!?ヤメて下さいよぉっ!?」

「んもぅ、ダーリンったら。あんまりいじめないのっ!」

「クルルたん……!」

そう言えば……先ほどクルルたんのおっぱいが……っ!


もみゅもみゅ……


「いや、アンタこんな時に何してんですか」

「何って、アイツの肘が触れたトコ、消毒。な?クルルたん」

「やんっ、こんなところで?でも、嬉しいっ」

「クルルたぁんっ」

恥じらいながらそう告げるところもめちゃまぶい最高俺の女神ぃっ!!


「ぐ……いきなり……何をする、貴様ァッ!」

あ、勇者イタルが復活した?早ぇな。少しは骨があるのか……あ、俺が講師引き受けなかったから、多分アヤメが引き受けたはずだ。

それなら当然講義……と言うより単に毎日勝負だと追っかけられてたはず。実践あるのみ、おのずと丈夫に仕上がったのか……?


「いきなりたぁ、随分な言いぐさだな?魔族と竜族の区別も付かねぇボンクラがぁっ!ケツ拭いて出直して来いやぁ……っ!」

特別サービスの、竜王子レックスの姿を見せてやろうか……!

そして頭に竜角を生やし、バサリと竜の黒翼を広げ、ピシャリと竜の尾をしならせれば……。


『ギャ~~~~~~~~っ!!!』

それはヒトとしての本能的な恐怖から来るのか……イタルとお付きたちが悲鳴を上げる。


「ロイさん……ケツとか言わないの、飯屋で」

「ちょっとくれぇいいじゃん、ダニエル」


「わーっ!ロイさん!何かすごい!ウラボス感ハンパない!ラスボスの裏に……ロイさんがいたんですね……!」

タイヨウは……イタルよりは耐性があるようだ。これも才能の遺伝かね……?


「お兄ちゃん、あれ!ロイさんカッコいいの!」

「ロイさんカッコいいっ!」

アリシアとハルトが純粋過ぎて俺、何か胸がジンといたむんだけど、何でかな。


「下ネタ言うからでしょ」

「ダニエル、何で俺の心の解説にドンピシャな答え突いてくんの?」


「りゅ、竜族……?」

「しかも、ロイって……」

「ドラゴニアの下品勇者――――っ!」

下品で何が悪いっ!つか俺の顔も知らんとは。


「お前もたいがい大人げないよな?ロイ」

「何のことだ、バシレオス」

「別に……?」

坊がニヤリと口角を上げる。ふん……おしめの時から見てきたんだから、これくらい許されんだろ。


「それで……エスト王国は構わんが……公国の使節団がお帰りならば、国境までは送ってやるぞ?」

坊が告げれば、いつの間にやら坊の部下たちが連中を囲っていた。


「国に帰ったら、覚えておくように」

彼らが連れられていくさなか、アヤメがしれっと呟いた一言に付き人たちは震え上がっていた。


「まぁ、気にするな。やつらのことはうちの国に任せろ」

「あっちのことはよく知らんから、任せる」

俺が告げれば、アヤメがにこりと頷く。


「それから……」

「まだ何かあんのか?」


「お前の竜族の姿は久々だな!どうだ、その姿の時は昂るんだろうっ!?」

「はぁ……うん、クルルたんとこの後ラブホにでも……」


「この後私と勝負すれば済むだろう!」

「あ゛……?」


「久々に、勝負しよう!」

「いやいやいや、ちょー、待て。何で!?」

「勝負したいからだろ!」

「意味分かんねぇよ!?何でそうなる……!」


「いいじゃないか。ロイ。やってこい。竜山山脈の上で竜神に試合披露してこい。な?」

「何でだよ、坊……っ!?」


「あ、それいいじゃないですか。タイヨウくんとハルトくんも参考になりますって」

ダニエル、お前まで。


「応援してるわっ!ダーリンっ!」

クルルたんに応援されたら断れないじゃん……っ!


「俺たちはここで空間モニターに映して観戦しとくから」

「いや、坊は帰んないの?城に」

「国王として自国の勇者の活躍をこの目で見定める立派な公務だ諦めろ」

「とってつけただろ――――っ!?」

「あと、エスト王国にはいろいろと世話になってるからな。ドラゴニアの代表としてもてなしてきてくれ」

「はい――――――っ!?」


「さぁ、行こう、ロイ!竜山山脈に転移だ転移!思う存分やりあうのだ……!!」

「……この戦闘狂勇者め」

「あぁ、私の二つ名を呼んでくれるなんて嬉しいぞ!品性下劣勇者!」

「お前、品性下劣の意味知ってる?」

「知らん!私は戦えればそれでいいからな……!」

ダメだ、全く話聞かねぇ……っ!

でも、元勇者だったロドリゲスと違うのは……弱きものを当然のように助け導き、強きものを純粋に称えるところだろうな。


「わぁった、わぁった……聖剣は折れると思うがいいな?」

「はっはっはっ!そのために50本ストックがあるからじゃんじゃん行くぞ――――っ!」

どんだけ準備万端にしてんだよ……!


しかし……竜族の姿になった以上は……消化しねぇとな……。


――――その後俺はアヤメと2時間やり合った。コイツはコイツでバイタリティーありすぎるが……。お陰でアヤメが少し大人しくなったと、アヤメの夫の外交官に感謝されたのは余談である。




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