エルフの姫
ぷくーっと頬を膨らませて仁王立ちになるシェリーと、それからシェリーと勉強しえいたのか、アリシアとハルトまでいる。
「何でお前らまで来てんの」
「何って、お昼ご飯よ」
「ほらほら、シェリーちゃんたちも席について?今追加でお料理持ってくるわね」
「はい、メイコさん」
うぐ……メイコさんが言うなら……シェリーの同席も仕方なく認めよう。そう、仕方なくだ……!
シェリーたちは余裕のあるユリーカたちの席の隣に腰掛ける。
「てか、誰?アンタの親戚?竜族よね」
「お前もか……!」
生粋のドラゴニア国民が情けねぇっ!!
※※※
「……てなわけで、アートルム帝国から来た召喚勇者のタイヨウと、魔王の娘のユリーカだ」
「あ――――……魔王の、娘?」
シェリーが驚いたように隣のユリーカを見る。
「あれ、ちょっとロイさん、いいんですか?聖女と魔王の娘会わせていいんですかコレぇっ!?」
「え?別にいいだろ。ユリーカの母親だって聖女だ。もう合わさってる」
「はい……?」
「あー……はいはいはい。聞いてる、聞いてる~~!おじいさまから。あなたもロイの被害者ね」
「……アンタ……分かるエルフ聖女ね……!」
早速手を取り合うユリーカとシェリー。何だ被害者って。俺ぁ何もしてないが!?むしろ魔王に託されてコイツを暫くドラゴニアの竜族の自治区に匿ってやったが……!?竜を隠すなら竜の中……!まぁ、魔王討伐が終わり、魔王が眠りについて落ち着いたら魔王国に返したが……!?それまではちゃんと俺の実家に押し付けてやっただろうがっ!
「私は聖女のシェリーよ。よろしく」
「エルフと言うより、ハーフエルフですか……!」
いや、タイヨウ……何だ……?はー……ふ?
「あー――――……その、勇者タイヨウだったな。こっちではそう言う言い方、しねぇの。エルフはヒト族の血が混じってようがエルフだ。多種族国家だからそう言う分け方したら永遠に面倒くさくなる」
まぁ、シェリーの場合はエルフ1:ヒト族3だし……他にもエルフ:獣人:ヒト族とかいてややこしいことになる。てか坊……【こっち】って言い方……何……?
「そうなんですか……でも、ナマエルフ、最高です……!」
「え……?そう?よく分からないけど……ありがとう?」
「はい、一度見て、満足しました……!」
「何かものすごく失礼なこと言われてる気がするんだけど、眼差し真っ直ぐすぎるし」
「あー……この子は気にしないで!召喚されたばかりだから、この世界の色んなことに興味津々なのよ。気にしなーい、気にしなーい。顔も気にしなーい」
と、ユリーカ。さりげなくタイヨウのキープに必死じゃないか……?
「それならいいけど。それから、私の後輩聖女のアリシアちゃん……!」
いつの間に後輩にしたんだよ、お前。
「それから勇者のハルトよ!」
「よろしく……お願いします」
勇者と聞いてついついシェリーの影に隠れるアリシア。やっぱ俺とハルト以外の勇者にはちょっと警戒すんのな。
まぁ、仕方ねぇけど。
一方でハルトはじっとタイヨウを見つめる。
「ハルト……?あ、叔父と同じ名前ですね……!」
は……?叔父……?
「知ってますか?実は叔父もこの世界で勇者してたらしいんですよ!この世界で聖女やってた叔母に聞きました……!」
コイツ、アイツらの甥っ子か――――いっ!!
「え、すごいわね。血縁なの?血縁で召喚されるものなの?ねぇロイ」
「俺に聞くなよ。俺が知ってるわけねぇだろ」
竜の女神が何を思ってそうしたかは知らん。
「でも素敵な縁ね……!あれ?でもハルトって名前の他の勇者……いるの?」
「もう死んでる」
俺が告げれば、シェリーがハッと息を呑む。さすがに今現在他の国にいる勇者は……最近召喚されたと言うタイヨウ以外は教えたことがあるが……アイツのことは、教えてねぇかもな。
何せ、シェリーが生まれる前の話だ。
「ご、ごめんなさい」
「いやいや、いいんですよ、俺も会ったことないですし」
そりゃぁ、タイヨウもシェリーと同い年だからな。
「突然失踪した弟と妹のこと、父さんからは聞いてて、名前も……教えてもらってたんです。叔父は亡くなっていましたが……生きてる叔母には会えましたから。それから……俺、女神さまから与えられる特典がほしくて」
「……んなもんもらって何すんだ?」
「父に手紙を書きたいと。もちろん伝えられることは限られますけど、叔父のこと、生きてる叔母に会えたこと」
ほんと……願うことは同じなのな……。まぁ結局は……アイツは竜神からの慈悲で、この世界にひとり残される妹の安寧を願ったが……。
「だから、ロイさんに会いに来たんです!叔母からも紹介状をもらいましたし!叔父もお世話になったと聞きました!」
「別に……世話なんてしてねぇよ」
結局守ってやれなかったからな。
「……で?特典もらうって何したいの。魔王倒すなら無理だと思うぞ、お前のレベルじゃぁ。つーか、それでももらえねぇから」
もらえなかったやつもいるしな。
むしろ、魔王討伐だってあれだろ?かつて聖女を拐った魔王を討伐するだのなんの。
アイツらはただベッドの上であはんあはんしてただけだし、むしろ聖女のお陰で大人しくなったんだから、特典受け取るとしたらその聖女……ユリーカの母親の権利である。
聖女に与えられることはない権利ではあるが。
「ユリーカを、幸せにします……!」
「タイヨウ……!」
ナナメ上行ってんじゃねぇか……っ!
「あと、冒険者として大成して何だかんだしようかと……!」
何だかんだしてもらえると思ってんの!?全ては竜神が決めることだが……!?
「言っとくが……その年齢で冒険者は無理だぞ?ギルド行っても初心者向け、サポート冒険者付きだかんな?レッスン料もあっからもうかんねぇぞ」
「私がいるわ!これでも80……」
「経験ねぇだろ」
「講師ならロイさんが……!」
「俺は高ぇぞ?無理だ」
「子ども相手に容赦ないですね、相変わらず」
ダニエル、それは余計だ。
「叔母が……予算なら出ると」
バッとタイヨウが広げたのは……アートルム帝国からの直々の……
「指名依頼……?」
「よかったな。ちゃんと金は出るようだ」
「いや、待て待て、坊!?俺はドラゴニアの勇者!冒険者!何でアートルムから雇われにゃぁならん!」
「うちの国で勇者を預かることは俺が許可しといた。前回みたいなこともあるからな。きっちり育ててほしいだと。あぁ、屋敷が狭くなるのは困るか?なら増設するためにひと寄越すから、やれ」
「……おんま……っ」
坊がここに現れた時点で、全てが……謀られていたぁ……っ!
「ついでにハルトも教えてもらえ。こっちは俺が直々に出してやろう国家予算から……!竜王からは許可をもらった」
何で親父にまで根回し済んでんだぁ――――っ!!?
「ロイさん……!」
ハルトの曇りのない眼差しが……眩しすぎる。俺は自ずとクルルたんのおっぱいに顔を埋めた。
「んもぅ、ダーリンったら!私も付き合うわ?」
「もごもご……クルルたぁ~~ん」
「ほんとダメ勇者だな」
うっさいわ、坊……っ!
「ま、そこがいいんですけどね」
「そうね、ダメじゃないロイなんてロイじゃないもの」
ダニエルもシェリーも勝手なことばかり言いやがるんだが。
「はぁ……とりまお代わりを……」
どうせ坊持ちだぁ、食べてやらぁ……っ!と、顔を上げた時だった。
「あ、あの……困ります……!」
「やめてくれ!こんな……っ」
「しかし、あなたは我がシャマイム公国の聖女なのですよ!?さぁ、お国にお戻りを」
それは手首を掴まれるメイコさんと、それを取り外そうとするダリル……それから大衆食堂には不釣り合いな礼装に身を包んだ集団であった。




