品性下劣勇者の言い分
――――――ドラゴニア王国王国・庶民街大衆食堂。
「勇者ロイ。ドラゴニア王国所属。黒髪に金色の珍しい瞳……ではあるが。勇者と言うには名ばかり。勇者らしいことも勇者の仕事もろくにしない。好きなものは酒とうまいもの。金は湯水のようにあるけどスキ。煩悩まみれの『勇者の持ち腐れ』。座右の銘は『煩悩まみれで過ごしたい』……と。ほんと調書の通りだ」
「何だよダニエルぅ、そんな風に言われたら照れるじゃねぇか」
「誰も褒めてませんよ……!」
「あら、褒めて伸ばすのは大事よ?メイコちゃん、ビールお代わりー」
「うぉーい、俺もおぉぉっ!」
「ほんっと酒好きですね、アンタは!!何杯目ですか!」
「いいじゃないの、酒ぇ。悪いことなんざみぃんな忘れられるぜ?」
「最低なオトナじゃないですか、それ。てか、忘れないでください。アンタ一応、聖女と女性神官泣かしまくった最低勇者って呼ばれてるんですよ……!!」
「んぁー?何それ知らねぇ。つかダニエルも食えよ。うめぇぞ?ここのメシ」
ここの女将のメイコさんから、ビールのお代わりを受けとれば。
「んー、うめぇ」
「美味しいわねぇ」
「ほんっと、呑気ですね、あなた方は!まぁいただきますけど。もぐもぐ……美味しい」
「だろー?」
何せここは俺たちの行き付けだし。亭主のダリルは料理うまいし、女将のメイコさんだって料理上手。最近じゃぁメイコさんの故郷の異国の料理も楽しめて、こりゃまたうめぇんだよ。
「それと……勇者さま」
「勇者さまはやめろよ。ガラじゃねぇし」
「……自覚あったんですか。じゃぁロイさん」
「んなに?」
「あのですね!普通勇者には聖女や女性神官と言う、勇者の仕事を補佐する女性が付きます!」
「いや、何でそこ女なんだよ。コンパニオンじゃなぇんだし、神殿ももっと男女平等推し進めれば?冒険者業界じゃぁ時代錯誤だぜ?」
「神殿の神聖な聖女と神官をコンパニオン呼ばわりは失礼ですよ!」
「そらおめぇの方がコンパニオンちゃんたちに失礼だろうがっ!コンパニオンちゃんたちだって頑張ってんだよ!」
「……その、それはすみませんでした。しかし……私が来たことからも分かるように……あなたがクズすぎて、補佐する女性たちがみんな匙を投げました。だからこそ、勇者の担当神官が!史上初男の私になったんですよ!かわいい女の子聖女ちゃんとのキャッキャウフフ冒険譚が見られないのも、全てはあなたがクズ勇者だからでしょう……っ!!」
「おいおい……おめぇ、何つーこと言いやがる」
「……あ、すみません。やはり……クズではありますがクズは失礼でしたね。取り消しま……」
「俺は既婚者だぞ!?ほかの女とキャッキャウフフできるかいっ!」
「そこですか!?そこなんですか……!でも歴代の勇者は結構ハーレム築いてますが。勇者ってそれだけでモテますからね。これほどまでにモテないどころか嫌われまくってる勇者はアンタくらいですよ」
「それが何だよ。俺にはクルルたんがいんだから、ほかの女になんざぁ興味はねぇ」
「やだ……っ、当然よっ!ローイっ!竜族の女の執着心をナメたらダメよ……?思わず火を吐いて丸焦げにしたくなっちゃう……っ!」
「おめぇの火に吹かれるならまんざらでもねぇけど……俺はクルルたん以外となんて無理だ」
「うん、私もよっ!」
「いや、そもそも次元が違った!ものっそい恐妻じゃないですか!!?そしてアンタはMかあぁぁいっ!あー、でも今まで派遣された神官や聖女にはドS呼ばわりされてましたね、アンタ」
「Sだなんて人聞きの悪い……俺はSSだぞ!」
「次元が違った。Sが2つだよ、全くもう!アンタのせいでね、ドラゴニア王国の聖女が泣いて逃げ帰って、隣国フローライト王国に留学しちゃったんですよ!?少しは聖女ちゃん泣かした責任取ってくださいよ……!」
「んぁ?聖女ちゃんって……誰」
「シェリーちゃんでしょうが!せっかく聖女として頑張ろうと派遣したのに、『役立たずはいらねぇ』っつって追い返したのアンタですよ!?」
「あー……あの?つーかあの娘まだ15歳じゃねぇの?やだよ子ども連れなんざ。ラブホ入れねぇじゃん」
「やっぱ最低だこの色情勇者……っ!!」
「それになぁ……留学の方が良かったんじゃねぇの?いつ死ぬか分からねぇ世界にぶちこむよりは」
「……それは……そうかも知れませんが……でもアンタ……そのいつ死ぬかも分からねぇ勇者の仕事を何一つしてませんよね!?ほんっと勇者の持ち腐れですよ!!」
「んー……だって」
「だって、何ですか」
「金も払わねぇし、支給しねぇじゃん。お前ら仕事とか言ってくるだけで」
「いや……勇者の仕事は慈善事業。世界のために身を粉にして取り組むのが筋と言うものでしょう?あと旅や仕事の資金は、修行のために自ら稼ぐものです」
「命懸けの慈善事業って何だよ。しかも金は自分で稼げたぁ……ほんと腐り切ってんじゃねぇの。んなもん、ていのいいタダ働き。女神の加護の名の元にタダ働きさせてるだけじゃねえか」
「ですけど……その、あなたは冒険者もやっていりっしゃる。ら……ラブホを二週間も貸しきりにするくらいの資産はあるのでは。……湯水のようにあるのでは?」
「それは俺が自ら報酬と引き換えに稼いだ金だ。誰がタダ働きなんぞに使うか!」
「ですが歴代の勇者も冒険者をしながら勇者の仕事を……先代さまだって……」
「やなこった」
「うぐ……あなたは……」
「俺に仕事さしたきゃ、冒険者ギルドを通して指名依頼してきな……!できるもんならなァ?」
「もう、まれに見るあくどさですね!それなら分かりました!行ってきます!」
そう言うとダニエルは立ち上がり、食堂を出ていく。
「マジで?行ったの?貯金あんだな。それとも家が金持ち?」
「そうねぇ……神官さまとはいえ……今までのみんな、泣いて帰ってきたけれど……」
「そうさなぁ……」
クルルたんと一緒につまみを口に運んでいれば、パタパタと足音を立てながらダニエルが帰ってきた。
「おー、ダニエルお帰りー。どうだった?金は払えたか?」
「何っですかあの法外な値段はあぁぁぁ――――――――っ!」
「法外じゃねぇよ。適正価格だ。それも俺が所属しているのはドラゴニア王国王都の冒険者ギルドだぞ?ギルド間手数料がかかんねぇだけ、まだお得だ」
「そうよねぇ。まぁ微々たるものだけど」
「ほんと神殿のやつらは相場も知らないとはわらっちまうぜ。泣いて帰るんならとっとと帰んな。メシ代はいらねぇから」
「……帰りませんよ……っ!」
「……は?」
「私は諦めませんからね!?」
「まぁ……今まででは一番骨があるが……諦めないならせめて稼げ。以上っ!俺は金がないと動かないからな?」
「湯水のように金あるくせに、なんてがめついんだこの勇者あぁぁぁ――――――――っ!!」
「今までタダ働きさせてたツケじゃねぇのか?」
「そうよねぇ。タダ働きはよくないと思うわ」
「……その、その件については神殿の方針なので……。ただ……」
「ん?」
「……あなたの元に派遣された神官ですから。ここにいます」
「……ふぅん……?ま、いいけど」
「……それは許してくれるんですね……。ちょっと意外です」
「誰がどこにいるかなんざ……そいつらの自由だろ」
「……そんなことを言って……15歳の聖女は追い返したのに」
「でも、最後に選んだのは聖女本人だろ」
そう仕向けたのが何であれ、誰であれ。
「あなたは一体、何を……」
ダニエルが何か言いかけた時。
「おい、ロイ!大変だ!」
「……ダリル?」
食堂の亭主・ダリルが血相を変えてこちらに駆けてきたのだ。