クルルたんラブマックス
「はっあ~~い、お待たせダーリンっ!私お手製の……クルルたんラブマックよ~~!」
「おっしゃぁ~~キタ――――――っ!クルルたん特製の愛妻料理――――――っ!」
これを心待ちにしていたんだ~~!むしろいつも心待ちにしてる、クルルたんの愛妻料理!特別なご褒美の時に作ってくれるスペシャルなご馳走だ……!!
「……いや、その……それ、食べるんですか!?その前に食べられるんですか!?」
「おい、神官の兄ちゃん。やめとけ。あれに口を出すのは……やめときな」
「だ、ダリルさんんんんっ!?でもあれ、紫!!あり得ない紫色しながらコポコポ言ってますよ!?中に入ってる具もなんですかあれえぇぇっ!得体のしれない何かが沈んでるうぅぅ~~~~っ!!!」
……ったく、ダニエルは分かってねぇなぁ。この紫!紫色こそがクルルたんラブマックスの神髄だというに……!そして俺のために栄養ある食材をとたーっぷり煮込んでくれたこの優しさの具材の意味が分からんとは……。まだまだだな。
「でもねぇ……。ほんとに不思議なのよ……?食材も調味料も普通なはずなのに……いつも紫になるの……」
「そうなんですかメイコさんんんんんっ!?」
「ほんっとクルルたんはいつも俺の好きな味を出してくれるんだ……最高だぜ……!」
「あん、もう、ダーリンったらぁ~~!」
「ほんと……?ほんと最高なんですか?味もヤバいことになってそううぅぅぅっ」
「ハァ?最高に美味しいに決まってらぁ……っ」
「美味しいの?」
「紫だ」
この紫こそが、ミソなのだ……!子どもたちよ……!
「いや、アリシアちゃんとハルトくんはこっち食べましょう!メイコさんお手製の異国料理!美味しいですよ!」
「いいの?」
「食べる」
「子どもにゃぁまだ……この味は早ぇかんな」
「そうねぇ」
「……いや、大人でも早くていいですぅっ!」
「だからダニエルにはやらねーって」
「その、遠慮しときます」
ふむ、分かっているではないか。クルルたんの味は……!俺が全ていただく……!
もぐもぐ。
ごくごく。
「本当に食べてるうぅぅぅっ!?」
本当は食べるのももったいねぇが……クルルたんが喜ぶのなら、俺は食う……っ!!
「お代わりもあるから、どんどん食べてね――――!」
「もちのロンだだとも……!マイハニークルルたーんっ!」
「ほんとな……。俺も料理は元々ロイに習ったんだ」
「……え?この美味しいご飯を!?」
「そうそう。昔は冒険者でパーティーも組んでたからな。その時に、色々と教えてもらった。……自分で作るのが面倒だったようでな」
「……相変わらずダメダメじゃないですか。でも……この料理の原点はロイさんなんですよね……ほんと謎です」
「そうだなぁ……作ればプロ級なんだが……いつの間にか俺が作ってるし」
「私の故郷のお料理も……調味料や故郷の味に近い食材の相談にも乗ってくれたのよ」
「へぇ……ロイさんにしては大盤振る舞いですね……」
「うまい飯と酒に預かれるなら、どんとこいだ」
「ほんと好きですよね。今も飲んでるし……」
「ほんとんめぇ……ダリルナイス」
「ははは、そりゃどうも。俺たちは厨房に戻るから、楽しんどけ」
「たくさん食べてってね~~」
厨房に戻っていくダリルとメイコさんを見送る。まぁ、これからメシ時だしな。
「でもロイさん、子どもたちもいるんですから、お酒はほどほどに……」
「後は頼んだダニエル~~」
「いや、ほんっとアンタは……!まぁ、いいですけど……!」
「ベッドは昼間のベッドや客間の好きなところを使っていいわ。ダリルたちはここの2階に住んでるから」
「え、でもクルルさんたちはどこに……?」
「俺たちゃぁ……決まってんだろ?」
「決まってるって……まさか……っ」
『レッツゴー・ラブホ……っ!!』
「相変わらずこの夫婦は……!いいですよ、んもぅ、アリシアちゃんとハルトくんはお隣で寝かせますから!私も好きなところを使わせてもらいますんで!!」
「おうよ、まっかせたぁ~~!」
「ほんとダメ勇者め」
※※※
――――翌朝。
「……って、ラブホはどうしたんです?ロイさん」
「行ったけど?でも今日は行くとこあっからさ」
「それで戻って来たんですね。……2週間籠らなくて良かった」
「ふん……竜族には発情期があんだよ。発情期だったら籠るが、この前籠ったばっかだかんな」
「あー……発情期。種族によってはあるんですよね。竜族にもあるんですか」
「そうそう、そゆこと。まー俺は……クルルたん相手ならいつだってどこだって……ヤれる自信がある……!」
「朝から下品なネタはいいですから。子どもたち起きてきますから」
「仕方ねぇなぁ……」
よし。メイコさんおすすめの……肉じゃがに……米と味噌汁。異国の料理だがたまにゃぁいいだろ。昨日パン買っとくの忘れたし。
「あ、運ぶの手伝いますよ」
「んじゃぁよっしく」
「えぇ。……そう言えば。アリシアちゃんとハルトくんは……ここで面倒を見るんですか?」
「他にどうしろってんだ?アイツらが帰る村はもうねぇし……これからギルドも大神殿が行った罪を糾弾するだろう。フローライト城なんかに預けるなんてもってのほかだろ?」
「……アンタが意外とまともな思考をしていたことにも驚きですけど」
「んぇー……?」
「けれど、どうするんです?勇者のアンタは自由奔放に好き勝手やってますけど……ハルトくんもまだ子どもですし、聖女のアリシアちゃんもいるんです。昨日神官も呼びましたし……神殿には何と……?」
「フローライトから連れてきた聖女だ。正式に神殿が囲うわけにはいかないだろ?」
「まぁ、確かに。フローライトの大神殿からの許可はとっていません。てか、本当に連れてきちゃって……問題にならないんですか?ほら、国境越えのことも」
「つれて来なかったらどうなってる」
「それは……それしか、選択肢がありませんものね」
「そう言うこったよ。おら、子どもの前でする話じゃねぇだろ」
くいっと指で合図すれば、ダニエルも降りてきた子どもたちに気が付く。
「……アンタが言いますかって感じですけど」
「生殖について語るのは大人の大切な義務だ……!ラブホだってそうだ……!その極意を教えてやらんで、いざラブホで失敗したらどうするんでいっ!」
「適正年齢ってもんがあるでしょうが……!あぁ、ごめんなさいね。朝から。でも大丈夫ですよ。私もロイさんの担当として居座る気満々ですから……!」
「満々なのか、おめぇ」
「そうですよ。……それにしては……シェリーちゃんは堂々と追い返しましたけど」
「アイツの場合は反抗期拗らせてるだけだろ?帰る家があんだから……ここに入り浸られても……ラブホに行く時……困る」
「大真面目な顔で言うことじゃありませんよ。もー、分かりましたよ。アンタがラブホ狂いしてる時は私が子どもたち見てますから……」
「お……っ!マジで?やたー」
「でも調子に乗らないでくださいよ!?あくまでもアリシアちゃんたちのためなんですからね!?」
「まぁいいんじゃねえの。なるようになるんならさぁ~~。おっと……そろそろクルルたんもくる頃か……?」
「あぁ……そう言えばクルルさんはどちらに……」
「ダーリンお待たせ!今日もクルルたんラブマックス!お店の厨房借りて作って来たわ!」
「おっしぇーいっ!クルルたん、ナイス!!」
「ぎゃあぁぁぁ――――――っ!?またあぁぁ――――――っ!?てか、何でわざわざお店の厨房で……っ」
「こっちコンロ3つ使ってたんだもん」
「それに、ダーリンにじゃーんって見せつけたかったのよ……!」
「……まぁ、アンタたちがそれでいいならいいです」
「ふふふふふー。そんじゃぁ、朝ごはんにしようかー」
「そうですね、それがいいです」
「ダーリンはこっちね」
「イェーイ!」
「ほんと……わっかんないですね……アンタ。でも……美味しいです」
「うん……!」
「おいしい!」
「そうでしょ?ダーリンは料理上手なのよ」
「それでクルルさんは何で……」
「ん?」
クルルたんの有無を言わさぬ輝かしい笑み。まぶいな。
「……なんでもありません」
……?ダニエルは何黙ってんだ……?謎だな。
「そうだ……今日は出掛けんぞ」
「そんな急に……いや、まさか……またオトナのアソ……っ」
「それも捨てがたい」
「いや、捨ててくださいよ!?」
「ま、……今日は丁度食堂の定休日だし……行くのは、鍛冶屋だよ」
「……はい?」




