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勇者の居場所


――――――フローライト王国・王都商人街。


「あのー、ロイさん?」


シャカシャカシャカ


「んー、何だ?」


キュッキュッキュッ


「何だって……その、何してるんです?アリシアちゃんのお兄さんを探しに行くのでは?何で商人街の商店にいるんですか……!何か店主と知り合いっぽかったし!」

「んー、行くぞー。あと店主は前来た時にオトナ買いしたから気に入ってもらった」


シャカシャカシャカ


「オトナ買いって……まぁ、しなくもなさそうですよね。高級なものもたくさんあるようですし。……で、何でさっきから石磨いてんですか」


キュッキュッキュッ


「必要だからだよ。ほれ、こうやって汚れを落とす特殊な魔法液に浸してから……専用の磨き布で磨く……!光りもんが大好きな竜族の伝統技だ……!でも場所と容器やらがなぁ。店主に借りられて良かったわ。さすが宝石や貴金属を扱ってるだけのことはある」

「……そう言えばアンタ、お金大好きでしたね」


「金は好きだが……でもやっぱり今は電子か……宝石がいい……!」

「数えるの面倒なだけでしょうが!?」


「それだけが難点なんだ。金自体はいくら見ても見飽きないんだが」

「ほんと煩悩まみれですね」


「だいぶキレイにはなってきたぞー」

「ほんと……アンタの煩悩の深さに比例するようにキレイになっていきますね」


「煩悩にまみれるのは……最高じゃねぇか。ラブホ行きてぇ。フローライトの色街にもドラゴニアの色街の姉妹店があるからさぁ、ポイント付くんだよな」

「アンタほんとそれしか言いませんよね。てか、ラブホポイント集めてんのかよ」


「いろんなオトナのオモチャとも交換できるんだ……いいだろ?」

「どこがっ!!」


「ねぇ、ローイ!かわいいの見付けちゃった~~」

クルルたんが持ってきたのは、かわいらしいシトリンの宝石のついた腕輪だ。俺とクルルたんの色じゃねぇか……そんなところも萌えるな。


「ペアになってるんですって。買うでしょ?」

「んー、いいぞー」


「え、アンタ普通に金出すんですか!?守銭奴なのに……!」

「誰がいつ守銭奴なんて言ったー。嫁のためならいくらでも出す……!当然のことだ……!」

「……ほんとクルルさんのためなら惜しみ無いですよね」


「当然だろー?うちのクルルたんは最高にかわいいんだから」

暫くすると会計を終えてきたクルルたんが俺にペアのひとつを渡してくる。


「あとアリシアちゃんにも買ったのよ~~!もちろん私からのプレゼント!」

クルルたんがアリシアの髪留めを示す。

ほう……?花の意匠細工のあしらわれたなかなかいいもんだな。


「んー、いいんじゃねー?」

クルルたんが買ってあげたいんなら俺は構わねぇ。だってウキウキなクルルたんかわいい。

アリシアも嬉しそうだな。


「いや……その……聖女って華美なものとか……アクセサリーを身に付けるのは禁止ですよ。そのペンダントりは質素だから許されたんでしょうが……」

「おめぇ何つーこと言うんだ。アリシアがしゅーんとしてんじゃねぇか!」

そしてクルルたんまで悲しそうな表情になっちまったぁっ!あぁ、俺のクルルたんがぁっ!!


「……って、そのペンダント!光ってます!え、宝石だったんですか!?」

「そう言う問題じゃねぇよ!クルルたんに悲しげな目をさせるんなら……てめぇの持ってる熟女神官ブロマイド、空間裂傷で穴空けてくれる……!」

「何で持ってること知ってるんですか……!!いやーその、ま、いいんじゃないですかね!?聖女もおしゃれ!楽しんだって!!」


「あら、良かったわねー、アリシアちゃん!」

「……うん……!」


「んまぁ、クルルたんが嬉しそうだから許してやる」

「はぁ、はぁ……良かったぁ……。それにしても、その石……」


「これな。これは珍しいもんだ。このペア石と似てんな」

腕輪の宝石を見やる。


「離れてても、心は一緒……か。知ってか知らずか、持たせたもんは間違いねぇ代物だ。これはしっかりと磨けば、共鳴しあって互いの居場所を教えてくれる。恐らくひとつの石を2つに割って取り付けたんだろう。これは番大好きな竜族が産み出した嫉妬執着の表れの秘宝……っつーかナノマシンだが……あのはぐれ竜が隠し持って出たのがこぼれたのかも知れねぇな。それをどうしてかアリシアの兄が手に入れた。でもま、磨いた状態でどちらか片方を竜族が持ってねぇとナノマシンが動かないから意味がないんだが」

ロドリゲスたちま気が付いていなかった。いや、知るはずもないもんだ。きっとこれを、ただの汚い石としか思っていなかったから……聖女であれどもアリシアはこれを手放さなくて済んだ。


「まさかそれが分かっていたから、アリシアちゃんからそれを……?あ……でもそれなら、最初からそれを磨けば勇者の居場所が分かったのでは……?」


「もう片方も磨かれていたんならな。でも、これが磨かれてないってことは、もうひとつも磨かれてない。となると、ナノマシンが感知しづらいから、どっちにしろ大体の場所は把握する必要があったんだ。まぁ、磨いたから、大体は分かった。行くぞ」


「それは……はい!行きましょう!」

「やっと感動の対面ね!」

そううまく行くといいんだが……クルルたんがかわいいからよし……っ!


「それで、どちらに?」

「あそこ」

商店を出て指を指したのは……。


「城じゃないですか!」

「そうだなぁ……城だ」

つまり、アリシアとその兄勇者はずっと、目と鼻の先にいた。それなのに会わせない、互いの居場所も報せず、アリシアに村の消滅も報せなかった。


「気にくわねぇな……」

「え……?」


「まぁ、いいや。取り敢えず転移な」

「はいぃぃぃっ!?」


――――フローライト王国城内


「何で追われることになってるんですか、いや案の定!」

「くっ、城には来たことがあったから転移したが早速見つかるとはな!どこの城も防犯システムはしっかりしてるんだな……!」

「そうねぇ、うちの国の城なら国王に追っかけられる特典つきよ!」


「いや何ですかその特典!てか何で国王陛下ぁっ!」


俺たちは走っていた。因みにアリシアは俺が脇に抱えて走っている。さすがに子どもにこんな全力疾走は無理だろうっ!!


「あ、ダニエルもこっち」

「ひぁっ!?」

空いている方の手でダニエルの首根っこを掴めば……。


「クルルた~ん」

「はぁ~い!」

2人で竜の翼を広げ、一気に追っての近衛騎士たちを巻く。まぁ飛んでるので逃げた方向は容易に分かるが構わない。


そして地上に着地すれば、ダニエルとアリシアを放してやる。


「いきなりびっくりするじゃないですかーっ!ここ、ずいぶんと寂れた場所ですが、城の中で、あってますよね?」

「あぁ、目当ての場所だ」

「お兄ちゃんが……?」

アリシアがキョロキョロと辺りを見回す。


「そこにゃぁいねぇよ」

「そうそう、アリシアちゃんはこっち」

クルルが再び翼を広げ、アリシアを抱き締めれば。


早速ランスを顕現させて、地面に勢い良く突き刺す……!


「え、ロイさん、何を……っ!?」

「何って……ブレスだろ?」

「は……っ!?」


次の瞬間、ランスの先端から勢いよくブレスが放たれ、ぐらりと揺れながら地面が崩れていく。


「ギャ――――――――っ!?」

相変わらずしゃあねぇなぁ、ダニエルは。あん時のブレスに比べたら、子竜の遊び程度。そんでも、こんくらいの破壊にはちょうどいい。

ダニエルの首根っこを再び掴み、崩れ落ちる残骸を翼で弾きながら地の底へと着地する。

暫くするとクルルたんと、クルルたんに抱き締められながらアリシアも降りてきたので、翼をさっとしまう。


「はぁはぁ……またいきなり……って……ここは……」

「地下だろ。城の」


「それは分かりましたけど、何で地下に……」

「いるからだろ、勇者が」


「お兄ちゃんが!?」


「そうそう、でもまた、厄介な先人がいたようだ」

「げっ」

「あらぁ……」

「ひっ」


そしてその先人がこちらを振り返る。


「何故……ここに……っ!」

「それはこっちのセリフだが……まぁ、おめぇがここにいんのも……納得だな?ロドリゲス」

俺がニィッと口元に笑みを浮かべれば、もう治療してもらい復活したのか、苦々しい顔を浮かべるロドリゲスがいた。



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